「プレートテクトニクス」大陸移動説からの変化。地質学者たちの理解の方法

プレート地図

目次

地球表面の科学

それはパズルピースのように分けられている

 我らが暮らす、この『地球(Earth)』なる星の表面は、まるで完成されたジグソーパズルのようになっていて、それを構成するピースひとつひとつを、研究者たちは『プレート(plate)』と名付けている。
ただし「完成されたジグソーパズルのよう」と言っても、もしそれがほんとにジグソーなら、それはジグソーとして、普通とはちょっと言えない。
まずこのジグソーは、ピースの形も大きさもバラバラである。また、その全体の絵柄は(つまり表面の我々の事だが)刻一刻と変化していく。時には(植物が実り)緑一色になったかと思うと、(海に沈んでしまい)青一色になったりする。さらにピースはどうやら完全には固定されてないようで、常にズレ動くのを止めない。

 『プレートテクトニクス(Plate tectonics)』という科学分野があるが、これは名前から地球(より正確には(多分)地球のような表面を持つ星全部の)表面のプレートに関する研究をする分野である事は予想しやすいであろう。まさにその通り、プレートテクトニクスとは、このプレート自体はもちろん、その性質が元となる諸々の現象(例えば地震とか)について研究する分野である。

地震、火山、海洋生成。その構造は何をもたらすか?

 プレートをジグソーに例えた時、ジグソーとしては風変わりな要素をいくつかあげたが、その内の「このピースは常にズレ動く」という要素は、現時点でのプレートテクトニクスにおいてかなり重要視されている。
なぜなら現在、地球表面で起こる様々な出来事。地震はもちろん、火山活動、さらには山や海を形成してきたエネルギーも、その源がプレートの動きによるものだと考えられているからである。
火山噴火 「火山とは何か」噴火の仕組み。恐ろしき水蒸気爆発
 重要な動きのひとつが「プレートの沈み」である。
隣り合うふたつのプレートがぶつかった時、片方のプレートが曲がりながら、もう片方のプレートの下に沈んでいく動き。この時ふたつのプレートの互いの圧力のぶつかりが、凄まじいエネルギーを生んだりする。
大地震に繋がるエネルギーである。
また、プレートの沈みのような動きは、海洋の維持にも関係しているとされる。
海洋 海はなぜ塩水なのか?地球の水分循環システム「海洋」

誰がいつ考えたのか?

 地球表面の出来事の仕組みを説明するのに、このプレートテクトニクスが用いられるようになったのは、1960年代くらいからとされる。しかしプレートテクトニクスまでの、地球学者たちの最初の一歩は1915年まで遡るようだ。その一歩を踏み出したとされているのが、ドイツの科学者アルフレッド・ウェーゲナー(Alfred Wegener。1880~1930)である。
別に彼がプレートの概念を考えたのではない。彼が提唱したのは「地球表面の各大陸は動くのだ」というアイデアであった。

ウェーゲナーの大陸移動説

大陸はもともとひとつか?

 世界地図を見た時に、ユーラシアだの、アメリカだのオーストラリアだのと、海に隔てられた様々な大陸を一ヶ所に集めたら、その端々が綺麗にくっついてしまうのではないか? という疑問を持つのは容易いかもしれない。
しかし個々の大陸の形が、まるで元々ひとつだったものを分解したみたいになってるのは、単なる偶然なのか、そうでないのか。科学者(一番の専門は気象)であり、冒険家でもあったドイツ人のアルフレッド・ウェーゲナーは、偶然ではないと考えた。

 ウェーゲナーは1915年に、『大陸と海洋の起源(The origin of continents and oceans)』という本で、『大陸移動説(continental drift theory)』なる学説を発表する。
それは、「現在の地球の個々の大陸はもともと巨大な超大陸であった。しかしある時に、それらは何らかの理由で引き裂かれ、複数の小大陸となり、個々に移動する事で距離を開き、地球表面に(現在の形に)分布していった」という考えであった。

 当時は奇妙な説であったが、この大陸移動説は、現在ではある程度真実に近いとされていて、ウェーゲナーが想像したような超大陸も地球史のある時期にちゃんと実在したともされ、それは現在でも彼が考えた『パンゲア』なる名前で認識されている。
しかしながらウェーゲナーは、全てに正解していたわけではない。

流動する岩石に浮かぶ大陸群

 ウェーゲナーは地球表面の大陸は、軽い岩石『シアル(sial)』が素材となっていて、その軽い岩石シアルで形作られた大陸群が、より重い『シマ(sima)』なる岩石層に浮かんでいるというのが地球表面の構造とした。シマは流動する性質があるから、それに浮かぶシアルも、流れによって動く事があるというわけである。

 地球表面の諸現象を扱う現在のプレートテクトニクス理論と、ウェーゲナーの大陸移動説を比べてみると、最もわかりやすい違いは「分けられた部分大陸間の隙間」と、そのために生じる「海洋底かいようていの扱い」で間違いない。
プレート説(プレートテクトニクス)も、大陸移動説も、『地殻ちかく(Earth’s crust)』と呼ばれる地球表面が部分的に分けられている、という発想は同じである。ただその分けられる部分部分を、プレート説ではプレート、大陸移動説ではシアルと名付けている。

