「フリーメイソン」秘密結社じゃない?職人達から魔術師達となった友愛団体

フリーメーソンのイギリス

フリーメイソンの起源の謎

派閥によって違う見解

 『フリーメイソン(自由な石工)』という秘密結社、あるいは単にコミュニティの起源はかなりはっきりしない。
数多くの説があるが、中にはかなり荒唐無稽なものも、それなりにリアリティーあるものもある。

 最大の問題は、フリーメイソンの人達自身による公式起源が実質的に存在していない事である。
この結社に所属している者達の間ですら、その起源に関しては意見がまったく一致していないのである。(注釈1)

 どうやらフリーメイソン内部には派閥がいくつもあるらしく、その派閥によって、思想自体けっこう違ってたりするらしい。
多分、それぞれが唱える起源は、その思想に関連しているのだろう。
 例えば、現実的な起源を唱える派閥の思想は、単に友愛団体的なもの。
荒唐無稽というか、魔術的な起源を唱える者は、魔術的な思想だったりするのだろう。
音楽魔術 「現代魔術入門」科学時代の魔法の基礎

(注釈1)真の起源は実は秘密か

 しかし、その真の起源は秘密であり、外部に洩れないように、あえて様々な説を流布させている可能性はある。
よくよく考えたら、それは非常に有効な方法であろう。
裏切り者が外部に秘密をもらしても、それが真実かどうかも外部にはわからないはず。

騎士団か。宗教団体か

 代表的なフリーメイソン起源を、研究者らに有力とされている順番で並べると、おそらく以下のようになる。

 第1候補『職人達の友愛団体』
16世紀くらいのヨーロッパ。
特定の職人達のコミュニティがいくつも作られたようだが、その内のひとつが起源だとする説。
かなり現実的で支持者も多い。

 第2候補『テンプル騎士団』
中世にて活躍していた騎士の修道会の代表的存在。
アメリカという国は、フリーメイソンが作ったという伝説がある。
そしてこのテンプル騎士団も一部が、まだコロンブスが発見する以前にアメリカに到達していた伝説がある。
当然、ふたつの伝説はよく関連づけられる。
「テンプル騎士団」隠し財宝の謎、十字軍国家の世界史、悪の王への呪い
 第3候補『薔薇十字団』
この伝説的な(多分14~15世紀くらいに結成された)魔術結社自体は、まさに伝説にすぎないのだとしても、この結社に影響を受けて作られたらしい、実在した秘密結社は多いという。
フリーメイソンもそのひとつである可能性はあろう。
薔薇の秘密 「薔薇十字団」魔術、錬金術の秘密を守る伝説の秘密結社の起源と思想
 第4候補『古代や中世の異端宗教団体』
2~4世紀に最盛であった極端な霊肉二元論の思想であるグノーシス主義や、10世紀~11世紀くらいにフランスやイタリアで興ったという異端キリスト教のカタリ派などが、よく起源候補として挙げられる。
「グノーシス主義」不完全なソフィアの神と物質世界。異端の古代と近代
 第5候補『ソロモンの部下達』
伝説的なユダヤ王のソロモンに仕えていた、おそらくエルサレム宮殿を作った人達。
ユダヤの寺院 「ユダヤ教」旧約聖書とは何か?神とは何か?
その建築に関しては、悪魔説もある。
悪魔召喚 「ソロモンの72柱の悪魔」一覧と鍵の基礎知識

 第6候補『古代エジプト人』
古代エジプトにて、王に大ピラミッド建設を請け負っていた建設者集団。

 ただ、いずれにしても、建築作業が得意な、職人団体的な面を持っているというのは、かなり確かだと言われる。

ふたつのフリーメイソン

実践的フリーメイソン。思弁的フリーメイソン

 フリーメイソンという名前自体は、すでに14世紀の記録の中にも登場するという。
どうもこのフリーメイソンは、専門の道具などを使ういろいろな職人のコミュニティ、『ギルド(秘伝の技を抱えていた職人達の組織)』であり、実は近代のフリーメイソンは、この本来のフリーメイソンを思想的に理想とした、いわば第二世代なのだという。

 本来の職人ギルドである『実践的フリーメイソン』、あるいは『職業的フリーメイソン』。
そしてそれを思想的に疑似再現した『思弁的フリーメイソン』、あるいは『思想的フリーメイソン』の、ふたつのフリーメイソンが存在する訳である。

 それが近代以降のフリーメイソンと、どのような関係にあるのかは、不明でも、実践的フリーメイソンが存在した事自体は、かなり確かなのだという。

イギリス発祥?軟らかい石か、自由か

 フリーメイソンの名が最初に登場するのは、イギリスの文献だという。
ちょうど百年戦争真っ只中の1376年くらいのものらしい。
イングランドの石橋 「イギリスの歴史」王がまとめ、議会が強くしてきた帝国の物語
 この最初のフリーメイソンの語源的解釈として、有力とされている仮説はふたつと考えられている。

