「宇宙構造」銀河集団、観測可能な宇宙。フィラメント、グレートウォール

プトレマイオスの宇宙、コペルニクスの宇宙

天動説、地動説。中心をどことするか

 紀元前5世紀~2世紀くらいの、古代ギリシャの哲学者たちの多くは、この大地というものが、巨大な球体、すなわち『地球』であることをしっかり認識していたともされている。

 有名なアリストテレス(紀元前384~紀元前322)は、 世界の中心には地球があり、その周囲を、月、太陽、他の惑星が回っている。そしてその最も外側が、星座などが描かれているかのような星々の領域だという世界観を考えていたとされる。
このいわゆる天動説的な考え方は、後の時代のクラウディオス・プトレマイオス(Claudius Ptolemaeus。83~168)に受け継がれる。そして彼が見事に構築した地球中心の宇宙構造は、大きく広まっていくことになるキリスト教の(神は唯一にして絶対というような)考え方と相性がよく、かなり長い間、多くの人々に信じ続けられることになった。

 一方で、太陽こそが中心、かどうかはともかくとして、地球は太陽の周囲を回っている惑星の1つ。という考え方自体も、古代ギリシャの頃からすでにあった。
14世紀くらいのヨーロッパでは、『ルネッサンス』と呼ばれる、古典文化を見直す動き、いわゆる懐古主義が流行ったこともあり、忘れられていた地動説も見直されることがあったろうとされる。
そして「宇宙の中心は太陽であり、地球や他の星々はその周りを回転している」という世界観を語った、ニコラウス・コペルニクス(Nicolaus Copernicus。1473~1543)の『天球の回転について(Nicolai Copernici Torinensis De revolutionibus orbium coelestium)』なる本が出版されたのは1543年のこと。
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宗教の支配。望遠鏡の開発

 イタリア人のジョルダーノ・ブルーノ(Giordano Bruno。1548~1600)は、コペルニクスの地動説を支持した。のみならず、そもそも宇宙には、中心とか絶対的とか言えるような場所は存在しない。地球や太陽も、どっちにしても宇宙の中の1つの天体にすぎない。太陽系のようなものはあちこちにあるだろうというような考えすらも提唱した。が、さすがに時代の先を行きすぎたのか、神を冒涜しているとして、最後には火あぶりに処されてしまった。

 そしてもう少し後の時代のガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei。1564~1642)は、当時の最新アイテムである望遠鏡を用いたりもして、地動説の根拠を、直接的な観測結果として示す。
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 さらにヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler。1571~1630)が、太陽を中心とした惑星の動きに関して『ケプラーの法則』を発表。アイザック・ニュートン(Isaac Newton。1642~1727)はそれも参考にして、さらに『万有引力法則』を導く。そしてそれが多くの観測結果を非常に正確に記述できるので、強い宗教的信念でもない限り、地動説を疑う余地はほとんどなくなった。
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天の川とアンドロメダ。銀河系の発見

 月の光も目立たないような夜空で、長く見える謎の輝き。
かつてそれはヨーロッパで、『乳の川(Milky way)』と呼ばれていた。それはつまり、『天の川』というやつだ。

円盤状に集まる無数の星

 天の川は、肉眼ではぼんやりした雲みたいに見えるが、例によってガリレオ・ガリレイは、望遠鏡により、それが無数の星の集まりであることを確認した。

 18世紀プロイセンのイマヌエル・カント(Immanuel Kant。1724~1804)は「天の川は円盤状に集まる星々で構成されている」とも考えた。
そしてイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェル(Frederick William Herschel。1738~1822)は、 星々の立体的分布を調べた。

 ハーシェルには、地球から各星の距離を測定する観測技術が、基本的になかったとされている。そこで彼は、全天で最も明るく見えた、おおいぬ座のシリウスの距離を6.4光年と定め、その上で暗い星ほど遠くにあるものと仮定した。そうして、正確性はともかくとして、天の川というのは太陽系そのものも含む星の大集団であることを 、彼は明らかとした。
ハーシェルは銀河系の直径を6400光年としたが、それは実際の直径とされている10万光年よりよりもかなり小さい。