 現在のプレート説では、地殻を構成するプレートは、互いに隙間なく(というより、かなり強引に)くっつきあっていて、互いに押し付けあう圧力でズレ動くとされている。そうして押し合う力でプレートが曲がりくねり、結果、出来たへこみ(ただしかなりでかいへこみ)に水が集まり、海や川が出来る。同じ原理で、突き出た部分が山と呼ばれる。

 一方、ウェーゲナーの説では、シアル同士の間には距離がある。
つまりシマの上にシアルがぎゅうぎゅう詰めになっているわけではないのだ(ウェーゲナーは海洋底はシアルでなく、シマだと考えていた)。ただシマは流動する性質があるから、それに浮かぶシアルは流されて動くのである。またシマの上には大量の水(海)もあるから、その水の流れの影響もシアルは受けるはずである。例えるならネバネバしたスライムフィールドの上に、大量の水と岩石があるみたいなイメージであろうか。

まだ地球が出来てから数千万年?

 大陸移動説は当時の主流の説にこそなれなかったが、それなりに支持者もいて、よく議論されたという。しかし時代がウェーゲナーに味方せず、「海洋底のデータ不足」、「地球の年齢に関する大きな誤解」が、彼に間違いをもたらした。

 ウェーゲナーは陸地と海の底を明確に区別してしまい、さらには大陸移動の速度も致命的に間違ってしまっていた。
まず陸地も海の底も同じくプレートとして考えるプレート説に対し、大陸移動説では、海の底は陸地であるシアルではない。
また、大陸移動の速度については、ウェーゲナーは時速0.00347mくらいだろうと予測した(つまり1年で30mくらい動く計算であった)が、これはかなり間違っていた(実際に大陸が1年で動く距離は数センチメートルほどとされる)

 移動速度の間違いは、ウェーゲナーの時代には、地球の年齢がかなり勘違いされていた事が関係しているだろう。
現在、地球は出来てからこれまでで46億年ほどとされているが、ウェーゲナーの時代には、地球が出来てからまだ数千万年程度だと考える人が多かったのだ。ウェーゲナーも、各大陸がくっつき、ひとつの超大陸『パンゲア(Pangea)』を成していた時代をそれほど昔と(少なくとも現在考えられてるような数億年前と)考えなかった訳である。

物質の崩壊速度と、地球の年齢

 現在の地球の年齢は、古い物質(地球のものだけでなく太陽系内の古い物質)の年齢を一番の根拠としている。
物質の構成要素である原子の内、ある種のものは、一定速度で崩壊してしまうのだが、その速度が遅いものは、それこそ地球が出来た頃から、まだ崩壊途中にあったりする。その崩壊途中の原子の崩壊具合と、崩壊速度を照らし合わせる事で、それが構成する物質の年齢を算出するのである。

 ウェーゲナーの時代には、このかなり正確とされる物質年齢測定法は一般的でなかったし、「地球の年齢は数千万年以上ではない」という決定的な証拠があった。その証拠とは、つまり膨大なエネルギーを放ち続ける太陽の存在である。
地球上の世界は、太陽からのエネルギーの恵みで成り立っている事は当時から知られていたが、問題は太陽が数千万年以上の時間、あの膨大なエネルギーを生み続ける機構が当時は知られてなかったこと。
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もちろん現在は『核融合(Nuclear fusion)』と『核分裂(Nuclear fission)』という機構が知られていて、実際太陽はそれらの方法を用いていると考えられている。
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 ただしこれでは疑問に思う人もいるかもしれないが。昔の人は「地球は死の星であった時間が長かった」とは考えなかったのだろうかと……

前時代のより奇妙な仮説

 当時、古生物学の謎のひとつに、「同じ種と思われる陸生古生物の化石が海で隔てられた別々の大陸で発見される事がある」というのがあった。ウェーゲナーはこの問題に興味があったらしく、これの原因を、かつて彼らが生きていた時代に、大陸が続いていたからだと考えた(それは正解だったと言えるだろう)。

 陸生古生物の化石の問題は、かつて各大陸が陸続きだったという、大陸移動説の有力な証拠のひとつである。だがこれは決定的な証拠とはされてなかった。
実はこの別々の大陸での古生物の分布に関する問題については、すでに説明として、ある仮説が主流となっていた。
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その仮説は『陸橋説(land bridge theory)』と呼ばれていたもの。名前からある程度想像出来るかもしれないが、その陸橋説とは、各大陸を繋ぐ橋がかつて存在していたというものである。
現在の人からすると、こんなのが広く信じられていた事が信じられないような仮説であるが、それはそのまま、大陸が移動するなんて事がどれだけ荒唐無稽な考えだったのかを示しているのかもしれない。
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大陸移動の証拠、磁気が示した経路

モホロビチッチ不連続面

 1909年、『地震波(Seismic waves)』、つまりは地震の震源地から放たれる力の波、振動の研究をしていたクロアチアの地質学者アンドリア・モホロビチッチ(Andrija Mohorovičić。1857~1936)が、地球内部に、表面を構成するソレとは異なる種類の岩石の層があるという事を発見した。

