「恐竜絶滅の謎」隕石衝突説の根拠。火山説の理由。原因は場所か、生態系か。

隕石衝突

K/Pg境界の大絶滅

 鳥類を除く恐竜が絶滅したのは白亜期末、『K/Pg境界(Cretaceous-Paleogene boundary)』と呼ばれる時期とされている。
恐竜「恐竜」中生代の大爬虫類の種類、定義の説明。陸上最強、最大の生物。 古くはK/T境界と呼ばれていたK/Pg境界は、6550万~6600万年くらい前の時期。
恐竜のみならず、翼竜や首長竜、他にも多くの生物がこの時に絶滅した。
翼竜「翼竜」種類、飛行能力、進化史。恐竜との違いはどのくらいか プレシオサウルス「首長竜」恐竜時代の海の覇者。種類、進化、化石の研究記録 また、恐竜に属する生物の中でも鳥類は生き残ったが、その鳥類でも、70%以上は絶滅したとされている。
風切り羽「鳥類」絶滅しなかった恐竜の進化、大空への適応  『大絶滅(Great extinction)』と呼ばれる現象は、これまでの地球の歴史上、何度か起こっていると考えられているが、K/Pg境界の大絶滅は、その最も最近のものであり、おそらくは最も強く関心を持たれている。

食物連鎖の崩壊による連鎖

 大絶滅というのは、普通そうだと考えられているが、K/Pg境界の絶滅も、植物が大きな被害を受けている。
植物は食物連鎖の下の階層、いわば支え。
極論言ってしまえば、もし植物が絶滅すると、それを食べる草食動物が死んで、さらに草食動物を食べる肉食動物が死にたえ、全て絶滅するというわけである。

 K/Pg境界の頃、世界中の様々な地域で、一時的に被子植物が消えさったか、あるいは数を相当減らしたことが知られている。
単純にその時期の地層から、花粉の化石などが全然見つからなくなっているのだ。
 一方、地域によっては、気候や土壌の悪化に強いとされているシダ植物は、むしろ数を増している痕跡があるという。

 また、K/Pg境界の直後には、被子植物もシダ植物も全然なく、菌類の胞子が増えている地域もあるようだ

 何にせよ、この時期に、何らかの激変が地球に起きていたことは、かなり間違いなさそうである。

光合成を行う植物が大きな被害を受けた?

 主として姿を一時的に消したのは、光合成をする植物ばかりのようである。
光合成「光合成の仕組み」生態系を支える驚異の化学反応 草食恐竜はほとんどが、そのような植物を食べていたから、絶滅を免れなかったのだろう。

 そして、昆虫や落ち葉や菌類を主として食べていた肉食哺乳類の方が、大型草食恐竜を食らっていた大型肉食恐竜よりも、遥かに生き延びやすかったはずである。

 また陸上に生息する脊椎動物に比べて、川などの淡水環境に生息してた脊椎動物の絶滅率は圧倒的に低かったようである。
例えば淡水魚や両生類は、それほど深刻な被害を受けなかったとされている。
これは明らかに、淡水環境では光合成を行う生物が少ないことが原因である。
言うなれば淡水域に限っては、生態系サイクルの中に傷が入らなかったわけだ。

隕石衝突説。チチュルブ・クレーターの衝撃か

アルヴァレスの論文と、メキシコ・ユカタン半島のクレーター

 カリフォルニア大学バークレー校のルイス・アルヴァレスとウォルター・アルヴァレスの親子が、 白亜紀末の大絶滅の要因について述べた論文を発表したのは1980年6月のこと。
 彼らは、白亜期末の地層であるK/Pg境界のイリジウム濃度が、異常とも思えるほど高いことの説明として、隕石衝突シナリオを提唱したのだった。
イリジウムは、地球の表面にほとんど存在しない元素であり、まさしくそれは、大絶滅が起きたその時期に、地球に巨大な隕石が衝突した証拠であった。

 アルヴァレスの考えたシナリオ以下のようなものだ。
 直径10kmほどの隕石が地球に衝突し、大量のちり(ダスト)が空高く舞い、太陽からの光を数年間ほど遮った。
そうして、太陽の光をエネルギー源とする 光合成生物が多大なダメージを受けた。
そこから、連鎖的に様々な生物が絶滅に至った。
 このシナリオは今でも、隕石衝突説において基本的な考え方である。

 そして1991年に、メキシコ、ユカタン半島で、直径180キロにもなる巨大クレーターが発見され、隕石説は、かなり確かなものとなった。
『チチュルブ・クレーター』と呼ばれるそのクレーターから取ったサンプルの調査結果は、まさにそれがK/Pg境界のものであることを示しているのだという。

隕石衝突による大量絶滅シナリオ

 おそらくはチチュルブクレーターの隕石は、 大量の灰の空以外にもいくつもの天変地異をもたらしたと考えられている。

 太陽光が遮られたことによる地球規模の一時的な寒冷化。
さらにその後は、大量に発生した二酸化炭素の温室効果による温暖化も生じたかもしれない。

 大気中に硫黄が大量に放出された後の硫酸の雨。
そのような雨が降り注いだ海もかなり広い領域において酸性になってしまったと考えられている。
実際に、K/Pg境界の絶滅において、酸に弱い石灰質の殻を持つ水生生物が大きな被害を受けた痕跡があるという。

