「ウサギ」生態系ピラミッドを狩られまくって支える、かわいい哺乳類

ウサギ

ウサギはなぜ一羽二羽と数えるのか

ウサギは一羽ニ羽と数えるが、一頭二頭とか、一匹二匹と数えないのはなぜなのか。
一羽ニ羽とは、普通、鳥を数える数え方であろう。

 どうもこれは、仏教に関係があるらしい。
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仏教では、四本足の動物を食べることを禁じている。
だが、江戸時代、ウサギというのはよく食べられた肉だったようだ。
 そこで、ウサギの肉でなく、鳥のサギの肉なのだと、ごまかして食べていた事があり、その名残らしい。

 単に、そのでかい耳が、羽に見えたからという説もある。
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ウサギ狩りの方法

 日本では古くから、ノウサギがよく捕獲されてきた。
簡単な罠を使えば、老人だろうが子供だろうが捕獲できるし、食料などとして、手頃な動物であった。

 1923年(大正12年)から、毎年集計されているという『狩猟統計(鳥獣関係統計)』によると、最盛期(1955〜1977年)には、毎年の野生動物総捕獲数に占める割合の最大70%〜80%くらいがノウサギであった。
ちなみにノウサギの次に多いイタチが10%ほどであったという。

 狩りには、飼いならされたタカを利用することもある。
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江戸時代には、将軍家の大規模な狩猟において、メインであるシカとともに、よく狩られていたとされる。

 タカを使う狩猟法が、『タカ使い猟法』。
雪穴などに隠れたノウサギを、棒切れや、輪っかなど、適当な物を投げておびき出し、手づかみする狩猟方を、『ワラダ猟法』。
猟銃を使い、10人ほどのチームで、数十のノウサギを一気に捕獲した狩猟方が、『巻き狩り猟法』という。
他に、猟犬が使われたりする場合もあるようである。
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ウサギは寂しいと死ぬのか。家畜化が意外と困難

 家畜化に成功したウサギは、ヨーロッパアナウサギのみとされている。
ヤブノウサギなども、飼育下での繁殖が試みられてきたが、なかなか何代もにわたってを無事に育てることが出来ずにいるらしい。
ウサギという動物はストレスを感じやすく、病気になりやすいようで、幼獣の死亡率が高いのだ。
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寂しいと死ぬという伝説じみた話も、このストレスへの弱さから発生しているのは間違いない。

 ちなみに、ヨーロッパアナウサギは、古代ローマ時代からよく捕獲されていたようだが、家畜化に成功したのは、西暦500〜1000年くらいの時期。
フランスの僧院にて、だったらしい。
 家畜化されたヨーロッパアナウサギから、様々な家畜品種も作られ、家畜ウサギは、食肉用、実験動物用、そしてペットとして飼われてきたという。

食料としてのウサギ肉

 食料生産という観点から見ると、大型家畜に対し、ウサギはコストパフォーマンスに優れ、 発展途上国では特に重宝される。
 ある程度、限定的な植物繊維で育てることが可能で、同量の牧草に対し、ウシの5倍の肉を生産できると言われる。
さらに繁殖力が高く、子の成長も早いので、周年繁殖が容易。
飼育施設の維持費も、安価にしやすい。

 また、1頭分のウサギ肉は、すぐに消費されるため、保存のための冷蔵庫を必要としない場合も多い。
このおかげで、環境に優しいとされ、ウサギ肉生産は『生物学的冷蔵庫(biological refrigerator)』と呼ばれることもある。

 将来、世界規模の食糧危機を迎えた時代に、民間人の自給自足生活においても、ウサギは貴重な食肉用飼育動物になるかもしれないとされている。

ウサギとはどんな動物か

ウサギの分類学的種類。ネズミと似てるか

 ウサギとは、ウサギ目(Order lagomorpha)としてまとめられる哺乳類で、主に、ナキウサギ科(ochotonidae)とウサギ科(leporidae)。
あるいは、ナキウサギ類(pikas)、アナウサギ類(rabbits)、ノウサギ類(hares)である。
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 ウサギは、地上と地下にしか適応した種が存在せず、他の草食性哺乳類に対して、あまり適応放射の範囲が広いとは言えない。
 草食性の動物としては、成長し続ける切歯で、植物をかじる哺乳類であり、これは齧歯類に近い特徴である。
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ウサギの跳躍

