熱とは何か
この世界には様々なエネルギーがある。
電気エネルギーとか、運動エネルギーとか、原子力エネルギーである。
熱エネルギーもそのようなエネルギーの一形態と言えよう。
「電磁気学」最初の場の理論。電気と磁気の関係 「中間子理論とクォークの発見」素粒子物理学への道
熱は物質を構成する分子が動き回る力とされる。
つまり分子の運動エネルギーである。
「化学反応の基礎」原子とは何か、分子量は何の量か
分子の運動が激しければ、つまりエネルギーが高ければ、熱は強くなる。
つまりマクロな(我々の)視点では、温度が高くなる。
「気温の原因」温室効果の仕組み。空はなぜ青いのか。地球寒冷化。地球温暖化
熱が高いという事はエネルギーが高い状態にあると言ってもいい。
熱力学というと、まるで熱だけを扱うような学問の名前だが、これはこの分野が、熱の研究により発展してきたゆえの名称である。
実質的に、今この分野は、エネルギーの性質と利用方法の研究分野のようなものとも言える。
物理学における仕事
物理学用語でいう『仕事(work)』というのは、力が働いた量とか、力が動いた距離とかいうふうに定義される。
例えばエネルギー100を持った球体があったとする。
それがただ存在しているだけでは、その球体は仕事してるとは言えない。
では球体から、30のエネルギーを放出させる。
球体には当然70のエネルギーが残る。
しかしこれも、エネルギーを無駄にしているだけで、仕事していない。
だが、その放出された30のエネルギーが、その勢いによって、歯車を回したりするとどうであろうか。
これはつまり、球体のエネルギーが、歯車の運動エネルギーに変換された過程と言えるが、この過程により発生した歯車の動き。
これが仕事である。
「制御とは何か」コントロールの工学技術の基礎
そのようなもの。
つまりエネルギーが動いたり、変換されたりする過程で、二次的、三次的に、とにかく発生する物質の動きこそが、物理学的な仕事なのである。
例えば電動モーターで動くロボットがあったとしよう。
「電気コンポーネントの動作」直流と交流の使い分け、各デバイスの役割 「電気回路、電子回路、半導体の基礎知識」電子機器の脈
これは電気エネルギーを運動エネルギーなどに変えて、様々な仕事を起こし、その組み合わせにより、ロボットという機構を実現しているのである。
熱力学の三法則
簡単なまとめ
熱学は熱を研究する学問であり、熱力学は熱の性質を研究する学問である。
熱力学とはつまり、熱というのは、ある三つの法則に必ず従うというもの。
それらは『熱力学の三つの法則』と言われている。
「第一法則」
『エネルギー保存の法則』とか『エネルギー不滅の法則』とも言われる。
無からエネルギーは生まれない。
またエネルギーの量を変化させる事は出来ない。
それならどうやって世界は始まったのか?
「インフレーション理論」ビッグバンをわかりやすくした宇宙論
「第二法則」
『エントロピー増大の法則』、あるいは『エントロピー不可逆性の法則』とも言う。
熱は100%仕事には戻せない。
エントロピーが常に増大するため。
だが、エントロピーとは何の事か?