 銀河系の大きさに関して大きく間違った原因の1つは、全ての星の明るさを星の明るさを全て同じだと仮定したこととされている。実際には星間ガスや塵により星の光は遮られたりもするので、各星の明るさは異なる。

年周視差とセファイド

 星の距離を測る古い技術として『年周視差(Stellar parallax
)』というのがあるが、それでもフリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセル(Friedrich Wilhelm Bessel。1784~1846)が、それによる測定を初めて完了したのは、 1838年のこととされる。彼が測定したのは、白鳥座61番星までの距離(11.4光年。1.0785×10^17メートル)。

 年周視差は、地球が軌道上の離れた所にある異なる2つの時期において、同じ星の位置を測定し、その測定記録の(つまりその時の地球から見た)位置の差を利用して、距離を求める方法。
地上においては、大気の揺らぎとかのために精度が狂いがちなので、 現在は、人工衛星が測定した情報を利用するのが普通。

 しかし地球軌道の直径といえども、広い宇宙の中では大して長さではない。これを使った年周視差である程度正確に距離を測れるのは、あくまで近くの恒星のみ。
そこで、さらに遠くの天体に関しては、『セファイド(Cepheid。ケフェウス座デルタ型変光星)』という『脈動変光星(pulsating variable)』の1タイプを利用する方法もある。

 脈動変光星というのは、一定の間隔で膨張収縮を繰り返し、明るさを変える星のこと。例えば収縮膨張に際してガスの不透明度が変化するのが原因と考えられている。
そしてそうした脈動変光星の中でも、セファイドやミラ型といった変光星は、特に変光周期と光度(明るさ)の間に相関がみられることがある。
ようするにセファイドという種類の変光星は、同じ変光周期なら、同じ明るさという性質を持っている。
つまりは年周視差で距離を測れるくらいの範囲にセファイドが見つかった場合、それを(見かけの明るさも考慮にいれた)基準として、より遠くのセファイドの距離も計算することができるという訳である。

天の川とは銀河系の断面

 1918年。アメリカの天文学者ハーロー・シャプレー(Harlow Shapley。1885~1972)が、『球状星団(globular cluster)』の分布についてを調べた。

 球状星団とは、(普通は)200光年くらいまでの範囲に、数万~数百万個ぐらいの恒星が、互いの重力によって球形に集まっている天体。基本的には銀河の周りを軌道運動しているとされる。

 とにかくシャプレーは、そのような球状星団内のセファイド変光星の観測による距離測定を駆使して、我々の太陽系というものが、銀河系中心からはかなり遠く離れていることを示す。
さらに彼は、銀河系自体の形も、円盤状をしているのだとした。

 20世紀も後半になってくると、可視光のみならず電波や赤外線を使った観測により、銀河系の形はさらに詳しくわかってくる。
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それは上からは渦巻き、横からは凸レンズ状のような形で、2000億ほどの恒星により構成されていると。
そして、昔の人々がいろいろと想像していた天の川に関しても、実際にはそれを含む銀河系の断面にすぎない。

棒渦巻銀河

 もちろん銀河系は、単に2000億の恒星のことではない。それに加えてさらに様々なものが、それの構成要素となっている。
光る高温のガスや、逆に光を放たない冷たいガス。いくつもばらけたような、星の残骸や素材。 目には見えない物質とされる大量のダークマター。
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 銀河系全体の重さは、太陽質量の6000億倍~3兆倍ほどと考えられている。
その渦巻きの直径は10万光年ほどとされていて、最も厚い中心部 は1万5000光年の厚さとされている。そして太陽系の位置は、銀河系中心部から2万8000光年ほど離れたところ。

