妖精とは何か
妖精といっても、巨人やドラゴン、幽霊的な存在や、怪物としか言いようがないような怪物など、いろいろいて、定義が曖昧である。
ただ、かなり明らかな事は、妖精はただ妖精族というわけではない。
例えば魚と言っても、サメとか、タツノオトシゴとかいろいろいるように、妖精にも、いろいろ種族があるようである。
「妖精」実在しているか。天使との関係。由来、種類。ある幻想動物の系譜 「魚類」進化合戦を勝ち抜いた脊椎動物の始祖様
そして世の中には、妖精図鑑という書物がたくさんあるが、それらにはどうも、種族名と、固有の名前が混在しているようである。
ここでは、明らかに固有名と思われるものは、なるべく省く事にした。
他に、妖精図鑑では妖精だが、幻獣図鑑では妖怪とされる怪物を、いくつか妖精としている。
妖精と妖怪、それぞれの言葉の意味を考えてみた場合、どちらにも呼ばれるものは、どちらとも呼べる存在と思われるから。
猫又、鎌鼬、送り狼「動物、獣の妖怪」
妖精種の大分類
シーリーコート、アンシーリーコート。Seely Court、Unseely Court
シーリーコートは、 基本的には人間に対して友好的な妖精たちの総称。
シーリーコートに対し、アンシーリーコートは、人間に対して非友好的な妖精の総称。
シーリーコートと言っても、別に慈悲深い天使というわけではなく、自分たちに危害が加えられた場合は、人間に対して復讐をする事もある。
「天使」神の使いたちの種類、階級、役割。七大天使。四大天使。
ただし、その場合においても、命を奪ったりするのは稀である。
だが、子供や家畜をさらったりする事は、結構あるようだ。
アンシーリーコートは、とにかくただただ危険な存在とされ、可能ならば遠ざける。
遠ざけすぎるということはない、と言われる。
小人妖精。Little fairy
人間と似ているが、やや小さいとされる事が多い。
たいていは人間の子供か、子猫、子犬くらいの大きさとされる。
その姿は、とても美しいこともあれば、とても醜いこともある。
人里に現れて、人と積極的に関わろうとする種は、たいてい単独で行動している。
気に入った人の家に住み着き、いろいろ手伝ったり、助けになってくれたりするとされる。
逆に恨みのある人の家にきて、不幸をもたらす場合もある。
人里離れた自然に生きる種には、単独の者もけっこういるが、基本的には、群れをなす。
水棲馬、水棲牛。Water horse、Water cow
妖精馬、妖精牛とも呼ばれる。
水棲の種が多いため、水棲馬、水棲牛とも呼ばれる。
妖精たちの家畜とされることもあるが、野生種がいるような節もある。
また単に変身能力を持つ妖精が変身した姿、という話もある。
いずれにしても陸に上がることができるとされている。
また、水棲馬は基本的に獰猛で、水棲牛はおとなしいようである。
黒妖犬。Black Dog
その名の通り、真っ黒で、大きく毛むくじゃらで、燃えるような目をしている犬の妖精。
人間の亡霊が、その正体だという説もある。
Hellhound(地獄の猟犬)と呼ばれることもある。
基本的には危険な存在だが、時々は役に立つとされている。
どこにでも突然現れ、そこにいるだけだが、もしも話しかけたり攻撃しようとしたりすると、恐ろしい力を持って襲いかかってくる。
しかし、どうやってか、この犬は手なずけることも出来るようで、そうした場合、非常に強力な味方となる。
「犬」人間の友達(?)。もっとも我々と近しく、愛された動物
大地と空の妖精
エルフ。Elf
北欧神話に登場し、後にはイングランドにも取り入れられた、典型的な群れを成す妖精。
明るい光エルフと、暗い闇エルフがいるという説もあるが、単に、良いやつと悪いやつがいるというだけの事かもしれない。
「北欧神話のあらすじ」オーディン、ロキ、トール、エッダの基礎知識
基本的には無害だが、何か危害を加えられた場合は、仕返しに、子供をさらったり、家畜をダメにしたりする。
