マニュアルとオートの動物プログラム
誰かの内面
人は誰でも外面と内面をそれぞれ持っている。
ストレスの原因が外面である事は多い。
ストレスによる何かしらの影響が外面に現れる場合もある。
でもそれが働く場は内面である。
では人の内面とは何か。
体の骨組みである骨格。
体を動かす為の筋肉。
酸素など必要な物質を取り込み、二酸化炭素など不必要な物質を排出する「呼吸系」。
食物などを分解し、エネルギーの形に変える「消化器系」。
血液などを体内で巡らせ、心臓などを稼働させている「循環系(じゅんかんけい)」などといった様々な要素で人の内面は構成されている。
特に、あらゆる情報を、電気信号を利用して発信し、取得し、意思や記憶なんてものまで生み出している『神経系』は、ストレスを考える上で、重要なキーワードでもある。
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感覚神経、運動神経、自律神経
体内は神経だらけだが、その中で、「熱い」とか「痛い」とか、感覚的な刺激情報は『感覚神経』によって得られる。
また、『運動神経』と『自律神経(じりつしんけい)』は、体の格部位に命令信号を送り、体を動かす神経である。
運動神経が意思を通したものなのに対し、自律神経は意識を通さないという違いがある。
以上の3つの神経は、我々の行動と大きく関連している。
例えばあなたが、熱いヤカンに手を触れてしまったとする。
すぐさまヤカンの熱は、あなたの手の表面の構成分子を破壊する。
しかしその瞬間に、まだ無事なあなたの感覚神経は、危険な熱の情報を、『インパルス(電気信号)』として『脳』に伝える。
脳は、あらゆる情報を受信し、内部処理して解釈し、また必要な情報を発信もする神経系の核である。
脳に伝えられた、熱情報のインパルスは、すぐに処理され、危険であると判断される。
そこで脳はまず自律神経を使い、あなたの手を高熱のヤカンという危険な領域から、すぐに遠ざけさせる。
我々が見ている世界の中では、あなたはとっさにヤカンから手を離す格好となっている。
そしてそういうとっさの行動を『反射』と呼んでいる。
こうしてあなたの手を、さらに焼いてこようとする高熱から守った脳。
だがまだ終わりではない。
次に脳は、あなたの記憶に、ついさっきのインパルスを、言葉では「熱い」と表現されるような感覚情報として定着させる。
「熱い」は苦しい感覚だ。
そんな苦しみを味わいたくないあなたは、運動神経を使い、自分から再び熱いヤカンに触るなんて事はしない。
しかしあなたは、熱はやがて冷めるという事も知っている。
なので、しばらくの後、もう触っても熱くないだろうヤカンに、あなたは自分の意思で手を伸ばす事ができる。
運動神経を通して。
という風に、知覚や感覚というものは成り立っているのである。
ホルモンと内部分泌系
『ホルモン』とは、体内の、様々な器官や細胞などの、動きを推進したり、逆に止めたりする化学物質である。
ホルモンもまた何種類もあるが、それらは『内部分泌系(ないぶぶんぴつけい)』により放たれる。
ホルモンが内部分泌されるのは、脳の最下部である『脳下垂体(のうかすいたい)』や、喉にある『甲状腺(こうじょうせん)』や、胃の近くにある『膵臓(すいぞう)』などである。
これら分泌系の器官は、脳の命令に従って、ホルモンを分泌して放つ。
そして特定の器官などに到達すると、ホルモンは、その動きに対して影響を与えるのである。
ホルモンはまた、成長や、その人らしさにも深く関係していると考えられている。
免疫系と白血球
自律神経や、内部分泌系と、影響を及ぼしあう関係にある『免疫系』は、人の健康に関する最重要要素である。
体内に侵入してきた、病原菌などを排除するのが、その存在目的となる。
病原菌を殺す為の攻撃専門の『免疫細胞』などの働きの総称でもあり、外敵のみならず、間違った分裂により生じた「欠陥品の細胞」の処理も担う。
この欠陥品の細胞とは、一般的には『がん細胞』と呼ばれるものである。
