「カメラの仕組み」歴史。進化。種類。初心者の為の基礎知識

カメラ

カメラの原点。カメラオブスクラ

古代ギリシャの暗い部屋

 カメラの原点とされるモノは紀元前のギリシャにまで遡る。
もちろんそれは、現代の人が「カメラ」と聞いて思い浮かべるような代物ではない。
ソレは単に、僅かに小さな穴が開けられているだけの密室空間である。
その空間が、かつてのギリシャでなんと呼ばれていたかは定かでないが、遥か後の時代に、誰かがラテン語で「暗い部屋」の意である『カメラオブスクラ』と呼び始め、現代までそれですっかり定着している。(注釈1)

 カメラオブスクラは名前通り、最初は本当に部屋であったという。
しかしだんだんと小型化し、その名称がある程度広まった時代には、手で運べる程度の箱となっていた。

 で、そのカメラオブスクラとやらが結局何なのか?何に使うのか?
つまりそれは、画家や、自然の探求者が、人間の視野に入りきらないほどに広い風景の全体像を把握する為のアイテムだったと考えられている。
カメラオブスクラには「その開かれた穴の向こうの風景を、縮小した像として、穴の反対側の壁に映し出す」という、まさにその為の機能があったのである。

 しかし何がそんな機能を生むのか?
それを理解するには、まず「人(というより視覚を持つ全ての生物)の目が物を見る仕組み」を知る必要がある。

(注釈1)天文学者のカメラオブスクラ

 このカメラオブスクラなる言葉を最初に使ったのは、太陽系の惑星の運動に関する法則などで有名なヨハネス・ケプラーだという説がある。
太陽系 「太陽と太陽系の惑星」特徴。現象。地球との関わり。生命体の可能性
だとするとこの名称が使われだしたのは、彼が生きていた十六世紀後半か、十七世紀前半という事になる。

光が飛び交う世界

 生物の目は、実は全体的に真っ暗闇のこの世界(エッセー1)の中で、あちこちを飛び交う光を捉え、そこから得られる情報を(コンピューターにも例えられる)脳が解析し、整理して、視覚情報として我々に理解させる(エッセー2)
コンピュータの操作 「コンピューターの構成の基礎知識」1と0の極限を目指す機械
 例えばあなたが真っ赤なリンゴを見る時、あなたはリンゴから放たれる光を捉え、その波長から色を理解する。
さらにリンゴの周囲から放たれる光を捉え、その形を理解するのである。
コネクトーム 「意識とは何か」科学と哲学、無意識と世界の狭間で
ただしリンゴや、この世界の様々な物が、自ら光を放っているというわけではない。

 この世界は(つまりこの地球上の人が生きてるような環境の事だけど)物理的には安定している方と言える。
たいてい原子はくっついて物体状態だし、ある時、突然崩壊死する生物なんかも珍しい。
量子 「量子論」波動で揺らぐ現実。プランクからシュレーディンガーへ
 光が何かから自主的に放たれやすい世界とは、「もっと極限的」などと表現される世界である。
例えば太陽くらい熱い世界。
あれが我々にはもっとも身近な、光を自主的に放つ世界に間違いない。

 ではなんで安定している者に光を放てないのかというと、光とは実はエネルギーであり、そのエネルギーで我々という存在は作られているからである。(注釈2)
つまり我々自身が光を放つには、我々自身を崩壊させるしかない。
しかしもちろん安定した世界では、我々はあまり崩壊しないし、したくてもちょっと難しいというわけである。

 しかしこの地球表面に光は溢れている。
電気機器が発明される前から、火が発見される前からそうだったと考えられている。
電気実験 「電気の発見の歴史」電磁気学を築いた人たち
火が発見され、電気機器が発明されてからは夜も明るいが、朝は昔から明るい。
夜になくて、朝にあるもの。
つまりこの世界を飛び交う光の大半が、元は太陽の光なのである。
太陽からの光が、地球に届き、地球のあらゆる物質がそれを反射しあう事で、この世界は姿を表す。
カメラオブスクラはそういうふうに成り立つ世界ならではのアイテムである。

