クリスマスって結局何か?
クリスマスプレゼントと現代人社会
12月25日、クリスマスと呼ばれる日に、その真っ赤な服を着た白髭おじさんたちは世界を駆け巡り、世界中の子供たちにプレゼントを配って回る。
しかし実は、どんな子にもプレゼントが配られるわけではない。
日本人はよく、ただクリスマスに、でかい靴下を枕元に置いておけば、プレゼントがもらえるなどと勘違いしている。
実際はサンタクロースにプレゼントをもらえるのは、よい子だけである。
一年を通して、忙しい時にも両親のお手伝いをしなかったり、部屋を散らかしてばかりいたり、兄弟姉妹とケンカばかりしてたりする悪い子の元に、サンタは来ないのだ(エッセー1)
ただそういう観点で言ってしまうと、今の世の中は子供も大人もけっこうひどいモノかもしれない
もし、昔よりも、クリスマスがつまらなく、サンタクロースが珍しくなってしまったのだとすると、それはきっと現代のこの社会とかいう世界のせいなのかも(コラム1)
(エッセー1)よい子、悪い子の基準は何なのか?
本当は、何がいい事で、悪い事かというのは、単純な問題ではない。
ただクリスマスはキリスト教と大きく関係した日である。
少なくとも、よい子、悪い子のサンタさん基準は、キリスト教的な考えによると思われる。
「キリスト教」聖書に加えられた新たな福音、新たな約束
でも、そうだとしても、当のキリスト教の信者たちの間でも、様々な意見が一致していない。
(コラム1)サンタvsサンタはあり
それでも、少しくらい悪い子にもプレゼントをあげたいという優しいサンタと、そうでないサンタの対立とかあったりするのだろうか。
本当のクリスマスの1日
町全体で盛大なクリスマスパーティー。
なんてのは日本くらいという話がある。
なぜならクリスマスとは本来、家にて、家族一同で過ごす日だからである。
パーティーをするなら自宅のホームパーティー。
豪華なお店で、大勢でバカ騒ぎするような日ではないのだ。
静まり返った町。
個々の家々ひとつひとつを輝かせるイルミネーション。
普段はバラバラだとしても、その1日だけは、ひとつになる家族。
その日だけは金も仕事も争いもなく、ただ無限の愛と喜びの光が誰しもに降り注ぐ。
「無限量」無限の大きさの証明、比較、カントールの集合論的方法
本来のクリスマスとはそういう日なのである。
お菓子メーカーの陰謀、デコレーションケーキ
豪華なクリスマス仕様デコレーションケーキというのは、どうも日本のお菓子メーカーの陰謀らしい。
実際ヨーロッパのクリスマスなどでは、単にプリンやライスプティング(米に牛乳やクリームを混ぜた料理)を食べるのが一般的だという。
特に、店の味には負けるとしても、手作りがよいとされる。
日本ではチキンも、クリスマスディナーの定番としてよく知られているが、これも誤解。
アメリカでは秋の感謝祭に、七面鳥のチキンを食す習慣があるのだが、なぜだかそれが日本には、「チキンはクリスマスに食べるもの」という全く違う話として伝わったのだという。
ちなみに伝統的なクリスマスディナーはポーク(豚肉)らしい。
友達や恋人と遊ぶんじゃないの?
クリスマスは、家族のための日。
それをほったらかして遊びに行くのも、他人様の家族水いらずを邪魔するのも、あまり正しいクリスマスの過ごし方とは言えない。
実はクリスマスは、恋人や友達とは会う機会のない日なのである。
嘆かわしい恋愛脳。
人はなぜ恋をするのか?「恋愛の心理学」
それに、友達も恋人もいない人にも寛大なクリスマス。
クリスマスツリー
みんなで『オーナメント(飾り)』をつけていく、クリスマスには欠かせないツリー。
元々は11世紀のドイツの演劇で、聖書に登場するエデンの園の木を演出するために、『モミの木(Fir trees)』を飾ったのが起源だとされている。
「ユダヤ教」旧約聖書とは何か?神とは何か?