免疫細胞は、『白血球』と呼ばれる事もあり、これにもいくつか種類がある
異物を吸収し、その異物の情報を、他の免疫細胞に伝える事で、最適な活性化へと繋げる、「樹状細胞(じゅじょうさいぼう)」。
樹状細胞と同じように、異物を吸収するが、そのまま自身で消化処理してしまったりもするマクロファージ。
樹上細胞などからの情報を元に、直接的に菌を攻撃する「T細胞」。
相手取る菌に対する抗体を生成する「B細胞」。
それに他の免疫細胞とは連携する事なく、ただひたすら体内を巡り、異物を見つけたら排除に勤める「NK細胞」などである。
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コントロールシステム
自律神経などの神経系や、内部分泌系や免疫系は、いわば一個人の内部コントロールシステムである。
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手の動きなどとはちがって、それらを意思によって自由にするのは難しい。
まるで動物を動かすプログラムのオート部分。
そもそも、そんなコントロール機構が、はっきり明らかにされたのはそんなに昔の話ではない。
それに何らかの影響を及ぼすストレスの研究も、19世紀に始まったばかりである。
ストレス研究の歴史
夢は作家、現実は生理学教授
1813年7月13日。
ロバート・ベルナールは、フランス東部ローヌ地方の村サン・ジュリアンにて産まれた。
父はワイン商、母は農家の娘。
そんな彼は、イエズス会の学校で初等教育を受け、薬剤師の助手になったが、夢は劇作家であった。
しかしパリにて評論家に酷評されたベルナールは、作家をあきらめ、パリ大学の医学部に入学し、勉強に打ち込んだ。
そして1843年に、医学の学位を取得し、1854年には、ソルボンヌ大学で生理学の教授となった。
ベルナールの真骨頂はカエルやウサギなど、様々な小動物を使った医学実験であり、彼は、現在では「実験医学の開祖」とまで呼ばれている。
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外部環境と内部環境
ベルナールは、気温などの、体外を取りまく環境を『外部環境』。
一方で、体内の細胞や、細胞間を満たす血液などの体液を全て合わせて『内部環境』と呼んだ。
ベルナールは生理学者として、様々な功績を残したが、その内の大きなひとつが、「動物の内部環境の独立性」である。
これは動物の内部環境は、すぐ周囲の外部環境とは明確に区切られているという考え方だ。
例えば人間は、体内の温度を常に一定に保つ性質を持っている。
だから、暖かい屋内から寒空に出てきても、真冬にストーブで長時間暖まっても、体温はさほど変化しない。
これは内部環境が、外部環境とは隔絶されているからこそ可能な芸当である。
ただベルナールは、この「独立している内部環境というシステム」に名前もつけなかった。
もしかしたら、つけてたのかもしれないけど、少なくとも定着はしなかった。
そこでこのシステムに名前をつけ、とっきやすくしたのはアメリカの生理学者キャノンだった。
新婚旅行に山登りした大学教授
ウォルター・ブラッドフォード・キャノンは、1871年10月19日、ウィスコンシン州に産まれた。
1896年に、ハーバード大学医学部に入学し、1900年に医学の学位を取得。
卒業後は、ハーバード大学の生理学科のインストラクターとなった。
真実か妄想かは不明だが、18世紀の探検家ジャック・ド・ノワヨンの家系らしく、本人も、新婚旅行に奥さん連れて山登りするくらいには冒険好きだったようである。
そんな彼の研究分野は、内部分泌や自律神経と、『情動』との関係性についてであった。
情動とは、感情の急速な動きや、それによって誘発された身体的動作。
例えば、映画に感動して、体を震わせて泣いたりとか、そういうのである。
ホメオスタシス
キャノンは、ベルナールの「独立内部環境のシステム」に『ホメオスタシス(恒常性の維持)』という名をつけた。