(エッセー1)闇なんて存在しない

 宇宙はたいてい、真っ暗闇。
それはもう常識と言ってもいい。
ダークな世界 「ダークマターとダークエネルギー」宇宙の運命を決めるモノ
では光に溢れた世界など、現実にはありえないだろうか?
目を閉じたら、(少なくとも筆者は)光も色も溢れた、明るい宇宙を想像出来るけど。

 それと光は物体の内部に閉じ込められているとも考えられるけど、仮に宇宙から全物体を取り除くとどうなるだろうか?
もっとはっきりと言ってしまうなら、
「『真空』とは暗闇なのだろうか?」

 その可能性は高い。
何せ我々が世界と考えるような世界は、明らかに光(エネルギー)が形をとってるというようなモノである。
光がなくなれば、そこに残るのは真っ暗闇に違いない。
とすると、「相反する光と闇」などというよくあるファンタジー設定が奇妙に思えてくる。

 光と闇とは、光と闇というより、光と光なき状態である。
最終的にはある疑問にいきついてしまう。

 つまり闇なんてあるのだろうか?

(エッセー2)理解してるではなく理解させられる

 脳と心(あるいは意識。自分という精神的な存在)を分けて考えるなら、「自分が感じるあらゆる事は、脳が心に理解させたモノ」なのだというような表現は、的を射ると思う。
そして脳と心が別だとしたら。

 例えば「もし体から脳を無理やり取り出して粉々に潰されてしまったとして、その後どこかに自分の存在が残ってるか?」と問われたら、正直、自信をもって頷いたりは出来ない。
けど、そんな事関係なしに脳と心は別だと個人的には思う。
自分的には心はそうだと確信してるつもり。
脳がどんな事を理解させてこようとも。

(注釈2)結局全ては同じもの?

 ある空間に置ける個々の物体が感じる時間を扱う『特殊相対性理論』の数式を変換させると、もっとも有名な以下の物理式は現れる。
エネルギーと質量の変換式
この式の、Eが(例えばある物体の持つ)エネルギー。
mが(例えばある物体の)質量。
そしてcが光の速度である。
時空の歪み 「特殊相対性理論と一般相対性理論」違いあう感覚で成り立つ宇宙
 相対性理論はこれまで数多くの実験によって、かなり確かな考え方らしいと保証されている。
そしてその計算の横道の到達点のひとつたる、この(「エネルギーの量」=「物質の質量」×「光速の二乗」)という結論の正しさなんかは、核兵器(僅かな質量を崩壊させただけでも莫大なエネルギーが発生するのを利用してる兵器)の恐ろしさや、原子炉(核兵器同様、僅かな質量が秘める莫大なエネルギーを利用した発電機)の便利さが、現代の誰しもに物語っている。

 そういうわけで、物体はエネルギーに変換できるものとも考えられる。
この世界の、物質と呼ばれる物は全て、エネルギーが何らかの姿形をとったものというわけだ。
素粒子論 「物質構成の素粒子論」エネルギーと場、宇宙空間の簡単なイメージ
 また、極論すぎるかもしれないが、こうも言えるだろう。
「結局この世界の物は全て同じもの」

像を映す仕組み

 例えばカメラオブスクラの壁に、「一本の木の像」を映し出す場合を考えよう。

 物質が光を反射する時、普通は全方向に反射する。
一本の木が光を反射する時、根も、枝も、葉も、木のあらゆる部分が、それぞれ全方向に光を反射する。
するとある一定の距離にて、木の下の方が上へと反射した光の一部、木の上の方が下へと反射した光の一部、普通に木の真ん中辺りが真っ直ぐ反射した光の一部、それら全てが交わる点がいくつもある。
そんな点のひとつに、部屋の小さな穴を配置したのがカメラオブスクラなのだ。
「ベクトル空間」基底、次元の定義。線形結合、従属、独立。n次元の写像
 光は普通、直進するという性質があり、集約された木の個々の部分からのそれぞれの光も、部屋の内部で、入ってきた時と同じ方向に直進する。
この時集約されたどの光も別方向を向いているので、必然的にバラける。
そして最終的に、下から上へ直進する「木の下の方からの光」は壁の上側。逆に上から下へ直進する「木の上の方からの光」は壁の下側。上下に動かぬ光は当然壁の真ん中に到達する。
すると結果的に、そこには(上下左右が逆にはなるが)個々の光を飛ばしてきた木の像が映し出されるという訳である。

