「マヤ暦」カレンダーラウンドとは何か。なぜ2012だったのか

中央アメリカの暦は、独自なものか

 古代の中央アメリカにおいて、マヤ文明は、古典期(250~900くらい)と呼ばれる時代に、かなり急速に発展したように見られている。
この躍進に関して、すでに高度な文明を築いていた中国などから、アメリカ大陸に流れ着いた誰かが関わっているのでないか、という説は古くからある。

 特に考古学的証拠はあまりない。
ただ、まったく根拠がないというわけではない。
例えば中央アメリカの多くの民間信仰において、四方向の神や、月の女神、満月のウサギやらが設定されているという。
ウサギ「ウサギ」生態系ピラミッドを狩られまくって支える、かわいい哺乳類 これらはかなり東洋的な要素だと考えられている。

 そしてもうひとつ。
複雑な暦を使っていたということも、中国からの影響を思わせるという人は多い。

 暦というのは、文明が発達し、国家が誕生すると、必然的に生まれるものと考えてもよい。
農業や儀式を周期的に行うために不可欠なのはもちろん、権力者がその一生の出来事を記録するためのギミックとしても、かなり重要となろう。

カレンダーラウンド

 約52年の周期の、『カレンダーラウンド(Calendar Round)』と呼ばれる二つの暦を組み合わせたサイクルは、中央アメリカの広い地域で共通していて、おそらくその起源はかなり古いと考えられている。

 組み合わされる暦のひとつは、我々にも馴染み深い、365日サイクルの太陽暦で、「ハアブ暦(Haabʼ)」と呼ばれていた。
日本の年中行事「日本の年中行事」簡易一覧。宗教。伝統。太陰暦との関係  それと20の日を13数字と組み合わせて、260日分繰り返していく、『ツォルキン暦(Tzolkʼin)』とよく呼ばれる暦である。

 ハアブ暦の52年目のある1日は、ツォルキン暦の73年目のある1日と重なる。
だから52年の周期なわけである。

ハアブ歴の18の月

 ハアブ歴は20日を1ヶ月とした18ヶ月と、年末の「無名の5日(nameless days。Wayeb)」で構成された365日を1年とする。
しかし実際、365日サイクルでは、1年毎に1/4日ずつズレていく。
現在の我々4年ごとに366日の1年を用意して調整しているが、マヤ人はそれを行わなかったというのが一般的な見解である。

 ただし、マヤ人がズレを認識してなかったわけではないらしい。
季節はズレていくわけだが、ちゃんと理解していたのなら、それほど問題は無かったと考えられる。

 また各月は、その時に対応する神が、0日に鎮座するという意味合いで、1から20でなく、0から19日と数えていたらしい。
各月の意味は以下の通りだが、記録書物や、研究者によって、様々な解釈があることは注意。

1「ポプ」(敷物)
断食と禁欲を優先する月。

2「ウオ」(黒との結合)
医師とシャーマンが、魔法の神であり司祭の守護神であるイツァムナに供物を捧げる日。
「マヤ文明」文化、宗教、言語、都市遺跡の研究。なぜ発展し、衰退したのか その年のあらゆる予測が行われもした。

3「シプ」(赤との結合)
狩猟の神、エクジップを称える月。
狩人と漁師は、道具を祝福し、血を少し捧げたりした。

4「ソッツ」(コウモリ)
ミツバチの飼育係が、断食によって次の活動に備えた月。
ハチミツ「ミツバチ」よく知られた社会性昆虫の不思議。女王はどれだけ特別か

5「セック」(死)
養蜂ようほう祭が開催された月。

6「シュル」(犬)
不死ヘビのククルカンの祭りが行われ、共同体の神殿へ向かう大行列があった。
月の終わりに、神殿に集められた供物を取りに、ククルカンが天から降りてくるともされた。