これは造語で、ラテン語のホメオ(似たような)とスタシス(一定状態)を合わせて作ったという。
キャノンはさらに、ホメオスタシスのメカニズムをより明確にした。
自律神経は、 激しい運動時や緊張時に活発となる『交感神経』と、休息時などに活発となる『副交感神経』の二種がある。
この二種類の神経の働きのバランス。
さらに免疫系による、余計な異物排除。
そして内部分泌系による、状況に応じたホルモンによる調整。
これらのような、自律神経、免疫系、内部分泌系の役割が、上手く重なりあい、相互作用する事で、ホメオスタシスは成り立っているのである。
例えば寒い時に、自律神経や、筋肉の動きを誘発するホルモンの分泌が、体を震わせて体内に熱を発生させたりという感じだ。
ホメオスタシスとはそういうのである。
緊急反応
さらにキャノンのホメオスタシス研究は続く。
間近で犬が吠えたら、猫は興奮し、毛を逆立てる。
「犬」人間の友達(?)。もっとも我々と近しく、愛された動物
このような時に、猫の身にいったい何が起きているかを、キャノンは調べた。
光が眼球に入る入口である瞳孔の大きな開き。
呼吸や脈拍リズムの加速。
血圧の高まり。
血中のブドウ糖や酸素を運ぶ赤血球の増加。
胃腸の運動と、唾液や胃液の減少。
キャノンは上記のような、おそらくは危機的状況に引き起こされる一連の反応を『緊急反応(きんきゅうはんのう)』と名付けた。
そしてさらに詳しく調べる内に、緊張反応は、『アドレナリン』という化学物質の働きによって引き起こされる事を突き止める。
アドレナリンは、心臓を活発化させたり、血圧を上昇させたり、血中のブドウ糖を増やしたりする。
腎臓(じんぞう)上の、福腎(ふくじん)から分泌されるホルモンである。
勇者(?)とストレスの発見
当たり前といえば当たり前の話であるが、キャノンは、緊急反応を、自身が置かれた危機的状況を打開する為の反応だと考えた。
大きく瞳孔を開くのは、目前の敵をよりはっきりと見るため。
呼吸や脈拍を増やし、心臓を強く動かす事で血圧を上げるのは、目の前の敵に対して脳と体を鋭く機能させるため。
唾液や胃液の減りは、緊急時には必要もなく、余計なだけの消化などを抑えるため。
犬に吠えられた時の、猫の緊急反応は、戦うにしても逃げるにしても、最適な構えを用意するのである。
緊急反応は、人間にも起こる。
花瓶を壊してしまい、その音を聞きつけた親が来た時。
野球してたら、ホームランボールが、どっかの家のガラスを割ってしまった時。
動物園から逃げ出したライオンと街中で遭遇してしまった時。
そういう風な状況に出くわした時、たいてい人も、犬に吠えられた猫と同じような反応をする。
それこそ本物の勇者でもないかぎり。
そして、緊急反応を引き起こす、目前の危機的状況を、キャノンは『ストレス』と名付けたのである。
この言葉は元々、英語のディストレス(苦痛)を短くした言葉であり、「圧力による歪み」を示す物理学用語だった。
しかし、後に、ハンス・セリエという人が、この言葉を生理学用語としてメジャーにする。
15000を従えし者
1907年1月26日。
オーストリア=ハンガリー帝国のウィーンに生まれたハンス・セリエは、1929年に医学と化学の博士号を取得する。
1936年から、彼はストレス問題の研究を始めるのだが、アシスタント40人に、15000を越える実験動物という、けっこう凄いスケールであったらしい。
彼の最大の功績とは、いよいよ核心、『ストレス理論』の提唱であった。
結局新しいのは発見できず
元々セリエは、新しいホルモンの発見を目指していた。
そこで「ネズミから抽出した物質を、そのネズミ自身に注射で返す」という、一見何をしたいのかよくわからないような実験を何度も繰り返していたのである。
「ネズミ」日本の種類。感染病いくつか。最も繁栄に成功した哺乳類
しかしそんな実験を続ける内に、どの物質を注射した時にも、共通して発生するネズミの症状が3つある事に、セリエは気づいた。
副腎皮質(ふくじんひしつ)の肥大(ひだい)。
