「光合成の仕組み」生態系を支える驚異の化学反応

光合成

最も重要な生物反応

 光合成(photosynthesis)は、植物の典型的な特徴であり、地球の様々な生命体、生態系において、最重要な要素。

 基本的に光合成を行うのは植物と植物プランクトン。
植物プランクトンとは、光合成を行うプランクトン(水中などを漂う浮遊生物)である。

 植物や、植物プランクトンによる、この生物反応は、太陽から放出されているエネルギーを、地球生物に扱いやすく変換してくれる、言うなればエネルギー中継点の役割を担う。

 多くの陸上植物は、光エネルギーを利用して、二酸化炭素(CO2)や水(H2O)から、自身や他の生命体に利用しやすい『有機化合物(organic compound)』を生成する。
有機化合物とは、つまり炭素(Carbon. N6)を含む化合物ほぼ全ての事で、地球生命にそれを利用しない存在は、おそらくいないというものである。
 そういう訳で、光合成は最も重要な生物反応と言われる。

利用される太陽光

光の波長と振動数

 光には色がある。
正確には、光の色として、我々が感知する、波長(γ)と振動数(v)というステータスを持つ。
それらは、
c=γv
という関係を持つ。 
cは光速度である。

 光には波長があるように、当然波なのだが、しかし波でありながら光は、光量子と呼ばれるエネルギー(E)の部分に分ける事が出来る。
量子「量子論」波動で揺らぐ現実。プランクからシュレーディンガーへ 光量子ひとつの強さは、
E=hv
である。
hはプランク定数という、日常スケールで言えば、ごく小さな数。

PAR。光合成有効放射

 重要な事は、植物が利用する光が、特定の波長の光である事。
 太陽は様々な波長の光を放つ。
その内、我々に見えている白い光は、我々に見える様々な波長の色の混合である。
リンゴの木「ニュートン」万有引力の発見。秘密主義の世紀の天才  我々に見える波長の光は可視光と呼ばれ、だいたい400nm~800nmくらいの波長の光。
多くの植物が光合成に利用する光も、この範囲くらいの波長の光である。
 正確には400nm~700nmくらいの波長とされ、この波長の範囲を、『光合成有効放射(photosynthetic active radiation。PAR)』と言う。

 ちなみに1nm(ナノメートル)は1/1000000000m。
 また、PARに相当する光は、地上に届く太陽光の内の40~45%ほどだとされている。

植物の生存競争

 海洋と陸上での、生態系に貢献する光合成の効率を比べると、陸上の方が圧倒的に悪い。
 生物を構成する質量をバイオマス(biomass)と言うが、光合成の総量はそれほど変わらないのに、陸上植物のバイオマスに比べ、海生かつ光合成を行う生物のバイオマスは相当低いと考えられているのである。

 海は大気よりも炭素濃度が高く、かつ水が豊富である。
一方で陸上では、光はもちろん、低い濃度の炭素(二酸化炭素)や、水を巡り、植物は競争を余儀なくされる。
限りある資源を、なんとか自分のものにしようと、植物はより巨大に、より複雑になり、それは結果的にバイオマスの増加と同義という訳である。
 もちろん、そもそも水中のような浮力がない、陸地では、しっかりと立つのにも、しっかりとした機構が必要となる。

 進化は時に奇妙である。
困難な道を選ぶのは、生き残る為の方法。
それはわかるけど、なぜ苦しい目にあってまで、危険な道を選ぶのか。
冒険をしたがるのか?

 もちろん、進化の過程における挑戦や冒険は、我々が自分達の意思で、そういう事を行う場合とは明らかに違うと思われる。
 意志が生まれるのでなく、意思があるだけだったら、進化は起きたろうか?
進化の分かれ道「進化論」創造論を最も矛盾させた生物学理論

葉緑体

碁石のような楕円形

 植物の内部にて、実際に光合成を行うのは『葉緑体(Chloroplast)』という細胞小器官である。
陸上植物の場合、それは『葉(leaf)』の内部にある。

 陸上植物の葉緑体の大きさは、1μm~10μmくらいとされる。
1μm(マイクロメートル)は1/1000000m。
 形は碁石のような楕円球状。
二重構造の膜で包まれているという。