モミの木が選ばれたのは、元々キリスト教が起こる前から、ヨーロッパにはモミの木の信仰があって、それがキリスト教と結びつけられたからだという。
ヨーロッパでは、クリスマスツリーを用意するタイミングは12月の初めくらいで、クリスマスが終わっても1月半ばくらいまでは直さないらしい。
1月までツリーを置いておくのは、めでたいクリスマスの余韻を残すためのようである。
たいていすぐにツリーを直してしまう日本人は、ちょっと急ぎすぎかもしれない。
アドベント・カレンダー
ヨーロッパなどでは、ちょうど1ヶ月くらい前からクリスマスまでの期間をアドベントという。
日本語では待降節などと言う。
このアドベントとは、キリスト生誕を待ち望む期間であり、この期間を使う習慣に『アドベント・カレンダー(Advent calendar)』がある。
アドベント・カレンダーは、たいてい12月の1日から、クリスマス当日である25日までをかけて、「もう少しでクリスマス」を演出する。
スタンダードなアドベント・カレンダーは、例えば25枚の紙の集まりで隠された、クリスマスイラストを、1日1枚ずつ紙を取る事で、少しずつ露にしていくというもの。
あるいは、逆に何もない状態に、1日1個ずつオーナメントをつけて、25個目で、ひとつのツリーにしたりする。
演出のイラストは、ツリーでもサンタさんでも、家族が集合した絵だっていい。
一生ものにだってなりえるから、自分にとって素敵なものにしたらいいのである。
キリスト教徒でなくても祝ってよい?
普通に祝ってよいらしい。
クリスマスは確かに、本来は主イエス・キリストの生誕(注釈1)を祝う日。
つまりキリスト教に大きく関連した日である。
しかし別にキリスト教徒でないと、クリスマスを祝ってはならないなんて決まりはない。
サンタクロースも、キリスト様を信じる子供だけにプレゼントをあげるわけではない。
キリスト教徒だろうが、異教徒だろうが、無心論者だろうが、めでたい日はめでたい。
それはまぎれもなく真実である。
(注釈1)誕生日は謎
誕生日ではない事に注意。
イエスの本当の誕生日は判明していない。
伝説のサンタクロース
長老とサンタクロース協会
北欧、デンマーク領、『グリーンランド』に、世界中のサンタさんたちのリーダーである、『長老サンタクロース(Elder Santa Claus)』は暮らしている。
「世界地図の海」各海域の名前の由来、位置関係、歴史雑学いろいろ
永遠の命を持っている彼は、使いの妖精『ニッセ』たちと共に、いつしかここに移り住んだのだという。
「妖精」実在しているか。天使との関係。由来、種類。ある幻想動物の系譜
かつては、サンタクロースと言えば彼ひとりであった。
しかし世界に、自分を待つ子供たちがあまりにも増えて、とてもひとりではプレゼントを配りきれなくなってくる。
そこである時、彼は自分が認めたアマチュアサンタたちを『公認サンタクロース(Official Santa Claus)』としてスカウトし、『サンタクロース協会(Santa Claus Association)』を立ち上げた。
そして自身はサンタクロースの長老を名乗り、現在も世界中の公認サンタクロースたちの監督を行っているのだという。
よい子、悪い子リスト
サンタクロースの仕事は、よい子にプレゼントを配る事である。
そのよい子と、悪い子を調査して見極めるのは、長老サンタクロースが世界中に飛び立たせたニッセたちである。
ニッセたちの中には、時に誘惑に負けてサボったりする奴もいるけど、たいていはちゃんと、子供たちの心を見極める。
そうして見極めたよい子悪い子のリストを、クリスマスが近付きと長老サンタクロースに持っていく。
長老はその『よい子悪い子リスト(Naughty or Nice List)』を元に、プレゼントを配る家を決断し、世界中のサンタたちに伝えるというわけである。