 この天の川銀河系自体は、『渦巻き銀河(Spiral galaxy)』の中でも、さらに中心部を棒状構造が貫いている『棒渦巻銀河(Barred spiral galaxy)』の類いとされている。その棒状構造の長さは2万7000光年ほどで、太陽と銀河系中心を結ぶ線からみると、約45°傾いているとも。

アンドロメダ星雲から別の銀河へ

 それが判明したばかりの頃は、巨大な銀河系構造は、これこそ宇宙全体と考える人も多かった。
そしてアンドロメダ座の方で輝いている、楕円形のような何かは、銀河系内にあるガスの天体だと考えられていた。

 『アンドロメダ星雲』と呼ばれていたその天体は、しかしエドウィン・ハッブル(Edwin Powell Hubble。1889~1953)が1923年に、口径1メートルの望遠鏡で撮影し、調べ、実は大量の星で構成されている集合体であることが判明する。
そして、アンドロメダを構成する大量の星の中に、セファイドもあり、それによって地球からの距離も計算される。
その距離は、実に65万光年(後には230万光年に修正)。
そうして、それが天の川銀河系の中にあるとしたら、あまりにも遠すぎることがわかり、つまりそれは外の集団、他の銀河系であることが 判明したのだった。

 そしてその最初の発見から 後も別の銀河は次々と発見されていて 今ではその数は、数千億とも、数兆はあるだろうとも言われている。

宇宙の始まりの時

一般相対性理論と宇宙の膨張

 アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein。1879~1955)が、普通の感覚から考えられるような慣性系と、多くの実験によって証明されていた『光速度不変の法則(Principle of constancy of light velocity)』の矛盾を解消する理論として、『特殊相対性理論(Special relativity)』を発表したのは1905年。
さらにその10年後には、彼は、ニュートンの万有引力と、特殊相対性理論の矛盾をさらに解消する理論として、『一般相対性理論(General theory of relativity)』を発表する。
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 特殊相対性理論は、物体が動く時(宇宙の最高速度と思われる光の速度に近づいていく時)、それよりも遅い物体や、さらに速い物体との間には、時間も含めた空間(時空間)における、相対的なズレが生じるというもの。
例えば、運動する物体を止まっている人が観測した時、その長さは縮んで見えるし、時間も遅れて見える。

 一般相対性理論は、物質の物理的正体である質量は、その密度が大きければ大きいほど、それが置かれている時空間を歪ませている。というもの。
それは我々が、かつては万有引力、今は重力と呼んでいるものの正体とされている。
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 また、ハッブルは、それぞれの銀河同士が互いに遠ざかるように動いていることも観測によって確かめ、彼はそれを、宇宙が膨張しているための観測結果だとした。

火の玉という初期状態。ビッグバン理論

 全ての物質の質量が時空を歪ませているという一般相対性理論の結論。そして膨張する宇宙。
普通に考えるなら、宇宙の時間を逆に進めていくと、収縮の最後に、どこか始まりの点にたどり着くような感じがする。
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ジョルジュ・ルメートル(Georges Henri Joseph Édouard Lemaître。1894~1966)は、現在の宇宙の全ての原子が圧縮されている、最初の原始的原子から全てが始まった。膨張とともに、その始まりの原子は、次々と分裂していき、現在の宇宙となった、というようなモデルを提唱。

 しかし、全てが合わさっているような原子が、分裂していくという宇宙膨張モデルの場合、原子は重たいもの(原子番号が大きいもの)から、順番に作られていったということになる。
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ところがジョージ・ガモフ(George Gamow。1904~1968)が、宇宙を構成している元素の割合を調べたところ、一番多いのは最も軽い水素で73%、次に軽いヘリウムが24%と、この宇宙はほぼ全て、とても軽い水素とヘリウムばかりという構成であった。
宇宙が初期状態が、原子すら作れないような超高温のカオス状態で始まり、それが膨張によって冷えたことで、原子が作られていったとするなら、軽い原子からというのは納得しやすい。そこでガモフは、超高温の火の玉から宇宙が始まったという、膨張モデルを提案。
その『火の玉モデル』が、いくらか細かく修正されたものが、現在の『ビッグバン宇宙論』である。
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 また、ビッグバン理論の根拠として、『宇宙背景放射(cosmic microwave background。CMB)』と呼ばれる、ビッグバンの名残りのマイクロ波も観測されているが、そこから得られた情報などより、ビッグバンを始まりとした宇宙の年齢は、137億年ほどとされている。