 モホロビチッチは、ある時、地震波の速度を調べようと、『震源地(epicenter)』から地震波が放たれてから、様々な距離の地点に伝わる時間を計測していた。すると、震源地からある程度以上の距離では、地震波の速度が近い距離よりも速く観測されてしまったのである。モホロビチッチはこれを、地球内部のある地点から、地表とは異なる岩石層がある為だと考えた。
現在、『モホロビチッチ不連続面(Mohorovičić discontinuity)』、略して『モホ面(Moho discontinuity)』と呼ばれているこの地点から、地震波の速度は加速する。

 モホロビチッチ不連続面は、現在は『地殻(crust)』と『マントル(mantle)』という層の境界だという事がわかっている。

 モホ面を通る地震波は距離的には遠回りだが、加速がつくため、ある程度以上の距離なら、加速されたそちらが早く観測地点に届く。一般人がハンデをもらい、マラソン選手とレースしてるみたいなものだ。ある地点までは一般人が勝っているが、ある地点で抜かれてしまう感じ。

グーテンベルク不連続面

 では地球はモホ面で区切られる二重構造なのか? 別にそうでもない事がすぐに判明する。

 1926年、今度はドイツ生まれの地質学者ベノー・グーテンベルク(Beno Gutenberg。1889~1960)が、モホ面よりさらに下に、新たな境界『グーテンベルク不連続面(Gutenberg discontinuity)』を発見したのである。

 グーテンベルク不連続面はなぜか、モホ面のように略されることがあまりない。またこの面は現在、マントルと『核(earth core)』という層の境界として知られている。

 地震波には、真っ直ぐ突き進む振動の「P(primary)波」と、進行方向と直角の振動である「S(secondary)波」があるが、このグーテンベルク不連続面ではS波が消えてしまう。この事は非常に重要なある事を示している。
S波とは横ズレの伝わりなのである。繋がった物質のある部分が強引にズラされたのにつられて、そこから端まで同じようにズレてしまう現象である。長く伸ばしたロープとかを端から大きく振ると、それで発生した揺れは、逆の端まで順次伝わっていったりするだろう。S波とはそういうのである。
何が重要かというと、S波は、原子の繋がりが強い『個体』ならではの現象という事実である。つまりそのS波が消えるグーテンベルク不連続面は、単に別々の種類の物質の境界というだけでなく、個体と『液体』(あるいは『気体』)の境目である事をも示していたのである
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地球の構造

 モホ面とグーテン面を境目として地球の構造を階層分けした時、まずモホ面の上、地球表面の層が地殻、モホ面とグーテン面に挟まれている層がマントル、グーテン面より下が「核」と名付けられている。
現在はモホロビチッチやグーテンベルクの時代よりもさらに研究は進み、マントルは素材岩石の種類が異なる上側の『上部マントル(upper mantle)』、下側の『下部マントル(lower mantle)』に分けられている。また核も、やはり液体であった『外核(outer core)』と、それに囲まれている個体の『内核(inner core)』に分けられている。
つまり地球は、地殻、上部マントル、下部マントル、外核、内核の五重構造なのである(外核のみ液体で、後は個体)

鉄の核

 核はおそらく鉄製(つまり外核は液体化した鉄)だと考えられている(もちろん純粋に鉄のみで出来ているというわけではなく、鉄を豊富に含むという意味である)。というのも、地球の『化学組成(Chemical composition)』、つまり(隕石の組成などから推測される)地球の素材の生き残りの原子群の豊富なものの中で、鉄は特に重い。
化学反応 「化学反応の基礎」原子とは何か、分子量は何の量か
地球のあらゆるものには、地球自体の重力により、常に中心に引っ張る力が働いているが、その引力は重いものにほど強くかかる。つまり中心に強く引かれる重い鉄が、結果的に中心を占める事になるのは当然というわけだ。
そして核が鉄を多く含むとすれば(特に液体である外核が鉄だとすれば)、古くから知られるある現象の原理を上手く説明出来るのである。その現象とは、つまり「『地磁気(Terrestrial magnetism)』の発生」である。

万有引力の定理で導ける、だいたいの重力

 実際には『質量(mass)』が大きいものにほど、重力は強く働く(重さ、というのは重力がかかった時に初めて生じるもので、質量は、もっと根本的なもの、いうなれば「重さのポテンシャル」である)。ただ、地球上限定で考える場合は、あまり重さと質量の違いは意識しなくていい。
(地球上限定で考えるなら)モノにかかる重力も、ニュートンの『万有引力の定理(law of universal gravitation)』という式で簡単に求められる。
F=G Mmr2
この式で、Fは万有引力の強さ。Mが引き合う二つの物体の片方の質量で、mがもう片方の質量。rが物体間の距離。Gが、『万有引力定数(constant of gravitation)』と呼ばれる定数である。
万有引力定数は、引力式の質量の『単位(unit)』に「キログラム」。距離の単位にメートルを用いた場合、
万有引力定数の数値
くらいとされている。
「ニュートン」世界システム、物理法則の数学的分析。神の秘密を知るための錬金術
 で、仮に地球上のある物体に中心からの引力の強さを考える場合、Fを重力、Mを地球の重さ、mをある物体の重さ、rを地球中心からの距離と考え、引力式に代入すればよいわけである。
そう考えると、異なる物体に働く中心からの引力の強さを比べる時は、ほぼ物体の重さmのみが関係し、その重さが大きいほど、引力が強い事は明らかであろう。(GもMも変わらないし、rが同じ時は、関係あるのはmのみ。そしてmが大きくなれば、結果Fも大きくなる)

