「カバラ神秘主義」セフィロトの樹の解説と考察。神様の世界創造魔術

カバラ

ユダヤ神秘主義、カバラとは何か。大天使メタトロンの秘技(?)

 ユダヤ教の神が世界を創った技。
あるいはその行いを真似る秘技。
神が人の中の、偉大な予言者に授けられたともされる。

 その秘技の叡知を得て、極めんとする魔術体系こそ、『ユダヤ神秘主義』、あるいは『カバラ』、『カバリズム』である。
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 カバラというのは、一説によると、大天使メタトロンが考案した秘技ともされる。
彼は元人間であるという伝説もあるというのは興味深いだろう。
元人間だから、このような人間向けの秘技を考えだせたのか。
あるいは彼は、自ら考えだしたカバラにより、天使にまでなったのか。
「天使」神の使いたちの種類、階級、役割。七大天使。四大天使。

なぜカバラは重要な魔術体系とされているのか

 カバラは、魔術を学ぶあらゆる修行者にとって、必ず通るべき道だとされる。
だが、なぜユダヤ教でなくとも、ユダヤ人ですらなくとも、カバラが重要と言えるのか。
カバラを扱った有名な魔術書である『神秘のカバラ(Mystical Qabalah)』の著者であるダイアン・フォーチュン(Dion Fortune。1890~1946)は、それに書いている。
「つまりそれは、ユダヤ教が最初の一神教だからである」 

人間社会は、例えどれだけ違うようにみえても、出会う度に影響を与えあう。
川はいくつに別れていようと、元の海はひとつなのである。

 また魔術というのは、こと現代魔術に関しては、完全に実用主義が基本思想である。
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重要なのは、唯一の神ヤハウェが実在しているかどうかではない。
聖書に書かれてる事が真実であるかどうかでもない。
それを多くの人が真実だと思うほどの奇跡を起こす技を、ユダヤ教のラビたちが体得していた事である。

 そして技というものは、全て基礎こそが大切なのは、多くの人が知るところだろう。
つまり一神教的秘技の基礎こそが、最初の一神教ユダヤの秘術、カバラなのである。
それだからこそカバラは、重要視されるのである。

カバラの基礎

オーラム・アツィルト、ブリアー、イェツィラー、アッシャー

 この世界には、『オーラム・アツィルト(原形界)』。
『オーラム・ブリアー(創造界)』。
『オーラム・イェツィラー(形成界)』。
『オーラム・アッシャー(物質界)』の四つの階層があるという。

 普通、人間は最下層のオーラム・アッシャーに生きている。
しかし人間は、必ずそこにいなければならない存在という訳ではなく、上の階層の存在へと、自らを高める事が出来る。
そしてその方法、開かれた道こそがカバラである。

アダム・カドモン

 オーラム・アツィルトの人間を『アダム・カドモン』という。
最上層、原形界、神の世界であるオーラム・アツィルトには、その全ての要素がひとつのズレもない、完璧な存在しかいない。
つまり(この世界に何人いようとも、何人が到達しようとも)神は唯一神であり、アダム・カドモンは唯一人間なのである。

 カバリスト(カバラを学ぶ魔術師)の最終目標は、このアダム・カドモンという事になる。
ただアダム・カドモンは神の域なので、そもそも元が普通の人間には到達出来ない可能性が高い。
ロボットや人工知能は人間が作った物であるから、おそらくは決して人間にはなれないのと、同じような事かもしれない。
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カバラ思想の限界。物質世界からの脱出

 第二階層のオーラム・ブリアーは創造界、大天使界であり、この階層の存在には個性があるのだという。
ただ、完璧な存在からほんの少しでも離れてしまえば、もう存在はここに落ちるらしい。
だから、相当に神に近い存在もここにはいると思われる。

 第三階層、オーラム・イェツィラーは形成界、天使界であり、男女の区別が出来るようになるという。
しかしそれなら、例えばナメクジのような、雌雄のない生物はどうなるのであろう?
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おそらくそれは、カバラ思想によって分類される階層とは別に存在する、物の性質か位なのだろう。
多分そういうふうに解釈するしかない。

 そして普通の生きた人間はみな第四階層、物質界、活動界に存在している。
肉体という器に縛られた、見方によっては何もかもが不便な階層である。
第三階層ですら楽園だとみなされているので、たいていのカバリストはアダム・カドモンになるというより、第四階層からの脱出を目論んでいる。

宇宙チャクラ。

 アッシャー、物質界は、厳密に言えば物質の世界ではないとする説もある。
それはあくまで、アッシャーを、物質世界の機構の領域であるとする説。
ここには『チャクラ』、あるいは『宇宙チャクラ』と呼ばれる要素が溢れ、それが漏れでて、形をとった時に、それが我々の知るような万物になるというのだ。