 ひとつが、フリーメイソンというのは、『フリーストーン』と呼ばれる、砂質や石灰質の軟らかい石をよく使っていた、優れた石工達のコミュニティの名称という説。
(硬い石の方が扱いが簡単なので、軟らかい石を扱えるのは熟練者だとされていたという)

 ふたつめが、フリーとはまさに自由(フリー)。
つまりフリーメイソンとは、優れた腕を持っていた為に、階級などに縛られない、様々な特権を教会や君主から与えられていた職人達だという説。

 いずれにしても、歴史学者の多くは、フリーメイソン発祥の地はグレートブリテンなのは、ほぼ確実だと考えているという。
イングランド 「イギリス」グレートブリテン及び北アイルランド連合王国について

ロッジ。兄弟。先代の教え

 実践的フリーメイソンを構成する石工達は、建築現場近くに、集会所である『ロッジ』を作り、よく集まったという。
ロッジでは、威厳ある石工長が、まだ見習いの者達を、立派な職人とするべく、熱心に指導し、秘伝の技を伝えていたとされている。

 職人達は、自分達をかけがえのない『兄弟』として、互いに尊敬しあい、辛い時には励まし合った。

 また、仲間に対しても、顧客に対しても、誠実で公平あれ。
決して、欲に負けて買収されるな。
というような教えは、思弁的フリーメイソンにも大きな影響を与えているだろうと思われる。
 そして、教えや掟を守れない者は、容赦なくギルドから追放されたという。

キリスト教との関わり

 実践フリーメイソンが成り立った頃の、イギリスの石工は、たいていカトリックであったので、フリーメイソンも当然カトリック系だったと思われる。
十字架 「キリスト教」聖書に加えられた新たな福音、新たな約束
 ロッジでの集会にてキリストや聖母マリアに、彼らは祈りを捧げ、その信仰心をもって、絆を深めた。

 また実践的フリーメイソンの一番の顧客は教会であったという。
しかし、16~17世紀くらいになると、教会も、新たな大聖堂を建てたりする事は、あまりなくなり、様々なロッジが自然消滅していったと考えられている。

 そうして実践的フリーメイソンは、消え、それらは後の思弁的(つまり近代以降の)フリーメイソンと直接的な繋がりはないとする見方が多い。
 もちろん、秘密裏にコミュニティを維持した者達が、近代に再びフリーメイソンを復活させたという可能性もあろう。
 幾人かを新天地アメリカに移住する事で、組織崩壊を防いだ可能性もある。

 かなり確かな事は、17~18世紀くらいに、再び活気を取り戻したイギリスのロッジが、職人以外もメンバーとして受け入れるようになった事。
そうして、職人の気質や戒律などのみを受け継いだ、思弁的フリーメイソンが誕生したのである。

フリーメイソンとオカルト

錬金術とニュートン

 職人でない会員は、当初『公認メイソン』と呼ばれ、おそらくは財政的な援助などを行っていた名誉会員的な存在であった。
しかし、そんな公認メイソンの数が増してくるのと平行して、どういう訳だが、フリーメイソンは魔術結社的な面を持つようになっていく。
 公認メイソンには、錬金術師を名乗る者もけっこういたと言われる。
錬金術 「錬金術」化学の裏側の魔術。ヘルメス思想と賢者の石
 もっとも、万有引力を発見したり、微積分学を確立させたアイザック・ニュートンですら、錬金術に夢中になったような時代であるので、そういうのが普通に受け入れられる事自体は、特に奇妙でも不思議でもないと言えよう。
リンゴの木 「ニュートン」万有引力の発見。秘密主義の世紀の天才
 そのニュートン自身は、フリーメイソンの会員ではなかったが、何らかの繋がりはよく推測される。
少なくとも思想は近い。
 ニュートンは、神を「宇宙を創造した偉大なる建築師」という風に考えていたが、それはまったくもって、フリーメイソン的思想であったという。

入会式と階級

 ほぼ間違いなく近代以前にはなかった、フリーメイソンの特色のひとつは、その『参入儀式』、あるいは『入会式』である。
 
 よく噂されるのは、入会希望者は目隠しをされた状態で、秘密の地下室まで案内される。
そしてそこで、ふたりの剣士が模擬試合をするのを音で見物するというような、どこか怪しげなもの。

 実際には、儀式は入会希望したロッジの地域や有力派閥などによって異なり、ようするに、単に洗礼(キリスト教において信者になるための儀式)みたいなものなのだという。

 もうひとつ、近代からなのが確実だとされているのが『親方』階級である。
実践的フリーメイソンの時代には、階級は、『徒弟』と『職人』だけであったらしい。
それがさらに、職人の上に親方という階級がいつからか置かれた。
 後には徒弟、職人、親方、それぞれの階級内階級も作られたりして、組織構成はかなり複雑化していったという。

 また、入会式は、徒弟、職人、親方、それぞれの階級に入る時ごとに、その専用の儀式を受けるようである。

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