起源はシアノバクテリア

 
 いつ頃かの真核生物(細胞核を有する生物)が、シアノバクテリアのような光合成を行う細菌を取り込み、そのまま細胞小器官としてしまったのが、葉緑体の起源と考えられている。
 葉緑体は独自のDNAを持つものの、その存在は細胞核のDNAコードにかなり依存しているので、完全に独立しているとは言い難い。
 ただ、葉緑体とシアノバクテリア、それぞれのDNAの研究から、共生はただ一度起こった出来事。
少なくとも、現在の全ての植物の葉緑体の起源は、ただ一個体の細菌に行き着くという説が有力だという。

 葉緑体の二重膜の内側は、元になった細菌由来。
外側の膜は、元になった細菌の宿主由来と考えられる。

 また、藻類(コケ植物、シダ植物、種子植物以外の光合成を行う生物)には、さらに三重以上の膜に包まれた葉緑体を有する種もいる。

葉が緑色な訳

 ある波長(色)の光(可視光)を取り込む分子、物質を『色素(coloring matter)』。
そして葉緑体が光を取り込むのに使う色素を『光合成色素(Photosynthetic pigments)』という。

 代表的な光合成色素は『クロロフィル』、『カロテノイド』、『フィコビリン』の3つ。
これらは化学式の微妙な違いにより、さらに細かく分類する事が出来、もちろん種類ごとに、吸収可能な光の波長は異なる。
 基本的に陸上植物よりも、水生の藻類の方が、様々な種類の色素を持つ、
これはおそらく陸上より水中の方が、水の屈折などによる、光環境のバリエーションが多い為と思われる。

 陸上植物の葉の葉緑体の色素は、クロロフィルの比率が高いようである。
クロロフィルは緑色をあまり吸収しない。
結果的に陸上植物の葉から出てくる光は、あまり吸収されない緑の光ばかりとなる。
だから葉は、基本的に緑色なのである。

光合成の化学式

 光合成とは光のエネルギーを用いたある種の化学反応である。
その化学反応は、例えば以下の化学式のようなものと考えられている。
(ただしAは何らかの元素。[~]は栄養として取り込まれる部分)

(光合成前)CO2+2(H2A)→(光合成後)[CH2O]+2(A)+H2O

 つまり光合成とは、水素(Hydrogen. N1)と結合した何らかの元素を放出する。
水(H2O)を使った場合は、酸素(Oxygen. N8)を放出する訳である。

維菅束植物の場合

 『維管束植物(Vascular plant)』とは、内部の全体を貫き、水などを運搬する役割の『維管束(vascular bundle)という組織を持つ植物の事。
この種は最も我々に馴染みぶかい植物なので、光合成の機構についても、よくわかっている。

表皮。気孔。二酸化炭素のコントロール

 維菅束植物は、基本的に扁平な葉を持つ。
この平べったい葉の、向軸側(上側)と背軸側(下側)には、それぞれ『表皮(epidermis)』という細胞の層がある。
 表皮は光はよく通すが、水分や気体はあまり通さず、葉の内部は、外部から隔絶されている。

 表皮には『気孔(stoma)』という、小さな穴が無数にあり、光合成などに必要な気体は、そこから取り込む。
気孔は二酸化炭素の移動を制限する『気孔抵抗(stomatal resistance)』を調節し、葉内の二酸化炭素量をコントロール出来る。

柵状組織。海綿状組織。光を捉える仕組み

 上の表皮の下には密集して並ぶ1層か、あるいは数層の柱状の細胞があり、それらは『柵状組織(palisade tissue)』と呼ばれる。
 柵状組織のさらに下には、様々な形状の細胞が不規則に集合した『海綿状組織(spongy tissue)』というのがある。
 これらふたつの組織には、大量の葉緑体が分布されている。

 大地に立つ植物に対して、太陽光は上から降り注ぐ。
つまり光は葉の上から来る訳であるが、表皮は、その光を素通りさせる。
 表皮を通った光の多くは、柵状組織の密集た葉緑体に吸収される。
 その後、柵状組織をすり抜けた残りの光は、海綿状組織に入る訳だが、海綿状組織は、細胞がデタラメに配置されており、光を細かく屈折させる。
そうして組織を出るまでに、その中を何度も跳ね回された光の多くは、やはり海綿状組織の葉緑体に吸収される。
 そして吸収されずにすんだ光は、後は葉から出ていく。