インフレーションモデル

 1981年には、佐藤勝彦さとうかつひこ、アラン・グース(Alan Harvey Guth)が、それぞれ単独に、『インフレーション膨張モデル』と呼ばれるものを提唱。

 最初宇宙が誕生する前(時空間も物質もないという状態の頃)、その場は真空エネルギーが溢れていて、量子力学的な効果により、物質が発生したり消えたりを、ただただ繰り返していた。そして最小の大きさとされているプランクサイズ(0.000000000000000000000000000000001センチメートル)の宇宙が生じた。ごく小さくはあっても、すでに時空間はある。そして宇宙はすぐ、自らの真空エネルギーにより急激な(インフレーション的)膨張をし、ほんの一瞬で、初期のごく小さな状態から、かなりの大きさと変化した(インフレーションにより生じたサイズがどのくらいかは諸説あるが、数メートル~銀河系くらいというのが妥当)。
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そうしたインフレーションは、真空状態における高エネルギーから低エネルギーへの『相転移(phase transition)』、つまりは性質的な変化をもたらした。そして相転移が真空エネルギーをいくらか開放し、それが熱エネルギーとして、宇宙を高温の火の玉に変えた(ビッグバンの状態にしたとも言える)。

 インフレーションモデルは、ビッグバン理論の問題点いくつかを、見事に解決しているモデルとされ、今は普通、ビッグバン理論と言えば、このインフレーション理論を意味している場合も多い。
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観測可能な宇宙とはどこか

 インフレーション期には量子論的な揺らぎが生じたとされていて、それは宇宙規模に引き延ばされた。そして、現在の宇宙の構造を形作っていった。
インフレーションの膨張は、光の速度をかなり超えていて、そのために現在は、まさしく『事象の地平面』によって閉ざされているような、因果関係を失った多くの領域ができているともされる。
つまり、我々に観測できているのは、限定領域の1つである『観測可能な宇宙(Observable universe)』にすぎないとも。

 ただしインフレーションにより引き延ばされた量子揺らぎは、宇宙がまだ小さい時期には、全体に一様に広がっていて、それぞれに因果関係を強く持っていた。
ビッグバン理論の矛盾の1つとして、例えば地球から見た(観測可能な宇宙の)端と端とか、(光速度の限界のため)互いに情報的な因果関係をもてないはずの領域同士でも、なぜかすべて似たような見かけなのはなぜか。というものがある。
インフレーション理論は、おそらくその矛盾も解消できるとされているが、そうだとすると、もしかしたら我々には観測不可能な、他の多くの領域も、ここと似たような宇宙なのかもしれない。

少なくともどのくらいなのか

 宇宙背景放射は、我々が観測できる最も遠方から発せられてきた光と考えられている。そしてそれはおそらくは、137億光年を進み続けて来たものだから、この宇宙の年齢も、137億年と考えられている訳である。
しかし、では観測可能な宇宙の半径は137億光年なのかというと、それは違うとされている。

 天体から発せられた光が地球にたどり着くまでの時間は(距離でなく時間なのに)『光行距離こうこうきょり(Luminosity distance)』と呼ばれる。 しかし宇宙は今までのずっと、そして今も膨張を続けているために、(その放たれてきた光が地球に届くまでの時間で、光を放った場所はさらに遠ざかっているため)実質的な距離はもっと長くなる。
そして実際のその距離、『共動距離(Comoving distance)』は、だいたい465億光年くらいとされている。つまり宇宙観測可能な宇宙の直径は930億光年ほどと考えられている訳である。