磁気と磁性体、磁石、地球ダイナモ理論

 この世界には磁気というモノがあり、それを持っている物を『磁性体じせいたい(magnetic substance)』という。
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磁性体はまた『磁石(magnet)』とも呼ばれる。それが(一般的な感覚的に)石であろうとなかろうと、そう呼ばれる。
磁石には必ずS極、N極と呼ばれる2タイプの力があり、SはNを引き寄せ、NはSを引き寄せる。

 実は地球自体、巨大な磁石であり、自転軸の北側の端がS極となっている。よって地球にて、近くに他の強い磁性体がなけれぱ、磁石のN極は、必ず北側に引っ張られる。この事を利用して方角を確かめようと開発されたのが『羅針盤(compass)』である。

 しかし、なぜ地球から磁気が生じているのか? 外核が鉄の液体なら容易に説明できる。
磁気というのは『電流(Electric current)』、つまり電子の移動の発生時に、ついでのように発生する事があり、鉄というのは、身軽な電子を多く持っている(つまり電流を発生させやすい)物質なのである。その鉄が動きやすい液体となって、熱や地球の自転などにより動きまくるわけだから、そこに含まれる身軽な電子も動きまくり(つまり電流が発生して)、結果、磁気が発生する。
この考えは『地球ダイナモ(earth dynamo)』などと呼ばれていて、そのまま、地球の核が鉄製である事の証拠ともされているのである。

キュリー温度

 よくある誤解として「磁石は鉄を引き寄せる」というのがある。実際には「磁石は磁石を引き寄せる」である。
確かに磁石で鉄を引き寄せたりは出来るが、実はもともと鉄は磁性体であり、磁石に引き寄せられる時、まさにその鉄は磁石化しているのだ。
また、これも重要な事だが、どんな磁石も磁性体でなくなる事もある。この世界のどんな磁石も、『キュリー温度(Curie temperature)』と呼ばれる(その磁石の組成によって違う)ある温度を越えた環境に置かれた時、磁気を失ってしまう。

 キュリー温度なんてものが存在するのは、実は磁性体というのが、ある磁石そのものでなく、そのある磁石を構成する原子ひとつひとつだからである。ある磁石が(キュリー温度以上の)高温にさらされた時、その構成原子は動きを激しくし、小さな磁性体たる原子の向きはバラバラになり、全体的にはそれら全部の磁気が相殺され、マクロ世界(我々が感覚で捉えれるような世界)では、その集合体(つまりある磁石)が、まるで磁気を失ったかのように見られるのだ。
鉄も通常は、原子の向きがバラバラで、マクロ的には磁気を失っているのだが、磁石を近づけると、単体ではしっかり磁性体である鉄原子ひとつひとつが引っ張られ、向きが揃うために、それ自体磁石となるのである。
つまり磁石とは、構成原子の動きが鈍く、向きが常時揃ったままの物質というわけである。そして、自然界に存在するそういう物質の代表として『磁鉄鉱じてっこう(magnetite)』と呼ばれる物質があるが、実はこの磁鉄鉱こそが、大陸移動研究に欠かせないモノであった。

残留磁気という目印

 磁鉄鉱とは、化学的には、「酸素混じりの鉄の石」である。
「鉄(Fe)と酸素(O)の化合物」と言った方がわかりやすいだろうか。
化合物とはたいていそうであるが、高温にさらされた原子が混じりあったところで冷やされる事で(それで固まるから)作られる。自然界の磁鉄鉱も基本的にその方法で作られたものだ。
高温のマグマに溶かされた物質を構成していた原子の内、鉄原子と酸素原子が混じり、マグマ(高温)から離れて、固まったものが磁鉄鉱となる。

 大陸移動現象を考える上で重要なのは、磁鉄鉱が完成する(冷やされる)過程で、その磁気の向き(構成原子ひとつひとつの向き)を地磁気の方向に(引っ張られる事で)合わせる形になるという事(そうして岩石に残される磁気は『残留磁気(residual magnetism)』と呼ばれる)。つまり磁鉄鉱のそうした磁気の向きを調べると、それが作られた時代の北側の方向がわかるのである。
もし、同じ場所にあるが、作られた時代の違う複数の磁鉄鉱それぞれが、その磁気の方向を異としていたなら、地球上におけるその場所(大陸)の位置が時代によって違っていたのだという強い根拠となろう。
そしてまさにその通りであった。
磁鉄鉱の残留磁気の向きは、同じ場所でも、その作られた時代によって異なっているのである。

 さらにある大陸の残留磁気の向きの変化(つまりある大陸の移動経路)が、海に隔てられた別の大陸の残留磁気の向きの変化(その大陸の移動経路)とほぼ一致する場合があり、それはまさしく、それらの(移動経路が一致する)大陸が、かつてくっついていた可能性を示しているのである。
結局は真実が強い。
最初はまるでトンデモだったかもしれない大陸移動説だったが、このように確からしい証拠が見つかりだすと、支持者もだんだんと増えて、研究も進み、後の(そして現在の)プレートテクトニクスへと繋がっていったわけである。

海底探査により導き出されたプレート理論

海の底で作られた陸地?