7「ヤシュキン」(新しい太陽)
別の月の祭りの準備。
楽器を磨き、多くの道具を青く染めた。

8「モル」(水)
神々の木製の彫像を作る月。
木は慎重に選ばれ、優れた彫刻のために血が捧げられたともされる。
彫刻家はかなり継続的に働き、食料や水は家族に持ってきてもらった。

9「チェン」(黒い嵐)
先月作った木製の彫像が神殿に届けられ、それらの生命を高めるための供物が捧げられたりした。
その後に、職人は酒とごちそうと名誉を与えられた。

10「ヤシュ」(緑の嵐)
必要に応じて、神殿の修復や修理がされた。
雨の神を称える式典と、トウモロコシ畑への祈りが行われた。

11「サック」(白い嵐)
狩人の2回目の祭が開催された月。
動物の血を流した罪に対する許しを求めた。

12「ケフ」(赤い嵐)
シカを称えた月という説がある。

13「マック」(囲い)
チャクとイツァムナのニ神を称えた祭。
神殿に火が灯され、動物(あるいはその心臓)が炎の中に投げ込まれた。
それらが完全に燃え尽きた時に、チャクの雨が彼らを消したかのような演出として、水が注がれた。

14「カンキン」(黄色い太陽)
犬と関連している説がある。

15「ムアン」(フクロウ)
カカオの農場主が、木を守ってくれた神様に感謝の気持ちを伝えた。

16「パシュ」(植物栽培の時間)
戦士を称える祭があり、将来の戦いでの勝利のための祈りがなされた。

17「カヤブ」(カメ)
出産に関する祭があったという説がある。

18「クムク」(穀倉こくそう
おそらくは収穫祭が行われた。

「無名の5日」
運の悪い5日で、他には何の意味もない。
多くの人は入浴せず、家を出なかった。

ツォルキン暦の20の日

 ツォルキン暦の20の日もそれぞれに意味がある。
当然ながら、書物や研究者により解釈が異なってたりする。
またこちらは、基本的にどの日が1で、どの日が2というような決まりはないようだが、基本的には以下の順で使われることが多いらしい。

「イミシュ」(「ワニ」世界の体。爬虫類)
砂漠のトカゲ「爬虫類」両生類からの進化、鳥類への進化。真ん中の大生物 狂気に関連する悪い日。
太陽の司祭が、悪霊を通して敵に害が及ぶことを祈る。

「イック」(「風」息。人生。暴力)
渦巻く風「風が吹く仕組み」台風はなぜ発生するのか?コリオリ力と気圧差 悪い日で、自然の破壊的な力と同じように象徴的。
怪我の痛みなどは、この日の影響によるもの。

「アクバル」(「夜の家」闇。地下世界。夜行性の太陽ジャガーの領域)
悪い日。
太陽の司祭が神殿で、敵に対して祈る。
悪、特に中傷が好きな口汚いやつの象徴。

「カン」(「トウモロコシ」豊かさと成熟をもたらす若いトウモロコシの主。トカゲ)
悪い日。
悪の象徴。

「チクチャン」(「蛇」天の蛇)
ヘビと餅「ヘビ」大嫌いとされる哀れな爬虫類の進化と生態 病気をもたらす悪い日

「キミ」(「死」)
悪い日も、良い日とも。
善と悪のすべては、死によって解消される。
悪事を告白し許しを求めるのには良い日。

「マニク」(「鹿」狩りの主)
願い事が叶う良い日。
祖先への尊敬を記念する。

「ラマト」(「うさぎ」金星。日没の兆候)
豊穣の神々の、神聖な日。
人間の栄養、作物の成長、死と再生のサイクル、ミルパ(伝統的な畑作)に関連している。
収穫が完了した後の感謝祭も行われる。

「ムルク」(「水」水神の側面。魚)
病気を象徴する悪い日で、生まれた者はだれでもひどい目にあう。
敵の病気を願うなら良い日。

「オック」(「犬」地下世界を通し、夜の太陽を導くもの)
犬と犬小屋「犬」人間の友達(?)。もっとも我々と近しく、愛された動物 悪い日。
性的堕落を象徴していて、この日には式典などを開催してはいけない。