 共動距離というのは、より正確には、空間上の特定の2点の距離を、空間の伸縮に合わせて同じように伸縮する物差しで、測った距離。

銀河の大集合構造

 銀河もまた、『銀河群(Galaxy group)』や『銀河団(Cluster of galaxies)』と言われるような集団構造を作っていて、さらにその銀河群、銀河団も集まって、『超銀河団(Supercluster of galaxies)』というより大きな構造を作っている。

 また、天の川銀河に対する、大、小のマゼラン銀河のような、より大きな銀河系の周囲を公転している小銀河を、『伴銀河(Satellite galaxy)』という。

 マゼラン銀河に関しては、偶然、天の川銀河の近くにやってきているだけで、やがては遠ざかっていくだろう、という説もある。

バルジ、円盤、ハロー。渦巻き銀河の構成

 銀河系(渦巻銀河)は構造的に、普通『バルジ(galactic bulge。中心核バルジ)』、『円盤部(galactic disc)』、『ハロー(galactic halo)』と呼ばれる三つの部分に分けることができる。

 バルジは、銀河系中心部の星で構成される膨らんでいる領域。年老いた大量の恒星、若い星の集団、ガスの雲など、かなり密度が高い領域。
棒渦巻銀河においては、そのバルジの中央を棒状構造が貫いている。
まだ銀河系の中心部には、基本、大質量の巨大ブラックホールを置かれているようでわその強力な重力により、大量の物質が集まっているのではないか、とも考えられている。
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 円盤部はバルジを取り囲んでいるような円盤状構造。星や塵やガスで構成される平べったい領域で、基本的には銀河系の主要領域とされる。そして中央の、銀河の質量の大部分が存在している円盤の平面は『銀河面(Galactic plane)』と呼ばれる。

 ハローは、さらに円盤部、 というか銀河系全体を覆っているような球状領域。主に年老いた星々の『恒星ハロー(stellar halo)』、高温のガスの『銀河コロナ(galactic corona)』、そして『ダークマター(dark matter halo)』で構成されている。

 天の川銀河の場合、恒星ハローの球状星団は、銀河系を中心として、直径30万光年くらいで分布しているとも。

 恒星ハローのさらに外側には、銀河コロナが広がり、普通は恒星ハローの2~数倍くらいに広がっているとされる。

 そしてダークマターは、ハロー全体に存在していると考えられている。
このダークマターハローは、銀河系の質量の大部分を担っているようである。

太陽系はオリオン腕にある

 渦巻き銀河の、その渦巻きからいくつか伸びている細長い腕構造の領域は、結構星が多く、太陽系も天の川銀河の『オリオン腕』という領域に存在している。

 天の川銀河系は大きな渦巻き腕を2本持っていて、中心を貫く棒状構造のうち、太陽系に近い方の端から始まっているのが『たて・みなみじゅうじ腕』、反対の端から始まっているのが『ペルセウス腕』である。さらに2本の細い『りゅうこつ・いて腕』と『じょうぎ・はくちょう腕』がある。
大きな腕は、年老いた星と若い星がどちらもたくさん存在している。しかし細い腕は、若い星が多く、またガスも大量に含んでいるため、これから多くの星を新たに形成し、太く成長するかもしれないとされている。
太陽系が含まれるオリオン腕は、ペルセウス腕といて腕の間に存在する、小さく部分的な腕。

 天の川銀河系は腕群を引きずるように回転し、上から見た場合は時計と同じ向きに回転している。
回転速度は銀河系中心に近い星も、銀河系周辺部もほぼ同じ速度と考えられ、太陽系付近は、1周するのに約2億年かかっている。