 カメラオブスクラが映す像の大きさは、元の物体の大きさそのものでなく、内部で光がバラけてから、壁に到達するまでの距離に左右される。
その事を利用し、広い範囲の対象を縮小して、視界に納めやすくし、より正確な絵を描いたりする事が、このアイテムの本来の用途だったと思われる。

 しかしだとしても、いろいろな場所を描くのに、持ち運びも出来ない部屋なんて不便だろうから、小型化計画が持ち上がるのは当然であろう。
だがカメラオブスクラは原理上、部屋を小さくする為には穴も小さくしなければならない。
なぜなら穴を小さくし、捉える光の角度を狭めなければ、内部の小さくなった壁にバラけた光全てを到達させ、全体像を映し出す事は出来ないから。

 ところが穴の小型化された小型カメラオブスクラが映す像は、あまりに暗すぎて認識自体が困難であった。
さらに暗室に小さな穴というデザイン上、小型化しすぎると、そもそも映し出された像を外部から確認するのは難しく、記録を人の手で行う事は出来ない。

 小さい穴で、はっきりとした像。
人の手に頼らない像の記録。
カメラオブスクラの小型化において、主な課題はその二つだった。
後に、前者の課題は「『レンズ(lens)』の発明」が、後者の課題は「『フィルム(film)』の発明」が(さらに後には「『デジタル画像(Digital image)』の発明」が)解決し、ついに現代のカメラが誕生したのである。

レンズとフィルム式カメラ

レンズの発明

 小型のカメラオブスクラの実現には、像を映し出す為の光を捉える小型のギミックが絶対に必要であり、いろいろ試された末に、最も実用的なのがレンズであった。
レンズとは、ガラスなどで作られる、たいていは円よりの球体という見かけの光学素子である。(注釈3)

 この世界のもの全てが光を反射するわけではない。
空気とか水とかガラスとか、光をある程度、素通りさせるものもあり、そういう性質を『透過性(permeability)』と呼ぶ。
で、透過性のある異なるもの同士(例えば空気とガラス)の境界を光が通る時、その光が直進する方向が変わるという現象がある。
そのような現象を『屈折(refraction)』というのだが、レンズはこの「光の屈折(optical refraction)」を利用して、ある程度の光を一点集中させ、カメラオブスクラのソレのような像の投影を可能にする。

 どういう事かというと、レンズの(光が当たる)表面は、その真ん中から両端それぞれにかけて、厚さが異なり、(たいてい緩やかな)カーブを形成している。
レンズに光が当たる時、当然、レンズ表面の各部位の光に対する受け入れ角度は(レンズ表面がカーブを形成している為に)違う。
するとどうなるか。
受け入れ角度の異なるレンズの各部位ごとに、光の屈折の度合いは異なり、(上手くバランスを取れば)屈折したそれぞれの光は一点に集約されたりする。
これはつまり(カメラオブスクラの穴に比べれば)ある程度大きなレンズが取り込めるくらいの量(少なくとも部屋の小さな穴よりは大きな量)の光で、カメラオブスクラのギミックを再現可能というわけである。

 小型カメラオブスクラを実用化するにあたり、レンズは取り込む光の量を増やし、像の鮮明化をもたらした。
しかしレンズを採用しただけでは、まだ(現代的な)カメラとはとても言えない。
カメラとは、目に見える景色を、そのままで記録する為のアイテムなのだから。

(注釈3)光学素子

 光を利用して機能を発揮する機器などに使われる部品などをこう呼ぶ。
レンズ以外の代表的なものに、『プリズム』や『鏡』などがあり、それらもよくカメラに使われている。

感光材で焼き付ける

 レンズの開発によりカメラオブスクラは持ち運びが出来るサイズまで小型化された。
そしてその小型化されたカメラオブスクラが映す像を、記録に残すギミックの発明までの道のりは、カメラオブスクラ誕生から小型化までのそれに比べればずいぶんと短かったようである。