胸腺(きょうせん)と脾臓(ひぞう)の萎縮(いしゅく)。 それに胃と十二指腸(じゅうにしちょう)の出血である。
ちなみに、副腎皮質は、副腎の外層部分。
胸腺は、心臓の上側にある器官。
脾臓は、胃の左後ろにある臓器。
十二指腸は、胃の出口から小腸までの部分である。
3つの症状は、ネズミ自身とは全く関係ない有害物質を注射した場合もあらわれた。
それはつまり、それらの症状は、物質の種類でなく、異物に対するとりあえずの反応である事を示していたのだ。
ストレス状態
セリエは、医学生だった頃に、病気になった人を多くみてきた。
そして、どのような病気にせよ、共通して引き起こされる症状がある事を覚えていた。
例えば発熱とか、関節痛とか、食欲不振とかである。
この確かな記憶と、自分が発見した異物注射時の決まった反応を結びつけた時、セリエはある結論を手にした。
異物を注射され、体に変調をきたした状態は、病気の状態に近しい。
とするとネズミの症状は、いわば病気状態を示すものだったのである。
さらにセリエは、異物だけでなく、外部からの強い力や熱などにも、病気状態が誘発される事を示した。
この病気状態は後に、『セリエの一般適応症候群』、あるいは『ストレス状態』と呼ばれるようになる。
ストレス状態の3段階
セリエは、ストレス状態には、経過時間に応じた3段階のパターンがある事も見いだす。
以下の3段階である。
まず第1段階。
『警告反応期』。
ストレスを認識してすぐの段階で、体温や、血圧が下がり、神経の活動が鈍くなる。
しかししばらくすると、この状態は落ち着き、第二段階に入る。
第二段階。
『抵抗期』
これははっきり言ってしまえば、警告反応期の種々の反応に対して、慣れた状態である。
ストレスによる、体の緊張は継続するも、抵抗力がそれと拮抗し、特に何ともなくなっている段階である。
ストレスは宇宙の広さあっても、抵抗力は自分の中にある分だけなので、どうしてもこの状態は持続させられない。
第三段階。
『疲はい期』
ついにストレスに対する抵抗が続かなくなってしまうと、この第三段階となる。
体温は下がり、胸腺や副腎皮質も弱ってしまう。
そしてこの状態が続くと、第4段階、とはならず、冗談でもなく死を迎える事となる。
専門家専用(?)のストレッサー
現在人の会話では、ストレスという言葉は、ストレス状態も、その原因も合わせての意味だったりする。
例えば想像を絶する難易度のゲームをプレイしているとする。
もう何千時間も費やしてるのに、全然クリア出来ない。
しかし、ふとネットで調べると、実はそのゲームはバグでクリア出来ないのだとわかったとする。
これはもう問答無用でストレス状態になってしまう人もいるだろう。
このような場合、現在では、そのイカれたゲーム自体も、ストレスと表現されたりする。
だが、少なくともセリエは、ストレス状態を引き起こしている作用をストレス。
そしてその作用原因は、『ストレッサー』と名付け区別していた。
つまり先の、実はクリア出来ないゲームの話では、ゲームはストレッサーという訳である。
そしてストレスとストレッサーの使い分けは、心理学、生物学的にストレスの話をする場合には、現在でも普通にされる。
ストレスと病気
PTSD
『PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)(心的外傷後ストレス障害)』とは、強烈すぎるストレスに見舞われた場合に起こりうる病気である。
抵抗なんてはなから出来ないくらいのストレスから、自身を守る為に、脳が記憶力や理解力、認識能力を意図的に低下させた状態であるとされる。
激しい無力感や、恐怖感、大きな悲しみ、何かへの依存などが主な症状であり、社会でまともに生きていくのが難しくなる。
そして理解力や認識能力が低下している為に、例えストレッサーがなくなったとしても、なかなか本来の元気を取り戻しにくいから、恐ろしい。
戦争からの帰還兵などに起こりうる、このPTSDは、人の暴力性が生んだ病気ともいえる。
