怪火の読み方と、よく言われる正体
明かりもなく暗闇の田舎道を歩いていると、実際に謎の光、『怪火』が現れることがあるという。
そういう光はかつて、幽霊や、魔女の使い魔だと考えられていた。
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ウィルオウィスプ、鬼火、きつね火など、さまざまな名前もつけられた。
しかし現在は、そのような光の原因のほとんどが、大気や水辺に反射した光とか、放電現象とか、流れ星とか、人工物の光であることがわかっている。
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ちなみに怪火は「かいか」とも読むらしい。
迫りくる幽霊船の光の恐怖
セントエルモの火という現象。その意味
帆船に、帆を張るために備え付けられた棒をマストと言うが、 悪天候の日には、そのマストの先が発光することがある。
その光は『セントエルモの火』と呼ばれている。
セントエルモの火は、静電気が原因で起きているのだが、原因が不明だった頃は、文字通り、船乗りたちの守護聖人である聖エルモことエラスムスが灯してくれた火とされていた。
守護聖人が灯してくれた火、というぐらいだから、基本的にはありがたいものだったようだが、真夜中の海で、遠くから近づいてくる光が見えたなら、やはり不気味であろう。
フライングダッチマン号の伝説
昔の船乗りは、シーサーペントのような怪物と同じくらい、『幽霊船(Ghost ship)』に遭遇したも言われる。
しかし幽霊船の伝説は、海の怪物に比べればずっと新しいものともさられている。
幽霊船を『フライング・ダッチマン号(さまよえるオランダ船)』ということもある。
『フライング・ダッチマン(さまよえるオランダ人)』の船だから、そう言うらしい。
幽霊船がそのような名前で呼ばれるようになったのは、最初の幽霊船、あるいは幽霊船というものを有名にした伝説が、まさしくフライング・ダッチマンの話だからだそうである。
この伝説自体も、様々なバリエーションがあり、元々の内容がはっきりしないが、大まかなあらすじは以下のようなものである。
17世紀くらい。
オランダ人の船長の船が、希望岬の辺りで嵐に見舞われたが、酔っ払いの船長は気にしなかった。
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前に進むことも難しいのに、引き返そうともしない船長に対し、 船員たちは反乱を企てたが、失敗。
だが、亡き者にされた反乱のリーダーが海へと捨てられた時、謎の影が現れ、船長に対し、「この船は永久に海をさまよう呪いを受けた」と告げた。
そしてその、さまようオランダ人船長の船は、まさしく永遠、今でも広い海のどこかをさまよっているのだという。
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幽霊船と怪火は深く関係しているか
幽霊船と怪火は、深く関連している、あるいは同一の現象ではないか、という説もある。
これはおそらくは、セントエルモの火が、怪火の中でも、特に有名なものだったから、と考えられる。
遠くに光が見えてそれがだんだん近づいてきた。
近づいてくると、それは船であるとわかり、このままだとぶつかってしまうから、それを音なで知らせてみる。
しかし船は止まらず、 もうどうしようもない、ぶつかる、というところで消え去る。
こういうのは典型的な幽霊船の物語のパターンである。
漂流した無人船はありえるか
ぶつかる寸前に消えるとかはともかく、接近してくる船が警告に構わずそのまま前進してくるというようなことは、あるかもしれない
別に狂人の船とか、そういうわけではなく、無人の漂流船である場合である。
例えば嵐などに見舞われた時に、船員達はボートで逃げ出して、船だけが残ったが、結局、船は嵐で沈まず、海が静かになってからも、しばらく漂う。
そういう、捨てられたけど沈まなかった船と、海上で偶然に出会うこともあるかもしれない。
というか、そういう話は実際に記録に残っている。
例えば1884年のFJメリーマン号の例などがまさにそれだ。
長い航海の末に、ニューヨークの港に止まったこのアメリカ船を運航していたのはドイツ人たちだった。
港の案内人フランク・ボイドの前に現れた船長のハンス・ホッフシャイトも、自分は本当はフレデリック・スカルラ号という船の船長なのだと名乗った。