 自動的な記録は、最初、フィルムにより成された。
フィルムとは、光とよく反応する物質、例えば『フッ素(Fluorine. N9)』や『塩素(Chlorine. N17)』と『銀(Silver. N47)』の(『銀塩』と呼ばれる)化合物などに代表される、『感光材(Photosensitive material)』などとも呼ばれる物質を、紙や板などに塗り付けたものである。

 フィルム式のカメラの内部では、レンズが取り込んだ光が、最終的にフィルムに到達するようになっている。
そして映される像を、表面の感光材が引き起こす『化学変化(chemical reaction)』(注釈4)によって、フィルムは焼き付け、記録する。
化学反応 「化学反応の基礎」原子とは何か、分子量は何の量か
 フィルム式カメラが誕生したのが、感光材を用いて、カメラの像が記録された時だと考えるなら、1826年、フランスのニエプスが行ったいうソレ(感光材を使った記録)から、フィルム式カメラの歴史は始まったと言えるだろう。
しかしその100年以上の歴史は、フィルムを使わない『デジタルカメラ』の登場により、現在は幕を閉じた感がある。(そしてデジタルカメラの歴史も、『スマホ』の台頭により、早くも幕を閉じそうだとか、案外そうでもないとか(注釈5))

(注釈4)化学変化

 純粋な単体の原子なんて、この世界にはほとんど存在しないと言われる。
この世界の至るところで、原子はくっつきあい、混ざりあい、たまに崩壊する。
そんなふうにくっついたりする現象が、化学変化である。

 例えば鉄が空気中の酸素とくっついてしまい、サビてしまったりする現象。
水を加熱し、原子同士の(動きを激しくさせる事で)距離感を滅茶苦茶にして、気体(水蒸気)に変えてしまったりする現象。
などなどが、化学変化である。

(注釈5)スマホではまだ、一生の思い出写真は無理?

 確かに、本来はおまけにすぎないはずのスマホのカメラ機能の著しい向上により、かつて一般人向けと言われていた程度のレベルのカメラの売り上げは、近年著しく下がってきてるという。
しかし手軽に写真の撮れる時代だからこそ、一生大切になるかもしれない思い出写真を、スマホではまだ実現出来ないような高画質で撮りたいという人は、むしろ増えているらしい。
プロがよく使う高機能タイプのカメラである一眼レフの軽量化タイプといえるミラーレスの登場もあり、いわゆる(特に女性の)ハイアマチュアが数を増やしているという。

デジタルカメラの時代

画像データとして記録する方式

 デジタルカメラは、レンズが捉えた光をフィルムに焼き付けるのではなく、電気信号に変換、データ化してメモリーに保存する。
電気回路 「電気回路、電子回路、半導体の基礎知識」電子機器の脈
このデータ化という保存方法が便利な為に、デジタルカメラ開発により、比べると不便なフィルム式はすぐさま市場から消え去ってしまった。
というわけでは実はなく、デジタルカメラ登場から、現在のように主流となり、フィルムを駆逐してしまうまでにも、ちょっとばかし歴史がある。

 最初のデジタルカメラの候補はいくつかある。
その候補の中で最も古いのは1981年に、ソニーが試作機を発表した新世代カメラ『マビカ』である。

 マビカは、基本的にそれまでのカメラと違う点などは全然ない。
ただ記録方式にフィルムでなく、画像データとしてフロッピーディスクに保存する方法をとっている事以外は。
画質の悪さや、遅すぎる記録スピードなど問題点だらけであり、別に普及もしなかったのだが、それでもマビカがカメラ業界に与えた衝撃は相当なものであったという。

 続いて1986年。
キャノンが、ビデオ映像の1シーンを画像として保存するスチルビデオカメラ『RC-701』を発売。
1秒間に10枚の高速連写も可能と、当時としてはかなりのハイテクカメラであった。