 ウサギは長い四肢を持ち、後ろ足は特に大きい。
これは跳躍走行をおこなうための運動能力を高めるのに適したフォルムである

 ナキウサギ科より、ウサギ科の方が、四肢は長い。

 ウサギの歩行や走行時の、 後ろ足を左右でずらさない跳躍をホッピング、ジャンピングあるいはリーピングなどと言う。
このような移動模式を取る生物は少なく、ウサギ以外には、有袋類のカンガルーくらいである。
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大きな耳の役割

 ウサギといえば、長い耳のイメージが強いが、四肢と同様に、ナキウサギ科は、ウサギ科に比べ耳が小さい。

 動物の耳の役割としてよく言われるのが、集音装置としての役割。
それに、熱を逃がす放熱装置としての役割。
ウサギの耳ではさらに、跳躍運動時のショック吸収装置としての役割が重要となると思われる。 

アレンの法則。ベルグマンの法則

 アレンの法則とは、恒温動物は同種や近縁種で比較すると、暑い地域の種ほど、(熱を発散する為に)耳や四肢や尾などの体の突出物が長くなっていくという法則。
 一方で、ベルグマンの法則は、恒温動物は同種や近縁種で比較すると、寒冷地域の種ほど、大型になりがちという法則。
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 ノウサギ属の耳や尾の長さは、アレンの法則によく従うとされている。
ただし、ワタオウサギ属の耳は、アレンの法則に従わず、またノウサギ属の後足はむしろ、ベルグマンの法則に従うという話もある。

危険から逃げる技術

 ウサギは草食性哺乳類であり、植物と隠れ場所がある場所に適応してきた。
 ウサギは基本的に、餌にされる生物であり、典型的な天敵に、イタチ、キツネ、オオカミ、猫、などの捕食性哺乳類や、捕食性鳥類の猛禽類がいる。
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 ノウサギ属は特に、捕食者に対し、大きな耳で危険を即座に察知する。
そして、長い四肢、大きな心臓、発達した筋肉、軽量化した骨格などにより実現した、俊敏な動きで、危険から逃走する。

 アナウサギ類は、近くの巣穴や植物の影にすぐ隠れるが、ノウサギ類は、かなり遠くまで逃げるとされる。

繁殖力の高さ

 捕食者以外にも、病気や気候変化などにもウサギは弱い。
ある調査では、生まれた年に、90%以上の個体が死ぬという結果も出ている。
 ウサギはこの高い死亡率を、高い繁殖率で補う。

 ウサギの一頭のメスの子の数は、年間、 10から、多い種では、45ほどになるという。
ウサギは基本的に乱婚性で、個々の恋愛の期間は短い。
捕食者に狙われやすい生物としては、このような繁殖形態はかなり理にかなっている。(エッセ)

(エッセー)我々は何を素晴らしいとするべきか

 生物学的に男女がいるのは、子の遺伝子にバリエーションをもたらすためなのは、ほぼ間違いない。
普通、男女が一緒になるのは、次世代のためだ。
 ただ、人間という意識は、それを何か素敵なもののように意味を与えたがる傾向にある。
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 色々なことで人間は自分たちを特別な存在と思いたがる。
恋愛に関しても多分そうだろうとは思う。
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 ただし、どうしても、それが思い上がりだと、思いこめもしない。
弱さのせいかもしれない。

ウサギの進化。齧歯類との分岐はいつか

 分子遺伝学的に、ウサギ目は、9200万年前頃に出現したグリレス類から、 8500万年ほど前に、齧歯類と分岐する形で出現したと考えられている。
ただし発見されている化石で、ウサギ目とされている最古のものは、5300万年ほど前のものだという。

 また化石証拠的に、ウサギとナキウサギの分岐開始も、5000万年前くらいからと推定されている。
そして、おそらく現在のウサギ目は3400万年前に出現した。
 ウサギ科は、北アメリカかアジア、ナキウサギ科はアジアで誕生したとされている。

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