過労死が簡単に起きる日本社会
ブラック企業天国ともされる日本社会の大問題として、よく話題となる『過労死』だが、これももちろん原因はストレスという事になる。
ただしたいていの過労死は、ストレスに直接殺される訳ではない。
ただ、長時間労働や、上司からのプレッシャーなどのストレッサーが、体の抵抗力の弱体化を招く。
そして弱体化した体では、病気などにも耐えきれず、ついには死んでしまうという訳である。
ストレスの仕組み
アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン
脳には140億くらいの『神経細胞』があるとされている。
神経細胞とは、情報の送受信、持ち運び、処理を行う細胞である。
また神経細胞同士が繋がりあう接続領域は『シナプス』と呼ばれている。
これは、ギリシャ語のシン(繋ぐ)とアピロス(無関係な物)を合わせた名称である。
シナプスでは、神経細胞が情報をやりとりする為の、化学物質が飛び交う。
そして、その飛び交う化学物質を『神経伝達物質』という。
現在では、副腎から分泌されるホルモンのアドレナリンは、「怒り」に関係した神経伝達物質でもあると考えられている。
他の神経伝達物質としては、「恐怖」に関係する『ノルアドレナリン』。
「喜び」に関係した『ドーパミン』などが、よく知られている。
神経伝達物質はまた、内部分泌系や自律神経にも、情報伝達手段として利用されていて、感情に関係する事から、ストレスにも大きく関わりがあるとされる。
セロトニン
アドレナリンなどの物質がひたすらに分泌され続けるというのはまずいだろう。
多分、もっともわかりやすいのは、ノルアドレナリンの場合だ。
ノルアドレナリンはいわば恐怖を引き起こす伝達物質。
これが際限なく分泌され続け、何もかもにひたすら恐怖し続けたらどうなるか?
食事も怖い、寝るのも怖い、当然街を行く他人も、家族も、自分の存在すら怖い。
もうそうなったら、ただ生きる事すらほぼ不可能である。
なので、『セロトニン』という神経伝達物質もある。
これは、他の神経伝達物質の効果をシャットダウンする役割を担っている。
ストレスにより、脳内のアドレナリンやノルアドレナリンが増えすぎると、セロトニンも分泌されて、それらの必要以上の働きを抑える。
しかし、あまりに強いストレッサーや、長期間のストレス状態には、セロトニンの分泌が間に合わない。
結果、脳内にアドレナリンが増えすぎて、怒りっぽくなったり、ノルアドレナリンが増えすぎて、対人恐怖症になったりする。
そして情緒不安定の自分が抑えられず、それがまた更なるストレスを生むのである。
つまり我々は精神攻撃に弱い
生物の構成要素として、精神の歴史は浅いのだろう。
実はそうと思える根拠が、ストレスの研究から出てきている、
ストレッサーには痛みなど物理的ものと、緊張など精神的なものがある。
実はこれまでのストレス研究によって、動物は物理的ストレッサーより、精神的ストレッサーに弱いらしい事が明らかになっているのだ。
例えばこのような実験がある。
とりあえずネズミに電気ショックを与える。
「電磁気学」最初の場の理論。電気と磁気の関係
ネズミの脳も神経伝達物質としてアドレナリンとノルアドレナリンを使うので、電気ショックを受けたネズミは、恐怖、つまりノルアドレナリンを多く分泌する。
しかし毎日、電気ショックを与えていると、分泌されるノルアドレナリンの量はあっさり減っていくのだ。
つまりネズミは慣れるのである。
しかし最初に少し風変わりな部屋で電気ショックを与えた後、部屋を変える。
そして、もう電気ショックは与えず、毎日ネズミを、最初の風変わりな部屋に入ってもらう。
つまり電気ショックを浴びせるのでなく、その浴びた記憶を呼び覚まさせる。
これは最初はあまりノルアドレナリンを分泌しない。
しかし毎日だと、だんだんとその分泌量は上がっていくのである。
実験は明らかに示している。
つまり物理的ストレッサーは慣れる事が出来るが、精神的ストレッサーはそう簡単にはいかない事を。