 そして1988年。
人によって見方の異なるそれまでの候補と違い、ほぼ間違いなくデジタルカメラといえる『FUJIX DS-P1』が富士フィルムより発売される。
光を電気、つまりはデジタル信号に変換する『センサー(sensor)』が搭載され、レンズが捉えた光がそこに到達するような構成。
つまりかつてフィルム式カメラのフィルムがあったポジションにセンサーを搭載した、現在のデジタルカメラと同じ仕組みと言ってしまってもよい、まさしくデジタルカメラらしいデジタルカメラ。
しかしFUJIX DS-P1にも、画像データをたくさん保存するどころか、そもそもバッテリー稼働中限定の一時保存しか出来ないという、致命的すぎる欠点があった。

高画質、高性能、多機能、開発競争

 電源供給なしでデータ保存を可能とする『フラッシュメモリー』を採用する事で、画像データの半永久的保存を最初に実現したデジタルカメラは、1993年発売の『FUJIX DS-200F』である。

 さらに1996年くらいから、一般レベルにまで及びだしたWINDOWS(というよりOS)革命が、家庭用コンピューター『パソコン』の普及を急加速させる。(注釈6)
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 インターネットの認知度もついでに超加速。
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パソコンと直接繋げ、撮影した画像を送る事で、様々な利用が可能なデジタルカメラの注目度も爆発的に増加。

 そしてこの頃くらいから、高画質競争が目に見えて始まっていく。
各社はしのぎを削り、次々と、画像を構成する物理的要素であり、(高画質を実現するには不可欠である)細かな表現の鍵とも言える『画素数(pixel number)』の高いデジタルカメラを販売。

 また、96年10月発売、81万画素のセンサーを搭載した当時としてはかなりの高画質モデル、オリンパスの『CAMEDIA C-800L』は、単3電池に加え、比較的長持ちする充電式バッテリーを採用。
いよいよもってデジタルカメラは、長時間撮影も可能となっていく。
 
 翌年、1997年の7月。
オリンパスは前年のモデルをさらに越える高画質。
140万画素を実現した『CAMEDIA C-1400L』を販売。
デジタルカメラの画素はついに100万越えを達成したのである。

 それから1999年にはソニーの『Cyber-shot DSC-F55K』が画素数200万越え。
この頃には、一般ユーザー向けに小型化した『コンパクトデジタルカメラ』。
プロ向けの高画質モデルである『デジタル一眼レフ』が、市場ですっかり住み分けされ、撮った写真画像に特殊効果をかけたりするアイデア機能も標準となりつつあった。

 それから時は経ち、安いコンパクトデジタルカメラよりも普通に高画質写真が撮れたりもする、他にもいろいろ便利なスマホが登場。
市場は縮小を始めるも、スマホに負けない高級コンパクトデジタルカメラや、本格的な一眼レフの需要はむしろ増加。
そんな状況の中、『ミラーレスカメラ』が登場。
一眼レフの高画質、コンパクトデジタルカメラの軽量さを合わせ持つ、まさしくいいとこどりなこの新参デジタルカメラは、その最近まで実現出来なかった機構から考えて、まさしく今時のカメラであった。

 しかしながらミラーレスもカメラ市場の救世主となれたわけではなく、やはりカメラ市場は縮小を継続している。
デジタルカメラが今後生き残れるかどうかは、ある意味スマホの進化次第とも言える(カメラにとっては)厳しい状況である。

(注釈6)OS(オペレーティングシステム)という革命

 今では(それがあるのが)あまりに当たり前すぎて想像しにくいかもだが、OS(オペレーティングシステム)がなかった時代、コンピューターを扱う為に越えなければならない壁は凄まじく高かった。

 OSとは、つまり「コンピューター操作のビジュアル化」である。
かつてコンピューターは、何をするにしても、いちいち命令コードを入力しなければならなかったが、OSはよく使われる操作をアイコン化し、ユーザーはそれを適切にクリックするだけで、コンピューターを自在に扱えるようになったのだ。