 我々が立つこの大地を調べると、どうやらたいていが土砂や生物の死骸が積もったものらしい。そういうわけなので地質学者たちは、この大地を『地層(stratum)』と名付け、その素材が積もり形成された時代を基準に階層分けして、それぞれの層で発見された化石生物が生きた時代の特定などに利用している。
しかし時々(と表現すると控えめになるくらい頻繁に)明らかに陸である地層に、明らかに水性生物の痕跡が見つかる事があった。
そいつら(その水性生物たち)がいかにして地層の一部になったのかは簡単に想像出来る。昔、海を優雅に泳いでいたそいつらは、ある時死んでしまって、海底に落ち、そのまま海底の土砂に埋もれ、一体化、つまり地層となったのである。
問題は現在、その海底であったはずの地層が、陸地にさらされている事である。この事は『聖書(Bible)』の記述(例えばノアの大洪水)によって説明出来なくもないので、信心深い人たちが多い時代には大した謎ではなかったかもしれない。だが神など信じたくない科学者たちは、神などいなくとも成り立つシナリオを想像した。それは『地球収縮説(Earth contraction hypothesis)』というものである。

地球収縮説と地向斜説

 たいてい(全て(?))物質というのは原子が集まって出来ている。この原子とかいうのは、じっとするのが嫌いらしく、常に動き回っている。その動きの激しさが熱と呼ばれるものの正体とされていて、「熱する」とはこの動きの加速、「冷やす」というのはこの動きを鈍くさせる行為とされる(完全に原子が止まった状態がいわゆる『絶対零度(absolute zero)』である)。
熱力学 エントロピーとは何か。永久機関が不可能な理由。「熱力学三法則」
 物質は原子の集合体だが、その原子ひとつひとつの動きが激しくなれば(つまり熱すれば)、当然、物質外部への圧力は強まり、結果、原子集合体たる物質は膨張するであろう。
逆もしかりである。同じ原理により、冷やせば物質は収縮する。

 つまり地球はかつて高温だったが、だんだんと冷えて収縮を続けている。というのが地球収縮説という仮説である。
この説によると地球は収縮を続けているわけだが、地球表面の岩石は硬く、内から引っ張る収縮の力に抵抗し、結果、様々な所にヨレが出来る。そうして出来たヨレこそが、地球表面のデコボコ(山とか谷とか)を形成していく。

 収縮説はそれなりに説得力があるように思える。
「それなら山や海の分布が均等でないのはおかしい」などというよくある反論にも、「元々、地表を構成する岩石の硬さが不均衡ふきんこうだからだ」などと、それらしい説明も返せる。
むしろ奇妙なのは、いつの間にか地球表面の科学の主流が、この収縮説から、『地向斜ちこうしゃ説(Geosynclinal theory)』などという、より意味不明な説にとって変わられた事かもしれない。

 地向斜説とは、「この地球上の大地では、時に(おそらく火山活動などにより)大規模な『隆起りゅうき(uplift)』や『沈降ちんこう( sedimentation)』が発生し、その結果、海などの分布が変わる事がある」などという説で、当然のごとく大した根拠はない。

球体の広がり

 我らの地球はどう考えても球体である。
球体が収縮する場合、通常、中心へと収縮する力は、中心からの距離が同じなら、均一に影響を与えるものである。力がある地点(この場合は球体の中心)から力が広がっていくのを想像してみればわかりやすいかもしれない。
自然において、何かの広がりは均等なものだ。同じ距離なら、星の重力は同じくらい、恒星から放たれる光も同じくらい、爆発の威力も同じくらいになるように。
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ソナー(音響測探技術)が見つけた手がかり

 海底で作られた地層が陸に存在しているのも謎だが、実は海底そのものがそもそも謎であった。

 発生させた『音波(sound wave)』が、海底で反射され、発生者(機(?))に帰ってくるまでの時間から、ソレの深さを測る事が出来る。そのような技術を『ソナー(音響測探技術)』というが、コレを利用した調査を繰り返す内に、人は、海底にも山(『海嶺かいれい(ocean ridge)』)や谷(『海溝かいこう(ocean trench)』)がある事を知っていった。
またソナーは、(予想されていた通り)海底が、基本的に硬い地層(元々の地面)の上に、軟らかい地層(土砂や生物の死骸などが積もったもの)という二重構造である事もはっきりさせた。のだが、軟らかい上層から反ってくる音波と、下層から反ってくる音波の往復時間の比較から明らかにされた、その上層の深さ(つまり海底に積もった土砂や生物の死骸の量)はまったく予想外であった。
つまりソレは予想されてたよりかなり浅かったのである。この事実については、おそらく神の言葉(聖書)の証明の1つとする向きもあったろう。つまり、やはり世界がまだ若いことの根拠と。