エルフは小人妖精か、少年少女の妖精だが、地域によっては成人の者と同じ感じの背丈とされる。
座敷童子、一つ目小僧、童子と呼ばれる鬼「子供の妖怪」
非常に美しい容姿を持つのだが、牛の尻尾を生やしているとか、体の中身が空洞であるとか、何らかの身体的欠陥を持っているようである。
指輪物語で、大人タイプが有名になりすぎた感がある。
「指輪物語」ホビット族。剣と魔法と仲間たち。ひとつの世界のファンタジー
ドワーフ。Dwarf
山奥や地下などに群れを成して暮らしていると言う小人妖精。
地のエレメンタル、ノームとの関連を言及される事もある。
「パラケルスス」錬金術と魔術を用いた医師。賢者の石。四大精霊
白ドワーフと黒ドワーフがいるともされるが、いずれにしても容姿が悪いようである。
しかし働き者で、時々は地下に大帝国を築いているとか、とても便利な発明品をいくつも持っているとか、いろいろ噂される。
エルフと元々は同族という説もある。
その場合、エルフが美しい者ばかりなのは、かつて存在した醜いエルフたちが、地下に追いやられてしまったからとされる。
そして地下に追いやられた醜いエルフたちが、ドワーフになったというのである。
家にやってくる単独妖精の多くはドワーフに似ているとされ、群れる事を嫌ったドワーフという説もある。
レプラコーン、クルラホーン。Leprechaun。Cluricauns
靴作りにしか興味がない悪霊という説もある。
レプラコーンは、とりあえず働き者の、単独の小人妖精だが、人に奉仕はしないで、ただ靴を、なぜか片方分だけ作り続けるとされる。
地下に埋められた財宝のありかを知っている、という話があり、上手く捕まえたら、そのありかを吐かせる事も出来るという。
時たま、酒に溺れてしまうが、そうして酔っ払ったレプラコーンは、クルラホーンと呼ばれている。
ブラウニー。Brownie
最も人間に理解しやすい妖精とされる。
一般的には、人間の子供くらいの大きさの小人妖精とされ、褐色のボロ服をまとい、くしゃくしゃの髪の毛をしている。
自分の縄張りにある家や、自分の気に入った人の住んでいる家に現れては、使用人がやり残した仕事を片付けたりしてくれる。
何か問題が起こった時にも、ためになる助言をしてくれたりする。
手助けのお礼には、ミルクやパンをありがたがるが、衣服をプレゼントすると、途端に不機嫌になって、その姿を消すとされる。
ボガート。Boggart
多くの点でブラウニーに似ているのだが、ブラウニーよりもずっとイタズラ好きとされている。
イタズラの内容はかなり酷いものまであるようだが、たいてい、片付いてるところを散らかしたり、嘘の助言をしたりといった、ブラウニーの手助けと真逆の事のようである。
単に不良のブラウニーという説もある。
あるいは、ブラウニーが怒るとボガートになるという説もある。
ピクシー。Pixie
多くの伝承がある妖精で、外見や起源については、いくつもの説があるが、緑の服を着ていて、旅人を道に迷わせる習性があることだけは、ほぼ全てに共通しているようである。
ピクシーはまた、ブラウニーと同じように、気に入った人間がいると手助けしたりするが、お礼として衣服を与えられると、どこかへ去ってしまうのだという。
衣服を与えられたら去ってしまうのは、妖精の話の典型である。
ピクシーは妖精の中では地味な外見とされているが、人間と同じ大きさのものでも、簡単に見分けがつく。
人間では考えられないくらいに耳が尖っていて、鼻が反り返っているからである。
夜に盗んだ馬などを走らせ、ぐるぐると円を描く事がある。
これは『ガリトラップ(Gully Trap)』と呼ばれ、この円の中に足を踏み入れた者は、囚われの身となってしまう。
ただし、ガリトラップに足を踏み入れた時点で、姿を消しているピクシーを見れることができるようになり、その時点では、まだ逃げることができる。
ドービー。Dobie
ブラウニーに近いが、利口さは足元にも及ばないとされている。