最初は海賊行為を疑われもしたが、真実は違っていた。
フレデリック・スカルラ号が嵐で駄目になってしまった時に、運よく、ほぼ無人船となっていたメリーマン号が現れ、スカルラ号の者たちは九死に一生を得たのである。
メリーマン号の本来の船員たちを消し去ったのは、嵐ではなく伝染病で、スカルラ号と遭遇した時に生き残っていたのはトップマン(鐘楼員)とボーイ長とコックだけだったという。
エグリンの光。UFO以前のUFO
今ではUFO(というよりエイリアンクラフト)と考えられるような現象も、古くは怪火と同種の現象とされてたのかもしれない。
実際UFO神話は、1947年のアーノルド事件から始まったとする見方も強いが、それ以前にも、そうと考えられる現象は数多く報告されている。
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特に、1904~1905年の頃のウェールズの伝道師メアリー・ジョーンズの周辺で目撃された、いわゆる『エグリンの光』は、重大な謎のひとつと考えられている。
メアリー・ジョーンズの祈祷会
メアリー・ジョーンズは、メリオネスシャー(グウィネズ)州の、エグリンという村の、農夫の妻だった。
彼女は、当時ウェールズ地方で盛り上がりを見せていた、クリスチャンの復興活動の伝道師の一人であった。
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メリオネスシャー州は、わりと古くから謎の光の噂が多いようだが、メアリーの場合、それが彼女の説教中に、説教を聞いていた大勢の人たちの前で発生したから、 多くの人の関心を呼んだのだった。
メアリー自身は、人の姿をした神から使命を告げられたそうで、メリオネスシャー州の人々に、信仰心を蘇らせるための巫女に、自分が選ばれたのだと信じていたようだ。
そして、礼拝所で彼女は、祈祷会(キリスト教の祈りの会)を始めたが、それに参加した人たちも、光を見て、改宗することになっていったのだった。
具体的には、周囲から10ほどの光が集まってきて、一つに重なったかと思うと、大きな音がする、というような感じだったらしい。
驚くべきは、祈祷会に参加していない、外部からの目撃者もいることであろう。
あふれんばかりの光を実際に体験した人たち
おそらく最も有名なのは、記念すべき最初の光。
それは最初の祈祷会の時だった。
その時は、オーロラのような光のアーチがまず現れ、一方の端が海まで、もう一方の端が丘の頂上に伸びていったそうである。
長さにして1.6キロほどだったようだ。
さらに、礼拝所の中をがあふれんばかりの光輝が包み込んだという。
また、ベライア・エバンズという記者が調査してみたところ、どうやら、それらの光には知性があるらしいとわかった。
それと、これはオカルト雑誌に掲載された内容が出処のようで、かなり怪しいが、地元の、メアリーの光を目撃した人たちのうちの何人かの元に、黒服の男達が訪ねてきて、「光のことは誰にも言うな」と告げて、去って行ったそうだ。
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彼らは当時、悪魔だと考えられていたようだ。
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真相はもう闇の中か
メアリーは1905年の秋くらいからは、もう光を発生させなくなったらしい。
これは彼女が光を呼ぶことをやめたのか、あるいは呼べなくなったのかは不明である。
それに古い記録しか残っていないために 多くの出来事が、どのような環境で起こったのかもわからない。
一般的にその正体は、沼のガスに反射した光や、割れた窓などに屈折した星や月の光、蛍の光、あるいは夜に出歩いていた人のランプの光、汽車や車のような、乗り物が発する光だったと考えられている。
おそらく特に注目すべきことが二つある。
一つが礼拝所があるということ以外に、メアリーの光は場所は選ばなかったらしいこと。
どこの礼拝所で行った祈祷会でも、光は現れたらしい。
もう一つが、あまり重大なことだと考えている人が、そんな大した数いなかったらしいこと。
よく話に聞くほどに彼女が凄かったのなら、もう少し多くの情報や神話が残っていておかしくないと思う。
当時の新聞記事の多くが、「本当か、嘘か」というような書き方をしているらしいから、言うほど凄い現象でもなく、本物じゃないかもしれない程度のものだったのだろう。