海嶺にて発生し、海溝にて沈みゆく、堆積物消去の機構

 海底上層はただ考えられてたより薄かっただけではない。その厚さは場所によって異なってもいた。というか海嶺近くほど薄かった。
さらに調査は進み、海嶺近くの岩石ほど、若い(新しい時期に作られた)ものだというのがわかってきて、地球学者たちは、また新たなシナリオを唱えた。
つまり海底下層は、海嶺から発生し、その海底下層は海底上層(つまり土砂などの堆積物)を乗せたまま、動き、海溝にて上層ごと沈んでいく。

 海底下層なんて言わず、プレートと言えばよりイメージしやすくなるだろう。そういうわけで、この海底の機構より、プレートテクトニクスはついに誕生したのである。

プレートの特性。明らかになりつつある大地の秘密

リソスフェアとアセノスフェア。プレートは地殻でない?

 実はプレートテクトニクスのプレートは、上部マントルも部分的に含んだもので、その部分(地殻+上部マントルの上層)を『リソスフェア(lithosphere)』(プレート)と呼ぶ。
一方、リソスフェアの下にはより軟らかい『アセノスフェア(asthenosphere)』なる領域があるが、これもリソスフェアに含まれない部分の上部マントルかと言えば、そうではなく、いってしまえば上部マントルの中層である。

マグマの圧力か、自らの重みか?プレートが動く仕組み

 しかし、地球表面が、複数のプレートにより構成されている。
まではよいとして、問題はなぜそれが動くのかである。その原因は、地下の『マグマ(magma)』の活動による圧力の可能性がある。

 そもそもマグマとは、地下の岩石が、地下の超高温水に溶かされる事で生じる「高温の泥」みたいなものだが、そうなると(液状化した為に)密度が下がる。つまり軽くなる。すると岩石状態より軽くなったマグマは浮上する。その浮上する力がプレートを動かす。
あと、マグマは当然、地上では冷やされて、また固まる(個体に戻る)ので、それが山やプレート自体を形成したりもする。
しかし熱い地下岩石から形成されるプレートは、出来たばかりの頃は当然熱い。それが時とともに冷やされる事で、密度が上がり(つまり重くなり)、自らの重みで滑りながら(つまり移動しながら)、自らの重みでプレートは沈んでいく。そうして、隣のプレートの境界にて、より深く沈んでいたプレートは、隣プレートの下に沈み、載せてた堆積物ごと、地下にまた還元されるわけである。

100度以上の超高温水

 地上では水の『沸点(boiling point)』、つまり熱に耐えきれず、気体である『水蒸気(water vapor)』になってしまう(構成分子がバラバラになる)温度は100℃だが、地下など、地上よりも周囲からの圧力が強い場所だと、弾けようとする液体分子が圧力により強く押さえつけられるため、その沸点も下がる。
地下には、1000℃以上の熱水なども存在するのである。
地球の水 「地球の水資源」おいしい水と地下水。水の惑星の貴重な淡水

移動速度。実は曲面上のプレート

 プレートはつまり増幅する重みにより、滑っている。しかしプレートはいずれも同じ大きさや形ではないので、個々に移動速度は違う。だけでなく、実は同じプレート上の物同士でも、異なる速度で動いている場合がある。
それはいったいどういう事か?

 こういう事だ。
つまりこの地球上は『平面(plane surface)』上ではない。球体上の世界、つまり『曲面(curved surface)』上なのである。
平行線問題 「第五公準、平行線問題とは何だったのか」なぜ証明出来なかったのか
当然プレートも平面的ではない。地球からプレートひとつだけ剥ぎ取ったなら、多分卵の殻の破片みたいな形だろう。ちょっと曲がってて、とりあえず平面的ではない。
さらに地球は自転している。
地球にくっついているプレートへのソレの影響は、自転軸からの距離によって異なるだろう。ある球体上のものが、その球体の自転により動かされる距離は、自転軸から遠いほど長くなる。

 ちなみに地球上は「わかりやすい平面の世界」でなく「(自転している)球体上の曲面」だという、当たり前すぎて、時に意識する事を忘れてしまうような事実は、プレートテクトニクスに限らず、様々な科学分野で重要な要素であるとされている。

重力が生み出す球体上の平面

 しかしこの大地は曲面上。「その事実を不思議に感じる事」を不思議に感じざるをえない。
この地球上が球体であるのに、そこに我々が立ってられるのは、もちろん重力というものがあるからなのだろう。しかし仮に、平面に立ったとして(そういう事はこの地球上でも可能だろう)、我々は普段からそうしているように曲面上に立った場合との違いに気づけるだろうか?

 そもそも平面とは立つ事が出来るものなのだろうか?
近場に強い重力がない時、平面含め、どこかに立つという事がいかに難しいかは、地球に送られてくる宇宙飛行士の映像を見れば一目瞭然であろう。
この宇宙はほとんどが虚無の(ように思える)世界だとされる。この宇宙で「平面に立てる」というのは珍しくもない現象だろうか?

 かつてアインシュタインは、重力の引力は、単純な加速と同じだと説いた。おそらく確かな事は、我々は加速する事で、この地球という球体の上を平面化している。
しかし平面とはいったい?
時空の歪み 「特殊相対性理論と一般相対性理論」違いあう感覚で成り立つ宇宙

それが引き起こすもの。なぜ日本は地震ばかりなのか?