ハップル分類における、渦巻き以外の銀河

 ハッブルは1926年に、発見されていた様々な銀河系を、形状を基準にして分類した。それは今でも、ハッブル分類として利用されている。
渦巻き銀河はそのうちの1つ。

 他には、腕のない渦巻き銀河というような感じの『レンズ状銀河(lenticular galaxy)』
ガスや若い星に乏しく、内部の天体はかなりランダムに動いているようである『楕円銀河(elliptical galaxy)』
特定の形を持っていないような『不規則銀河(irregular galaxy)』。これには、最初から特定の形を持っていないものと、様々な相互作用によって形が変形してしまったものの2タイプがあるという。

 不規則銀河の内、最初から不規則なものは、若い星や大量のガスで構成されていて、星の形成が活発に見られる。
一方、相互作用で形が変形してしまったタイプの不規則銀河は、『特異銀河(Peculiar galaxy)』とか『異常銀河(Anomalous galaxy)』などと呼ばれたりもする。

スターバースト現象

 銀河同士は互いに様々な影響を与えあい、時には衝突合体することもある。そうした場合、両銀河の星間ガスは圧縮され、大質量星が一気に形成される、『スターバースト(Starburst)』という現象が起こる。

 また銀河同士が衝突した場合、それらの中心核はひとつに合体する。たいていの銀河の中心には、大質量ブラックホールがあるから、それらは徐々に引きあって合体、その過程で大量の物質を飲み込み、激しいジェットを吹き出しもする。

 スターバースト現象をまさしく起こしている最中の銀河は、『スターバースト銀河』と呼ばれる。可視光よりも、赤外線で明るく輝いているというのが特徴。
スターバースト現象は、100万~2000万年くらいの期間、銀河系の100~1000倍くらいの勢いで大質量星が誕生するような現象。
スターバースト現象自体はあまり珍しいものではないようで、銀河系近傍の渦巻き銀河の数%は、スターバースト銀河と考えられている。
また、スターバースト銀河には4つの段階があるとされ、広義の意味では、それらすべてがスターバースト銀河と呼ばれる。しかし狭義の意味では、大質量星がハイペースで形成されている段階のものをそう呼ぶ。

ウォルフ・ライエ、スーパーウィンド、ポストスターバースト

 年老いた大質量恒星は、大気を膨張させ『赤色巨星(red giant)』という段階に移行することがある。その移行段階で、外層部の水素が吹き飛ばされ、核融合を起こす高温のヘリウムの中心核がむき出しとなってしまった星のことを『ウォルフ・ライエ星(Wolf-Rayet star)』という。
そのような星は、太陽の10万~100万倍くらいの明るさで輝いていて、ものすごい大量のガスを周囲に吹き出している。そのため、ウォルフライエ星は、自ら放出した大量のガスに包まれ、そのガスをさらに加熱させて輝いたりする。そのようなものを『ウォルフ・ライエ星雲』とも呼ぶ。
ウォルフライエ星の状態は、1万~10万年くらいしか続かないとされ、将来は超新星爆発を起こすと考えられている。

 スターバーストで発生した多くがウォルフライエ星である銀河は『ウォルフ・ライエ銀河』と呼ばれる。

 さらに、先に誕生した大質量星が、次々に超新星爆発を起こす 一方で、大質量星の生成も続けているスターバースト銀河を、『スーパーウィンド銀河』という。
これは、爆発の衝撃波や、若い大質量星の恒星風が、銀河面から宇宙空間へ高速へ吹き出してたりもする。

 そして、星の形成が終了し、大質量星が死に絶えると、それらとともに誕生していた、より質量の小さな星々が、スターバースト領域に取り残されて輝いているという状態になる。それは『ポストスターバースト銀河』と呼ばれる。

活動銀河中心核と、大質量ブラックホール

 銀河同士の相互作用は、銀河中心核に異常を引き起こすこともある。そのような異常的な活動は、『活動銀河中心核(active galactic nucleus。AGN)』とも呼ばれ、5つの分類がある。