恐怖のブラックサンタクロース
ドイツには、悪い子にお仕置きをする『ブラックサンタクロース』がいるという。
「ドイツ」グリム童話と魔女、ゲーテとベートーベンの国
ブラック(黒)という名前の通り、真っ黒な服を着ているサンタであり、『クネヒトルプレヒト』とも呼ばれる。
ブラックサンタクロースは、お仕置きを、相手の悪さのレベルに応じて変える。
あまり大した悪ガキでないなら、プレゼントの代わりに灰の塊を枕元に置いたりするだけ。
少しオイタがすぎる子には、牛や豚の血だらけの臓器などをプレゼント。
そしてまったくどうしようもない子は、袋に閉じ込めて連れ去ってしまうらしい。
クランプスとトントンマクート
世にも恐ろしいブラックサンタだが、オーストリアでは悪い子には、さらに恐ろしい存在が差し向けられる。
「オーストリア」アルプス、温泉、カフェ、辻馬車。音楽が習慣な貴族
それは『クランプス』という魔物で、乱れた髪に角が生えた、日本の鬼のような風貌をしているのだという。
「鬼」種類、伝説、史実。伝えられる、日本の闇に潜む何者か
また、ハイチでも、悪い子のところには、サンタの代わりに『トントンマクート』というブラックサンタ的なのが来るのだという。
トントンマクートはお仕置きを使い分けたりはせず、とりあえず子供を連れ去ってしまうらしい。
白馬のサンタと、妖精ピート
長老サンタのニッセのように、オランダのサンタクロースには『ピート』というお使い妖精がいる。
オランダのサンタの服は帽子以外は赤でなく、真っ白で、ソリでなく白馬に乗って移動する。
「オランダ」低地国ならではの習慣と特徴。水と風車と倹約家主義
そして国中を白馬で巡りながら、子供たちへのプレゼントはピートに届けさせるのである。
ピートはサンタほど上手に煙突を潜れないらしく、いつも煤だらけで真っ黒な姿だという。
13人の妖精サンタ、ユールラッズ
アイスランドでは、使いとかでなく、13人の山暮らしの妖精たちがサンタクロースをしている。
彼らは『ユールラッズ』と呼ばれていて、クリスマスの13日前から、各家庭に1人ずつやってきて、12月25日から、1人ずつ去っていくのだという。
1日目(12月12日)の、ミルクが好きなステキャルストゥイル(Stekkjarstaur)。
2日目の、同じくミルクが好きなギリヤゴイル(Giljagaur)。
3日目の、炒め料理好きなストゥーフル(Stúfur)。
4日目の、痩せ細ったスヴォルスレイキル(Þvörusleikir)。
5日目の、鍋料理好きなポッタスケフィル(Pottaskefill)。
6日目の、何かを舐めてばかりのアスカスレイキル(Askasleikir)。
7日目の、悪戯好きなフルザスケリル(Hurðaskellir)。
8日目の、ヨーグルト好きなスキールガオムル(Skyrgámur)。
9日目の、ソーセージ好きなビューグナクライキル(Bjúgnakrækir)。
10日目の、計算高いグルッガガイギル(Gluggagægir)。
11日目の、パンが好きなガオタセフル(Gáttaþefur)。
12日目のステーキが好きなケトクロッケル(Ketkrókur)。
13日目の蝋燭の扱いが上手いケルタスニキル(Kertasníkir)。
の13人である。
彼ら13人のユールラッズは兄弟関係にあり、山の魔女とも、恐ろしい怪物とも言われる老婆、グリーラの子供たちらしい。
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魔女サンタ、ベファーナ
イタリアには「ウィッチ(魔女)サンタ」とでも言うべき存在、ベファーナがいる。
彼女は、イエスが生まれる以前、とある村で家政婦をしていたが、主の子がもうすぐ産まれる事を悟った。
しかし多忙な彼女は、その誕生の瞬間に立ち会えず、その事を後悔した。
そして、今でもなんとかならないものかと、さ迷いつづけているのである。