「第三法則」
絶対零度ではエントロピーは0になる。
エントロピーの原点の事とされる。
熱力学第一法則とは。エネルギー保存の法則
これは非常によく知られた、この世界における、基本的らしい法則である。
なぜそうなのかを考えるのは容易なようで、容易ではない。
何もないとする。
無である。
そこから何かが生まれる事が出来るか。
これは0という数字が一個だけあったとして、足し算や引き算などの計算が出来るのか?というような問いと同じである。
「ゼロとは何か」位取りの記号、インド人の発見 「数字と数式の種類」数学の基礎の基礎。
そんな事は出来るわけがない。
「数を数えること」自然数とは何か。その時、我々は何をしているのか
0が一個だけそこにあるだけなら、それは永遠に0である。
では5という数字があるならばどうか。
これも5だけなら、ずっと5があるだけ。
しかし例えば2と3に分けたとしたら、足し算や引き算が出来よう。
だが実は掛け算や割り算は、なおも出来ないらしい(なぜ出来ないのかはわからない)。
我々が機械などを動かしたりするのにエネルギーを使う時、そこに起きているのは、配分されたエネルギーの引き算、足し算である。
宇宙全体のエネルギー総量は変わっていない。
エネルギー保存の法則とは、そのような事である。
(コラム)マイナスエネルギーはあるか
マイナスのエネルギー量はあるか、と考えるかもしれない。
これは量的な意味で逆に作用するエネルギーと言えるが、少なくとも、そういうものは知られていない。
だがそういうものがあるなら、エネルギー0という状態については、考えなおさなければならないであろう。
熱力学第二法則とは。エントロピー増大の法則
エントロピーとは、「物事の乱雑さ」などと表現される。
例えば、ぎっしり本が詰め込まれた本棚を倒し、本をばらまいたとする。
これがエントロピー(物事の乱雑さ)の増大である。
では本棚を再び整理すれば、エントロピーは回復するかというと、そういうわけでもない。
なぜなら本棚を整理するという行為自体が、空気や埃などを乱したりするから(エントロピーを増大させるから)である。
エントロピーとは、「エネルギーの扱いにくさ」や「エネルギーのコントロールの難易度」と言ってもよいかもしれない。
エネルギーを上手くコントロールする事で、我々は仕事を生み出せる。
しかし、同じ技術でひたすらに、コントロールによる仕事生成を行うとしたら、(コントロール難易度が上がっていく為に)仕事はだんだんと生み出せなくなっていく。
宇宙全体で言えば、我々が利用可能なエネルギーは減っていく(エネルギー自体は減らない)。
これがエントロピー増大の法則である。
ブラックホールはこの熱力学第二法則を破れる可能性がある。
「ブラックホール」時間と空間の限界。最も観測不可能な天体の謎 「ホログラフィック原理」わかりやすく奇妙な宇宙理論
(コラム)無限供給、無限変形で永久機関
熱力学第一法則は『永久機関不可能の第一法則』。
第二法則は『永久機関不可能の第二法則』とも言われる。
永久機関は、名前通り、止めない限り永久に作動し続けるような機関であるが、これは熱力学法則が正しいならばほぼ実現しないとされている。
とりあえず永久機関には二種ある。
無からエネルギーを生み出す、あるいはエネルギー量を増やす方法を開発し、それを生み出し続けるという『第一種永久機関』。
例え第二法則により、エントロピーが増大してしまっても、次々発生する新たなエネルギーで、その分をカバー出来る。
だがこれはもちろん熱力学第一法則により、実現不可能である。
もうひとつはエネルギーをひたすら使い回して使う『第二種永久機関』。
こちらは第一法則はクリアしているが、もちろん第二法則に引っかかっている。
では熱力学の法則がある限り、永久機関は絶対不可能かというと、そうでもない可能性はある。
例えば(そういうのがあるとして)異世界とかからの無限のエネルギー供給システムがあれば第一種永久機関は実現出来る。
あるいは、コントロール技術をより有効なものにひたすら改良し続ける事で、第二種永久機関も実現出来るかもしれない。
よく考えてみたら、宇宙が無限なら、宇宙は永久機関である。
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熱力学第三法則とは。絶対零度の意味
絶対零度とは、原子が完全に停止した状態を意味する。
何もかも止まってる状態なら、エントロピーも当然0であろう。
エントロピーというか、完全停止状態なので何事も起こる事がない。
逆に言うと、エントロピーが0でないと、どれだけ寒くとも絶対零度状態ではない。
第二法則と合わせて考えると、エントロピーが存在する宇宙全体規模を絶対零度にするのは、おそらく不可能となる。
例え、全てのエントロピーを一ヶ所に集約して、他を全部絶対零度にしたとしても、その集約された一ヶ所だけは絶対零度でない。
むしろ絶対零度状態を動かすには、そこにエントロピーを発生させればいいのかもしれない。
熱学的に死んでしまった宇宙
全てのエントロピーが最大になってしまったような宇宙は、熱学的な死を迎えた宇宙とされる。
それは利用不可能なエネルギーが、全て均等にバラけたような宇宙と考えられている。
では熱学的死を迎えた世界には何があるか。
何もかもが均等になった世界なら、例えばそれはどこも同じ。
ある点と、別のある点との違いが何もないという事。
そうすると距離などの概念はなくなるのではないか、という考えがある。
距離を図れない。
どうやって図るか?
ある点と点に違いがないのが何だというのか。
メジャーを使って、そのふたつの点を図ればよいだろうが、メジャーがある世界はもう熱学的に死んだ均等世界じゃない。
「ベクトル空間」基底、次元の定義。線形結合、従属、独立。n次元の写像
そう考えると、誰かが考えたりする事すら出来ない世界であり、このような、区別できないという発想もおかしいのかもしれないけど。
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