「チュエン」(「猿」偉大な職人。芸術と知識の守護神)
麻痺を象徴している悪い日。
しかし、祖先を象徴する良い日という説もある。

「エブ」(「草」点。雨や嵐の友)
雲「雲と雨の仕組み」それはどこから来てるのか? 運命、運、人格の本質を象徴する良い日。
結婚を行うのに良い日であり、良き神々への犠牲をもたらすのにも良い日。

「ベン」(「あし」トウモロコシ、サトウキビ、人間の成長を促進する者)
繁殖の神、牧夫ぼくふ、家畜のための良い日。

「イシュ」(「ジャガー」夜の太陽)
山と森の精霊にとって神聖な良い日。
動物は、捕食者に対する保護を求めることができる。
創造力と地球そのものの象徴。

「メン」(「鷲」賢い人。鳥。月)
猛禽類「猛禽類」最大の鳥たちの種類、生態、人間文化との関わり 最も素晴らしい良き日。
神殿、森、洞窟に、二重の供物が贈られる。
願い事をしたり、許しを求めたり、重要事項が決まる日。

「キッブ」(「フクロウ」昼と夜の死鳥。魂。昆虫)
虫取り網「昆虫」最強の生物。最初の飛行動物 健康を司る霊の神聖な日。

「カーバン」(「地震」恐るべき力)
特に縁起が良い日。
良い判断がしやすい。
人類の道徳を象徴。

「エツナブ」(「ナイフ」黒曜石の犠牲の刃)
口頭での議論の時で、罪を告白するのにも良い日。

「カワク」(「嵐」天のドラゴン蛇。雷と稲妻の神々)
ドラゴン「西洋のドラゴン」生態。起源。代表種の一覧。最強の幻獣 悪い日、または何もなき日。
死者の悪意の象徴。

「アハウ」(「王」晴れやかな太陽の神)
祖先の力が家に帰る、良くも悪くもない日。

260のサイクル

 例えば「イミシュ1日」があると、次は「イック2日」、その次は「アクバル3日」という感じに続いていき、数字は13になるとまた1から、日名はアハウまでくると次はまたイミシュからという感じで続いていく。
つまり「ベン13日」の次は、「イシュ1日」みたいな感じ。

 実際続かせれば(あるいは13×20で)わかることだが、260日でこのサイクルは最初の組み合わせ(イミシュ1)に戻ってくる。

長期暦、短期暦

 カレンダーラウンドの他に、中央アメリカの広い地域には、『長期ちょうき暦(Long Count)』というのも知られていた。
これは、1日を「1キン」、20キンを「1ウィナル」、18ウィナルの「1トゥン」、20トゥンをが「1カトゥン」、20カトゥンを「1バクトゥン」として数える暦

 つまりウィナルはハアブ歴の月で、トゥンは(無名の5日がない)年にあたる。

 そして長期暦は13バクトゥンが大サイクルとされ、考古学者のシドニー・トンプソン(John Eric Sidney Thompson。1898~1975)は、紀元前3114年8月からそのサイクルは始まっているとした。
だとすると、それは2012年で終わりを迎えるから、その年に世界が滅ぶなどという噂もあった。
しかしこの主張は、1年は12月で終わりだから、1月には世界が滅ぶと言ってるようなものである。

 マヤには確かに、世界は滅びと再生を繰り返すというような思想があるらしいのだが、問題は、この長期暦が作られた時に、いったいどのような思想がその裏にあったのか、もはや誰も知らないということである。
マヤといっても、長い歴史の中で多くの変化があった。
我々が今日知るマヤの神話や思想は、あくまでもヨーロッパ人たちが中央アメリカにやってきた時代に受け継がれていたものである。
そこには、むしろすでに旧大陸側からの影響があった可能性を考慮する必要すらあるかもしれないわけである。

 また、13カトゥンのサイクルの『短期暦(Short Count)』というのもあり、古典期後期のマヤではそちらの方が普通に使われていたらしい。

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