 ところで、地震はプレートの境界付近で起こりやすい。
地震はどうやら、プレート同士が押し合った時に生じるエネルギーが弾ける事で起こるようなので、それは当然であるといえる。

 日本列島に関しては、中心付近(関東の辺り)が、なんと3つのプレートの境界と考えられている。
地震学者の中には、特に人口が集中している東京を「死を待つ街」などと皮肉る人もいるらしいが、まったくその通りかもしれない。

より硬く重い岩石、スラブへの転移、変化

 プレートが別のプレートの下(正確には沈み込まれる方のプレートが浮かんでいるマントル)に沈む時、沈んでいくプレートを『スラブ(slab)』と言う。
地中深くに沈んでいくスラブには、強い圧力がかかり、その圧力によって、スラブの素材たる岩石群の構成原子は、凝縮され、スラブは全体としてより(密度が高くなるから)重くなる。ので、さらに沈みは推進され、スラブはマントル底へと消えていく。というより「地球の熱」に溶かされる事で、マントルに還元され、やがて(またマグマとなって)地球表面に押し上げられた時に(冷やされる事で固まり)岩石となり、プレートの一部となる。

 そうした、地球内部で起きている見事な循環こそがプレートテクトニクス、つまりプレートが動く機構だと、今は考えられている。

海底の残骸で大地が作られるシナリオ

 かつて海底だった場所が陸地となるようなシナリオも、プレートテクトニクスは見事に説明する。

 プレートのある部分が誕生してから(その部分が他のプレートとの境界まで移動して)スラブとなるまでには、当然それなりにタイムラグがある。
その時間、海底プレートには、堆積物が積もっていくわけだが、その堆積物だらけのプレートがスラブとなる時に、その堆積物のいくらかはスラブ化せず、沈み込まれる側のプレートの上部に、剥ぎ取られるような形で乗り上げる場合がある。そうした事が繰り返される事で、やがて陸地に海の堆積物、いわば(『付加体(accretionary prism)』と呼ばれる)「海底の残骸」で構成された大地が作られていく。
実は日本列島は(かつて海底だったと思われる大地が多いので)そのようなパターンで(少なくとも多くの部分が)作られたとされている。それならこの列島がプレートの境界に乗っかってるのも、山だらけなのも、納得というものであろう。
またその(日本列島が出来た)過程は、「いきなり島が作られた」というものでなく、「『ユーラシア大陸(Eurasia)』に追加された付加体の部分が切り離されて出来た」というシナリオが有力とされている。

循環による循環で成り立つ地表世界

 
 付加体という見事なアイデアによって「海底で作られたらしい陸地の存在」という長年の謎を、プレートテクトニクスは解決した。しかしさらにデータが集まると、スラブが沈んでいくさいに、陸地に乗り上げる付加体はあまり多くないらしい事が指摘されはじめる。
そこで問題を解決するために、プレートの研究者たちはシナリオを少し軌道修正した。

 海底の残骸の多くが付加体となるのは、実は沈み込まれた陸プレートの下からであり、それが時と共に地上に現れるのは、雨水の侵食作用などによって陸地の上側が溶かされていくから。
つまりここでもまた循環が起きているのである。
沈むプレートの上の海底だった一部が、陸プレートの下に加わり、陸プレートの上側は雨などによって海に流され、(水生生物の死骸と共に)土砂として新たな海底を構築。その海底がまた陸の下へ。という具合だ。

 地球内部の循環が、地球表面を構成するプレートを動かし、そのプレートの動きが、人間が認識する大地の素材を循環させている。
この大地というのも案外、複雑な仕組みで成り立っているのである。
ガイア 「ガイア理論」地球は生き物か。人間、生命体、生態系の謎

大地と哲学。生命体たちのプレート理論

今はもうない。大地属性も、精霊も、地獄も

 科学の(悪いとこでもあるが)良いところのひとつは、「物事の神秘性」をすっかり消し去ってくれる事だと思う。

 昔、この大地も海も、間違いなく神秘的なものだったろう。
土は水を吸収する。水は土を侵食する。なのになぜ大地も、海もなくならないのか?
海に隔てられた大陸はあまりに遠い。けどそれはどこまであるのか?
この星は丸いのに、なんで我々は普通に立ってられるのか?
ものすごく長く生きてる人(知性?)がいたら、その人はもしかしたら大陸が動く事を経験的に知る。だがこの大陸とは何なのか? 

 プレートテクトニクスという科学の一分野は、地球表面がいかにして作られたのか、いかにして継続してきたのかという疑問に、ちゃんとした説明を与え、この世界からファンタジーガジェットのような『大地属性(Earth attribute)』を消し去ってしまった。
地震も津波も、「精霊たちの怒り」ではなくなってしまったし、マグマも「地獄からきたもの」ではなくなってしまった。
 
 しかし、たまに想像すると面白くはないだろうか。
重いスラブに引っ張られ、沈んでいくプレートの、まだ大丈夫な場所に生い茂る草木、立ち並ぶ街並み、バカみたいに突っ立ってる人たち。
だがそのプレート構造に秘められたエネルギー、それがいつ弾けるのかわからないスリル。いつか必ず砕かれ、しかし再利用される事が決まっているあらゆる個体。
なんて凄い。凄くて、想像するだけでワクワク出来ないだろうか?