 今、現在、もしパソコンのファイルを開いたり、閉じたりするだけでも、適切なコード入力が必要になってしまったらと想像しよう。
なぜOSが革命とまで呼ばれるのか、よくわかる事だろう。

デジタルカメラの仕組みと機能

イメージセンサー (撮像素子)

 デジタルカメラはレンズが捉えた光が、内部のセンサーに到達するようになっている。
この内部のセンサーは『イメージセンサー(撮像素子) 』という名で、光を信号に変換してデジタル画像を生成するという役目を担う、デジタルカメラにとって非常に重要なパーツである。

 与えられた光の強弱を感知する為の『フォトダイオード』というパーツがあり、イメージセンサーには、その画素数分の数の『フォトダイオード』が搭載されている。

 イメージセンサーには電気の『アンプ(増幅装置)』も搭載。
それぞれのフォトダイオードは、それぞれの位置で感知した光に応じて電気を発生させ、それらは『アンプ(増幅装置)』により、デジタル信号として扱えるくらいに増幅させられるのである。

画素数が高すぎるのはなぜダメか?

 イメージセンサーは画像の色合いを、フォトダイオードが発する信号の強弱から判断する。
そして画像を構成する「細かな小画像」とも言える画素数を高くするという事は、画像生成に必要なデジタル信号数、つまりは信号を発生させるフォトダイオードの数を増やす事に他ならない。

 しかし数を増やせば、当然フォトダイオードひとつひとつのサイズは小さくならざるをえない。
するとフォトダイオードひとつひとつが受けとる光量は減り、信号の強弱の幅も狭くなる。
結果、生成される画像の色合いは味気なくなったりする。

 それにフォトダイオードが小さいと、暗い場所など、取り込む光自体少ない場所では、ただでさえ僅かな光をしっかり捉えられなかったりして、上手く撮影出来なかったりする。

 よい写真を撮るには画素数(フォトダイオードの数)だけではない。
イメージセンサーの大きさも重要なのである。

レンズ

 レンズはたいてい、真ん中がもっとも厚くて、端に向かってカーブを描いている『凸レンズ(トツレンズ)』か、逆に両端がもっとも厚い『凹レンズ(オウレンズ)』のどちらかである。

 凸レンズは光を一点に集中させるのが得意で、凹レンズはバラけさせるのが上手い。
なのでカメラによく使われるのは凸レンズだが、凹レンズも、光の道筋などの調整の為に、凸レンズと合わせて使われる事もある。

 昔のレンズは全て球面状であったが、最近はそうでない場合も多く、球面のレンズを『球面レンズ(spherical lens)』、そうでないのを『非球面レンズ(aspherical lens)』と呼び分けている。

 レンズは捉えた光を一点集中する為にあるが、あらゆる方向からの光全てを完璧に一点に集めるのはさすがに困難極まりない。
なので、レンズの形状は、完璧でなくとも、少しでも光の一点集中が上手くいくようにつくられるのだが、その限界は、非球面レンズが、球面レンズを明らかに上回るのである。

 「ではレンズは全部、非球面で作ればよいではないか」という話だが、非球面レンズは球面レンズに比べ、作るのが難しいのである。
従来のガラスでなく、変形が容易な『プラスチック』を用いた非球面レンズも考えられたが、プラスチックは変形が容易すぎてしまい、ちょっとの熱で、使い物にならなくなってしまう。
プラスチック 「プラスチック」作り方。性質。歴史。待ち望まれた最高級の素材
そこでガラス製球面レンズをベースに、プラスチックで加工したハイブリッドの非球面レンズがさらに考えられ、これはそこそこ実用的で、安いカメラに非球面レンズが採用されている場合は、これの可能性が高い。

F値と絞り

 レンズの明るさの基準として『F値(F value)』がある。
これは数字が低ければ低いほど、明るい事を示している。

 レンズの明るさは、そのレンズがどれだけ無駄なく光を捉えられるかにかかっている。
このF値を調整出来るレンズも多いが、それはレンズに当たる光の量を調整する事で実現している。
レンズに当たる光の調整を『しぼり(diaphragm)』と言うが、例えば明るすぎる場所などでは、この絞りを強くした方が(つまりF値を上げた方が)綺麗な写真が撮れたりするので、この調整過程は大事である。