 また、銅やクロムやアルミニウム、水銀や鉛など、隕石に含まれてた有毒な物質が多く海に流れたはず。

 さらに隕石の強烈の衝突は、プレートを動かし、大地震や大津波を引き起こしたと考えられる。
プレート地図「プレートテクトニクス」大陸移動説と地質学者達の冒険

火山活動説。もう一つの人気仮説と、その現状

 隕石衝突説の次に有名なのが、火山活動の活発化による、漸進的ぜんしんてきな(つまり徐々に起こった)大規模絶滅であろう。
火山噴火「火山とは何か」噴火の仕組み。恐ろしき水蒸気爆発 むしろ、隕石衝突説に反対する古生物学者、地質学者たちは、だいたいが火山説支持者らしい。

デカン・トラップとイリジウム

 『デカン・トラップ』と名付けられている、大規模な火山活動の痕跡としての大地が、特に重要視される。
デカン・トラップを形成した火山活動の時期は、ちょうどK/Pg境界の時期くらい。

 火山説支持者は、アルヴァレスの論文以後。
イリジウムは、火山活動により形成された大地からも大量に放出されると主張した。
 さらに、白亜紀末の地層のイリジウムは、ある程度の範囲にバラけた感があり、隕石によって急に蓄積されたものではないだろう、という反論もあった。

 現在では、K/Pg境界のイリジウムは、デカン・トラップ由来ではない可能性が高いと考えられている。
 また、隕石由来で急にイリジウムが広がった場合でも、広がった後に地層内で、生物の活動などによって、微粒子のイリジウムがバラけることはありうる。

 もちろんデカン・トラップの火山活動自体が、隕石によって引き起こされた可能性はある。

 以上のように、今は一般的に火山説よりも隕石説の方が有力だとされている。
そもそも、チチュルブ・クレーターは、隕石出なく、火山が起源であるという火山説支持者の主張も、一時はあったようだが、 それに関する根拠は乏しい

絶滅論争と、残された謎

絶滅は突発的か、漸進的か

 隕石が大量絶滅の原因なら、おそらくは突発的なものだった。
ただ、ここで言う突発とはあくまでも、地質学的年代のスケールにおいての話である。
つまり隕石衝突後、環境が激変して、それから何千年か、あるいは何万年くらいの時間で絶滅していったのだとしても、それは突発的な大絶滅と言われる。

 一方で火山説シナリオは、基本的には漸進的な絶滅だったとする。
おそらくは数百万年くらいの時間、火山活動が大規模になった時期があって、そこで多くの生物が、徐々に徐々に絶滅していったというのである。

 化石生物の大量絶滅が、突発的だったか、漸進的だったかを判断するのは非常に難しい。
 我々は一般に、ある地層で化石生物を発見すると、その生物がその地層の時期に生きていたのだと判断する。
そして、次の時代の地層からその生物の化石が見つからなければ、その生物は絶滅したのだと判断する

 しかしそもそも、化石が残されるというのは、よほど反映していた生物に限られた話である。
化石として残るなんて、凄まじく小さな確率なのだ。

 他の地層で運よく化石になれた者がいなかったせいで、生存時期が勘違いされている生物はおそらく大量にいる。
 これがそのまま、絶滅速度の勘違いに繋がることもあるのである。

シニョール・リップス効果

 特に化石記録のせいで、突発的な絶滅は、漸進的な絶滅と勘違いされやすい。
それは『シニョール・リップス効果』と呼ばれている。
統計学由来の言葉らしい。

 ただし、 石灰質の殻を持つプランクトンは、本当に、K/Pg境界の時期に、世界規模で急に死滅したとしか思えないほど、化石記録から一気に消えているという。

 さらにはK/Pg境界の大絶滅の後、生態系の空いた穴を埋めるように、新種の生物が一気に大量発生していることも、突発絶滅の根拠としてよくあげられる。
もし徐々に絶滅していたなら徐々に開いた生態系の穴を徐々に埋めるように新しい生物が誕生していったと考えられるのに、実際は、K/Pg境界の後に、(少なくとも化石記録的には)新種が一気に発生している。

他の大量絶滅に関して

 K/Pg境界の絶滅に関して、隕石衝突説を支持する人でも、チチュルブレベルでないと、世界規模の大量絶滅にまでは発展しない、というのはよく言及されていることである。

 そして、チチュルブクラスの隕石は、 おそらく10億年に一度くらいの悲劇だろうという、天文学者の意見もあるそうだ。
そして生物は、化石記録的には明らかに、カンブリア紀(5億4200万年前~4億8830万年くらい)以降、複数回の大量絶滅を経験している。

 そういうわけで、K/Pg境界の絶滅の原因が隕石であったのだとしても、他の絶滅まで隕石であると考えるのは厳しい。

 大量絶滅は周期的に起きているような感じがするから、原因を一つのものに求めたがる人は多い(コラム)。
そうすると、「地球は定期的に火山活動を活発にし、大量絶滅を引き起こす」というような考え方は、確かになかなか魅力的かもしれない。
ガイア「ガイア理論」地球は生き物か。人間、生命体、生態系の謎 かたくなに隕石説を拒む人が多いのも頷ける話である。

(コラム) 大量絶滅を引き起こす誰かがいるのか

 そもそもこの地球という星は、火山活動の周期的な活発化のような、定期的に生物が絶滅するような機構が備わっている。
そうでないと、まるで誰かが、時たまいろいろな方法で、大量絶滅を引き起こしてるみたいではないか
宇宙プログラム「宇宙プログラム説」量子コンピュータのシミュレーションの可能性

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