岩石星と人工プレート

 プレートテクトニクスの事をいくらか知ると、ある疑問が浮かぶかもしれない。
ここまで説明してきたように、プレートテクトニクスの背後には、地球内部の循環の原理が仕組みとしてあり、さらにそうして起きる大陸(プレート)の移動などが、地球表面に様々な現象を引き起こしている。現象のひとつが、例えば「海底で作られた陸地」だが、これなど明らかにプレートテクトニクスがなければ誕生しないものである。

 仮に『月』など、プレート構造となっていない岩石星を、人工的にプレート構造にしたら、月にもそういうものが(つまり海底で作られた陸地とか、まあ月には海がそもそもないんだけど)出来るだろう。だが月にはそういうもの(プレート構造が生み出すもの)はない。もちろんそれは月にプレート構造がないからである。
別に『テラフォーミング(Tera Forming。地球化)』などするにあたって、プレートテクトニクスも考慮しなきゃ、などと言いたいのではない。ただ、この地球に今ある大半の物は、プレートテクトニクスがなければ存在しえなかったものである可能性が高い。

環境と生命体

 地球は「生命の星」だと言われる。我々がそもそも、その生命とかいう存在なのだから、それはたいていの場合において明白であろう。
火星も、金星も、水星も、その他、地上からはとても見えないたくさんの岩石惑星も、生命の星でないと考えられている。
生命の星はきっと珍しい。

 生命の星を作るのにプレートテクトニクスが必要なのかどうか。問題はそこである。
プレートテクトニクスによって直接生命体が生まれるかも、などという事ではなく、例えば、生命体の誕生に必要な環境に、必要なある岩石が、プレートテクトニクスの働きによって生まれるのだとするなら……
これはかなりありえるだろう。逆パターンもありえる。プレートテクトニクスは生命体が引き起こす現象のひとつなのかもしれない。
プレートの動きを促すのは、例えば「微生物による腐食」だったりするのかもしれない。プレート自体がそもそも微生物たちの「遊びの産物」なのかもしれないし、「素晴らしい芸術」なのかもしれない。

 実際、この地面の下には大量の微生物が存在していると多くの生物学者たちは考えている。プレート構造の形成に微生物が関わっている可能性は多分にある。
とすれば、プレートテクトニクスは、生命の星を探す指標となりうるだろう。

シマウマのいない1%の領域

 しかし宇宙は広い。生命体はどうやって生きてる?
地球の環境を決めているのは「恒星からの距離」や「原子の比率」など様々な要素の調和であろうが、それが偶然に発生する事はかなり珍しいらしい。

 しかし人間が知る宇宙とは、全体のほんの一部ではないか? とすると、地球環境が宇宙全体の中で珍しいなどと断言するのは早計すぎるであろう。
例えばある物質の99%が金で出来ているとする。残り1%だけを調べ、それが銀だったからといって、「その物質から適当に破片を頂いた時、金である確率は低い」などと結論するのは愚かだ。ある地域の99%がシマウマの生息地であったとする。残り1%だけ調べ、シマウマがいなかったからといって、「その地域全体で、シマウマは珍しい」なんて馬鹿げた考えだ。
では、我々の知ってる宇宙の一部分が、1%の銀や、シマウマのいない区域だという可能性はないだろうか。

 また、そもそも自然とは何か。
人間が人工的に作り出す環境は、通常、自然とは呼ばれない。だが人間の発想、意識、社会、何より科学はどうして出来る?
コネクトーム 「意識とは何か」科学と哲学、無意識と世界の狭間で 人間原理 「人間原理」宇宙論の人間中心主義。物理学的な神の謎と批判
偶然原子がそういうふうに動き、くっついたからではないのだろうか?
「人間は今や意識の力で自らの原子をコントロールする」とさえ言われるが、人間が原子なのだから、それは原子が原子をコントロールしているのではないか? それはやっぱり自然でないのだろうか?
素粒子論 「物質構成の素粒子論」エネルギーと場、宇宙空間の簡単なイメージ
 仮にもし人間が地球環境を広げたならどうか?
宇宙はひろいだけでなく、時間もかなりあると考えられる。そのかなりの時間をかけて、宇宙全体を地球環境に変えてしまったら、それはいったいどういう事になるのか?

共進化、私たちという存在

 「岩石と生命の共進化説」というのもあり、これはつまり何らかの特殊な岩石は生命体を生む要素となり、生命体はまた、新たな新岩石を作る事がある。つまり「我々は岩石タイプの生命体」だというふうな仮説である。プレートテクトニクスはその始まりとも、途中の過程とも考えられる。

 しかしどんな形にしろ、生命体とプレートテクトニクスに関係があるなら、その事実は、「しょせん生命体も単なる物質(つまり心とか魂なんてものは実在しない)」なんていう、たいていの人にとってつまらないだろう考えに拍車をかけるような気もする。

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