 質量とエネルギーの等価性から考えるに、宇宙チャクラというのは、つまりエネルギーなのかもしれない。
それが質量の形を取ると、物質の世界が見えてくる。
あるいはアッシャーとは、一次元のヒモの領域なのかもしれない。
それが振動する事が、つまり要素が漏れでて形を取るという事なのではないだろうか。
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セヒィロトの樹を読み解く

暗号解読の先に何が待ってるか

 生命の樹と呼ばれる事もある『セフィロトの樹(Tree of life)』は、カバラにおける最重要の要素である。
これはカバラの真理が隠されているらしいとされる図だが、おそらくたいていの人には、何が何だか意味わからないようなもの。
これまで数多くの魔術師がこれを解き明かそうとし、そして自分なりに「こういう事だ」と確信し、そして(おそらく)それらは間違ってきている。

 ただ気になるのは、このようなカバラの暗号(?)は、ただ解き明かせばそれでよいのだろうか、という事。
解き明かしたとしたら、得られる答はおそらく、神、または大天使や、天使となるための方法である。
だがそのような存在になるのは、やり方さえわかれば簡単なのだろうか?

タロットカードはおそらく関係ない

 セフィロトの樹は、体系というより方法とされる。
これは道具なのである。

 セフィロトの樹は、10個のセフィラと呼ばれる、ある領域を示す円や文字などと、それらを結ぶ小径(パス)と呼ばれる線で構成されている。
小径は22本。

 図の作りというか、その形の解釈については、あまりにも多くあり、もはやどれが正しいのか判断する事はほぼ不可能であろうと思われる。
だからここではあえて図は載せない。
図に関してはネット上に溢れてるし、少なくとも最低限最初に理解すべき事に、図は必要ないのもほぼ確実だから。
おそらくカバラに関する魔術書を一冊でもしっかり読んだことがあるなら、その結論に至ると思う。

 そんなことはないと反論する人は、多分タロットカードと、小径との関連性を知るのかもしれない。
しかしあれはトランプにおける多くの雑学と同じく、ほぼ確実に後付けであり、少なくとも基礎的な思想ではない。
トランプ 「トランプの雑学」カードの意味や強さから、基本ゲーム用語まで

各セフィラと簡潔な考察

 よくセフィラは、それぞれの段階を表すものとして解釈される。
各セフィラの属性(司る原理。色、宝石、天体、神名、守護天使)を、段階順位的に書くと、以下のようになる。

(1)ケテル(王冠)。
思考や創造。白。ダイヤモンド(金剛石)。海王星。
神名はエヘイエー。守護天使はメタトロン。

(2)コクマー(知恵)
男性原理。灰色。ターコイズ(トルコ石)。天王星。
神名はヨッド。守護天使はラツィエル。

(3)ビナー(理解)
女性原理。黒。パール(真珠)。土星。
神名はエロヒム。守護天使はザフキエル。

(4)ケセド(慈悲)
優しさや愛。青、サファイア(碧玉)。木星。
神名はエル。守護天使はザドキエル。

(5)ゲブラー(峻厳) 
厳しさや正義。赤。ルビー(紅玉)。火星。
神名はエロヒム・ギボール。守護天使はカマエル。

(6)ティファレト(美)
思いやりや調和。黄色。ゴールド(黄金)。太陽。
神名はエロハ。守護天使はミカエル。

(7)ネツァク(勝利)
永続性。緑。エメラルド(翠玉)。金星。
神名はアドナイ・ツァバオト。守護天使はハニエル。

(8)ホド(栄光)
形式ばったものや欲望。橙色。オパール(蛋白石)。水星。
神名はエロヒム・ツァバオト。
守護天使はラファエル。

(9)イェソド(基礎)
活力(生命的なエネルギー)。紫。シルバー(銀)。月。
神名はシャダイ・エル・カイ。守護天使はガブリエル。

(10)マルクト(王国)
物質的神性。レモン色、オリーブ色、小豆色、黒の四色。クリスタル(水晶)。地球。
神名はアドナイ・メレク。守護天使はサンダルフォン(あるいは、メタトロンと対をなすという女性天使シェキナという説もある)。

 さらに、隠れたセフィラとされるダアトがある。
これは生命の樹上には存在していないとか、他のセフィラの共有体とする説もある。

(?)ダアト(知識)
悟り(神の真意、あるいは聖なる光)。他は不明、ただ惑星は天王星らしい。

 以上の各セフィラの性質など見てみると、かなり明らかなことは、対応惑星の後付けである。
カバラの考案者がメタトロンにせよ、名もなきラビにせよ、その仕事は天王星の発見された18世紀以前な事はほぼ間違いない。
守護天使なども適当感がある。
この辺りに関しては自分独自の宗教体系に基づくものに変えてよいというような説まである。
これはあくまでカバラを方法と考える立場の意見であろう。
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 現代的な化学知識を当てはめると、宝石に関しては、宝石というより、そのような分子の状態と考える方がよいと思われる。
今それが一般的であるような原子論的世界観で考えるならば、個としての宝石というものはおそらくないだろうから。
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創造より物質に至る