 絞りをしていない状態を『解放状態(Open state)』と言う。
だいたい基準として、この解放状態でF値が2.8のレンズは「かなり明るい」とされている。

画角と焦点距離とズーム機能

 近くの物を全て映すには視野を広げなければならず、逆に遠くの物をピンポイントで映したいなら視野を狭める必要がある。
カメラのレンズの視野は『画角がかく(Angle of view)』といい、mm(ミリメートル)で表現される。

 画角は50mmくらいが標準的であり、それはだいたい人の視野と同じとされている。

 最も鮮明に見える目標位置までの距離を『焦点距離しょうてんきょり(focal length)』といい、その距離は画角と密接に関係している。
つまりカメラの『ズーム機能(Zoom function)』とは、画角を狭めたり、広げたり(して焦点距離を長くしたり、短くしたり)する機能なのである。

オートフォーカス

 『オートフォーカス(auto focus)』とは、つまり撮影対象を自動的にはっきりとさせる機能。
はっきり言ってしまえば、いわゆる「ピント合わせ(Focusing)」の機能である。
現在のデジタルカメラにはたいてい標準装備の機能だが、その仕組みは物によってよく異なる。

 撮影対象からの光を二重に取り込み、それらがちょうど合わさるようにレンズを調整したり、撮影対象の明暗の比較から最適なパターンを探ったりと、どれにしても実は完璧な精度ではない。
なのでプロは今だに、マニュアル操作によるピント合わせを併用していたりする場合もあるという。

ファインダーと一眼レフカメラ

 カメラで写真を撮る時、どんなふうに撮れるのかを事前に確認できる覗き穴が『ファインダー(Viewfinder)』である。
しかしファインダーは、レンズと位置が異なる為に、正確さに欠けている。
そこで考えだされたのが『一眼レフカメラ』である。

 一眼レフの内部には反射用の鏡が備え付けられていて、本来イメージセンサーに当たるはずのレンズからの光を、普段はファインダーに向かわせているのである。
そして撮影者がシャッターを押すと、反射用鏡が動き、レンズからの光がイメージセンサーに届くようになるという仕組みである。

 一眼レフとはつまり、一眼(撮影対象そのものを確認出来る)レフ(レフレックスミラー、つまり反射用鏡)のカメラなのだ。

 またカメラ本体とレンズが別れているのも一眼レフの特徴で、同じ本体でも、レンズを付け替える事で、様々なシーンに対応出来る。
一眼レフカメラとレンズの接合部は『レンズマウント(Lens mount)』と呼ばれ、このレンズマウントの仕様が合うならば、世代違いのカメラとレンズのコラボレーションも可能である。

ライブビューとミラーレスカメラ

 デジタルカメラには、撮影前の確認方法が、ファインダー以外にもうひとつある。
イメージセンサーを常に動作させ、記録予定の景色をモニターにリアルタイム表示する『ライブビュー』と呼ばれる方法である。
コンパクトデジタルカメラや、スマホでは、よく使われる機能だが、一眼レフでも普通に利用可能なモデルは多い。

 そして「ライブビューも可能」ではなく、(コンパクトデジタルカメラやスマホのように)「ライブビューがメインの撮影前確認方法」であるレンズ交換式デジタルカメラが、『ミラーレスカメラ』である。
 
 一眼レフの最大の欠点と言えば、反射鏡を入れるスペースを確保しなければならないが故の、そのサイズと重量だったが、ミラーレスカメラはその反射鏡を取り去り、レンズ交換式カメラとしてはかなりの軽量化を実現。

 さらにレンズマウントを、一眼レフと同じものを採用したものが多く、乗りかえる人も増えてきているという。

最後のカメラ

 カメラオブスクラ。フィルム式カメラ。そしてデジタルカメラ。
思い出を消してしまいたくない。
今この時を記録に残したい。
そんな人々の思いが、カメラを進化させてきた。

最後は何になるか

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