ベファーナは、クリスマスになると、サンタ、それにブラックサンタに習い、よい子には欲しい物を、悪い子には灰をプレゼントするのだという。
現実のサンタクロース
最初のサンタ(?)、セント・ニコラウス
4世紀頃に、ギリシャのパトラスという街に生まれたキリスト教の司教、ニコラウスが、サンタクロースのモデルだとされている。
こんな話が伝わっている。
ある時、ニコラウスはとても貧しい家の話を聞いた。
その家の状況は悲惨で、ついに両親のために、子は身売りを決意する。
しかし、そのような悲惨さを哀れに思ったニコラウスは、その家の窓から金貨を投げ入れた。
暖炉近くの靴下の中に入ったその金貨により、その家は救われ、子の未来も守られたのだという。
この話が13世紀頃にオランダに伝わった時、『セント(聖なる)ニコラウス』はシンタクラースと訛り、それがさらに17世紀頃、シンタクラースはアメリカでさらに訛り、サンタクロースと呼ばれるようになった。
現代的サンタイメージの形成
1822年、アメリカの詩人クレメント・クラーク・ムーアが、「クリスマスイヴ、サンタクロースの訪問」という詩を発表した。
その詩の中で描かれたサンタは白髭で、8頭のトナカイにソリを引っ張らせ、クリスマスの夜空を飛んだ。
空飛ぶ白髭サンタクロースは非常に好評で、そのイメージは、8頭のトナカイそれぞれと共に、かなり浸透した。
欧米以外にはあまり知られてないが、トナカイたちの名はダッシャー、ダンサー、プランサー、ビクセン、コメット、キューピッド、ダンダー、ブリッツェンである。
また1931年に、世界的に有名な『コカ・コーラ社』が、広告に真っ赤な服のサンタを起用した事で、現在のような真っ赤なサンタが世界的に定着した。
サンタクロースになるには?
現実の国際サンタ協会の本部はデンマークにあるが、ここに認めてもらう事で、世界中の誰でも公認サンタクロースになる事が出来る。
とりあえずサンタ候補者になるためにはいくつか条件がある。
結婚している事。
子供がいる事。
アマチュアサンタクロースとしての活動経験がある事。
体重が120キロ以上である事。
以上4つである。
ただし女性候補者の場合は、体重に関してはパスとなるようである。
試験はサンタクロースの格好をした障害物レースのようなものであり、煙突に登り、暖炉から出てきたり、6枚ほどのクッキーを食べたりしながらゴール目指して走っていく。
そうしてレースに参加した内の上位2名が、すでにサンタな人たちとの面接を受ける。
さらに面接後に、公認サンタたちの前で宣誓文を朗読する。
のだが、なんとそれはサンタ共通語『HoHoHo』で行わなければならないのだという。
つまりただひたすら「ホッホッホ」という表現だけで、朗読しなければならないのだ。
公認サンタ全員が納得してくれるまでである。
そして試験、面接、宣誓を全てクリアすると、ようやく晴れて『公認サンタクロース』と認められるのだ。
サンタクロース会議
年に1回、7月に、デンマークのコペンハーゲンにあるバッケン遊園地で、公認サンタクロースは会議を開く。
この会議では、
「地球環境破壊などによるトナカイ減少の影響について」
などというシリアスな話題もあるのだが、
「長老はみんなを見守るわけだから、グリーンランドでなくNASAの宇宙ステーションに移住してもらうのはどうか」
なんていう、真面目なのか、ふざけてるのか、よくわからない話題も扱われるのだという。
ただ日本人として耳が痛いのが、
「日本のクリスマスでは、子供は高価なゲーム機とかでないと納得してくれない。ちょっとおかしい」とか、「多くの若い日本人にとってクリスマスはカップルの日になってしまってる。これじゃ子供たちがかわいそう」なんて話題が出た事もあるらしい事であろう。
我々はクリスマスを祝う前に、もうちょっと正しく理解するべきなのかもしれない。