 各セフィラに関して、それぞれの数字は、まず間違いなく順序であるらしい。
(1)ケテル(創造)
(2)コクマー(男性原理)
(3)ビナー(女性原理)
(4)ケセド(優しさ)
(5)ゲブラー(正義)
(6)ティファレト(思いやり)
(7)ネツァク(永続性)
(8)ホド(欲望)
(9)イェソド(活力)
(10)マルクト(物質性)

 ここで気になるのは、最も我々らしき領域であるマルクト(物質性)が最後になっている事である。
一番初めがケテル(創造)だ。
世界創造の順序であろうか。

 カバラは、人間を神なるものにするのでなく、神なるものを物質世界で実現する技なのかもしれない。
そうだとすると、最初に最も神に近きケテルで、最後に物質たる我々なのかもしれない。

 また全てのセフィラをいきなり走りぬける事は、しない方がよいとされる。
熟練のカバリストは、まず全てのセフィラにヴェールをかける。
あるいはそれらにかかったヴェールをいきなり全て取らない。
これについての理由は謎である。
いきなり物質を神に高めようとする道はないのかも知れないし、あるいは危険性が増すのかもしれない。

ヴェールとは。アイン。アイン・ソフ。アイン・ソフ・オウル

 アイン(無)からアイン・ソフ(無限)が生じ、アイン・ソフからアイン・ソフ・オウル(無限の光)が生じる、あるいは生じたという。
この概念は、おそらくカバラに関して世に明らかにされる要素の中で、もっとも謎なものである。

 ただこれらこそがセフィラにかけられたヴェールらしい。

 アインは否定とも言われる。
否定とは「理解できない事柄」の事を指しているという。
つまりアインがかかっているセフィラは、隠されているのである。
我々がそれを理解することを拒否している。

 アイン・ソフは無限の否定、ただ隠されてるだけでなく、その理解までの道には無限の壁が置かれてるという。
しかしだとするとアイン・ソフ・オウルは、どういう事か。
アイン・ソフですでに極限に理解から遠い状態に思えるのに。

 光とは何か?
それはわからない。
だが、まだ現実的な目線で推測するならば、光とは文字通りの光でなく、世界を照らす、意識や理解でないだろうか。
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理解なのである。
正確には理解不可能な事の理解。
つまりただ壁があるだけでない。
その壁を壊す事も、乗り越える事も無理だと、心が認めてしまっているような。
それこそ最も深くヴェールがかけられた状態なのではないか。

 それならアイン・ソフ・オウルを取っ払う方法だけは明らかだ。
心の強さが鍵である。
自分が神よりも偉くなれるかもしれないと、図々しくも考えてみたらどうか。

真理の全容は木でないか

 セフィロトの樹は、暗号である事には注意が必要である。
この図は、秘技を限られた者に伝承する為に、考案されたもののはずで、確かにその秘技に通じる何かはあるだろう。
しかしこの図自体が、秘技に必要なものではない。 

 セフィロトの樹と呼ばれるものを解釈する上で、重要なのは、おそらく樹という呼び名に惑わされぬ事である。
実際に木はない。
この木に隠された真理さえ知れたら、おそらくはそこに置くのが別に木でなくてよかった事に気づくに違いない。

生命を創造する技。ゴーレム

 実際の所、神や天使になりたいと考える者ばかりではない。
カバラにはその秘技を応用した裏技がいくつもある。
なぜなら、世界の秘密を解き明かし、神に近づくという事は、神の技を使えるようになるという事だからである。
すなわち何かの創造が出来るのだ。

 しかもこの階層で、肉体に縛られたこの階層にあってすら、カバラの秘技を会得した者は、土人形に命を与える事くらいは出来るらしい。
この命を与えられた土人形こそ有名な『ゴーレム』とかいう奴で、召し使いやボディーガードなど定められた役割も様々である。
ただし作り方を間違うと、全くの役立たずとなったり、言うことを聞いてくれなかったりするとの事で、取り扱いには注意である。

ひとつの可能性。神の意識

 セフィロトの樹について考えた時、隠された真理に関して、意識が鍵を握るかもしれないとは思う。
コネクトーム 「意識とは何か」科学と哲学、無意識と世界の狭間で
神が意識ある者なら、最初人の意識がまだ誕生してなかった時は、この宇宙は、まず間違いなく神だけのものだったろう。
今でもこの世界は、神の意識の上にある可能性もあろう。

 ホログラフィック原理のようなものだろうか。
「ホログラフィック原理」わかりやすく奇妙な宇宙理論
真の情報は神が持ち、この宇宙はその情報の投影。

 カバラの秘技とは、あるいは、小宇宙(ミクロコスモス)の創造なのかもしれない。
つまり神の意識がこの世界を存在させるように、我々も意識を上手く使えば、小宇宙を形成出来るはずという発想である。

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