 普通の銀河よりも100万倍ほど強い電波を出す『電波銀河』。
明るく小さな中心核を持っていて、強い電波、赤外線、紫外線、X線を放つ『セイファート銀河』。
銀河中心核の明るさが、セイファート銀河の1/3くらいとされる、『低光度活動銀河核』。
中心核が非常に明るく、恒星のようにも見えるが、激しく変光し、強い電波、X線、ガンマ線を放つ『ブレーザー』
強い赤外線、X線、ガンマ線、電波などを放つものがあり、異常に明るい中心核が恒星のように見え、銀河系100個分に相当するようなエネルギーを放出するともされる『クウェーサー』
「ガンマ線バースト」残光の謎、超新星爆発の威力、宇宙最強の爆発現象
 AGNには、銀河中心の巨大質量ブラックホールが強く関わっていると考えられている。

銀河の小集団

 銀河群というのは、銀河が数個~50個ほど集合している規模のもの。
銀河団は、直径1000万光年ほどの領域に、50~1万個ぐらいの銀河が集まっている集団。

 地球から最も近い銀河団は、5900万光年くらい離れている『おとめ座銀河団』で、それは2500ほどの銀河が直径1200万光年の範囲に集まっている、比較的若い銀河団と考えられている。
このおとめ座銀河団は、はっきりとした構造を有していない。しかしM87、M86、M49という銀河を中心とした3つの集団に分けることもでき、やがてそれらは合体して、より滑らかな空間分布の銀河になるとも考えられている。

 地球から3億光年ほど離れている『かみのけ座銀河団』は、2個の巨大な楕円銀河を中心として、銀河が密集しているが、そのような、銀河団の中心に見られる場合がある銀河は、通常よりも大きく、中心核を複数持ってたりする。なのでそういうのは、以前にいくつかの銀河が合体したものだろうともされている。

 そして、銀河団を構成する質量の中でも、やはりダークマターの比率は大きいようである。
基本的には、銀河団の質量の内、目に見える星々が数%程度、X線などで見ることができる高温の銀河団ガスが30%、残りの70%ほどがダークマターなのだとされている。

超銀河団。スーパーボイド。銀河フィラメント。グレートウォール

 様々の銀河がいくつも集まって、銀河群、銀河団を形成しているが、それらがさらに集まって、直径1億光年ほどの大集団となっているものが、超銀河団である。

 天の川銀河やアンドロメダ銀河は、他の約50個の銀河と共に、局部銀河群を形成しているが、それはさらに、おとめ座銀河団を中心とした超銀河団に属している。
しかしそれでも、最も大きな集団というわけではない。

 1970年代以降銀河の分布を調べる組織的な広範囲の観測、いわゆる『掃天観測そうてんかんそく(astronomical survey。スカイサーベイ。サーベイ観測)』により、銀河の三次元分布が調べられるようになった。そして、さらなる巨大構造が見つかったのである。

 大量の銀河は、石鹸の泡に似た模様を描いて分布しているために、宇宙の泡構造と呼ばれることもある。
泡の内部には、巨大銀河のない『空洞領域(ボイド)』があったりする。ボイドのサイズは、たいてい直径1億光年程度だが、2007年にエリダヌス座方向に発見された10億光年ほどのボイドなど、巨大なものは『スーパーボイド』とも呼ばれる。

 そしてシート(面状)構造や、フィラメント(糸状)構造が、ボイドを囲み、そこに銀河群や銀河団は存在していて、シートやフィラメントが交わるところなどでは、密度の高い超銀河団も見られる。

 またたいていの超銀河団は数億光年程度の広がりであるが、時には連なり、10億光年を超えるほどの、壁のような構造になることもある。そのような超銀河団の壁の分布領域を『グレートウォール』という。
かみのけ座銀河団が属している、かみのけ座超銀河団は、そういうグレートウォールの中心辺りとされる。

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