単に愚かなブラウニーを、バカにした言い方という説もある。
古い時代のグレートブリテンでは、長期的に家を開ける際に、貴重品などをブラウニーに預かってもらうように頼んだそうだが、ブラウニーがいない場合は、ドービーに頼む事もあった。
「イギリス」グレートブリテン及び北アイルランド連合王国について
しかしドービーは、 やる気は十分なのだが簡単に騙されてしまうので、全然信用されなかったとされている。
家を守護してくれている亡霊のことを、ドービーと呼ぶ事もあるそうである。
ノッカー。Knocker
鉱山に現れる妖精で、そこで働く人たちにとても親切にしてくれる。
単純に仕事を手伝ってくれたり、コツコツと音をたてて、良い鉱脈のありかを教えてくれたりする。
鉱山では時々、 原始的な精錬所が見つかることがあり、それは昔は、ユダヤ人の家と呼ばれていた。
そしてノッカーは、かつて働いていたユダヤ人の霊とも考えられていた。
どうも、キリストの磔に手を貸したユダヤ人たちが、罰として鉱山にやられたらしい。
「キリスト教」聖書に加えられた新たな福音、新たな約束
プーカ。pooka
この名は時に、悪魔とされる事もあるが、本来は妖精であるとも言われる。
「悪魔学」邪悪な霊の考察と一覧。サタン、使い魔、ゲニウス
馬やワシやコウモリなど、様々な姿に変身し、人間に様々ないたずらをする。
しかし、時には、友好的にもなる。
また、気に入った子供と、友達になったりする事もあるという。
シルキー。Silky
絹の衣をまとった女の妖精。
住みついた家で、熱心に家事を行ってくれる。
まるで、使用人たちの監督で、怠け者の召使いに対して、怒ったりもするとされる。
しかし、散らかっているものは片付けるが、逆に整理整頓されている所は散らかす、と言うような話もある。
シルキーは死者の霊ともされる。
生前の頃に関わりのあった屋敷によく現れるようだが、別に、生前にメイドだったりするわけではないようである。
バンシー。Banshee
幽霊女ともされる。
雪女、山男、ろくろ首「男と女の妖怪」
美しい女や醜い女、毛むくじゃらの犬など、地域によって様々な姿で伝えられる。
いずれにしてもバンシーが姿を見せる時は、誰かが死ぬ時や、何か不吉な事の前兆とされる。
そしてバンシー自身はその事を知っていて、たいがいは泣きじゃくっている。
目が基本赤いのだが、それが元々なのか、泣きすぎてなのかわからないというくらいに。
バンシーは天寿を全うできなかった一族、一家の子孫(特に乙女)の霊だともされる。
美しい女の姿をとる地域では、だいたいそうとされる。
地域ごとの姿がかなり違うので、彼女らは、単に共通の特徴として、未来を見通す目を持っているのではないか、という説もある。
ブーヴァンシー。Boo banshee
バンシーと同じく幽霊女とされているが、こちらはかなり危険で、邪悪な存在とされている。
空き小屋などに住み着き、男の旅人を誘い、翌日にはもう命を奪っている。
複数人で、複数人の旅人を誘う事もある。
誘った相手の血を吸い取るという話もあるので、吸血鬼の類かもしれない。
「吸血鬼」能力、弱点、退治方法。生ける死者、闇の貴族の起源
グイシオン。Gwyssion
恐ろしい形相の女の妖精。
基本的には、悪の妖精で、山に住んでいて、旅人を迷わせたりする。
グイシオンは鉄に弱いとされ、鉄製の武器を使えば、容易に倒すことができるとされる。
また、グイシオンは、ヒツジの友であり、時々は自身もヒツジに変身する。
デュラハン。Dullahan
戦場で死んだ女兵士の成れの果てともされる、首無し騎士妖精。
首なしの馬の引く馬車に乗っているともされる。
基本的に女性のようだが、騎士のイメージからか、男性と勘違いされている事がよくある。
別に誰かと戦ったりとかそういうことはあまりなく、突然、夜の街に現れて、適当にぶらぶら歩いて、去っていく。
時々その足を止めるのだが、その時、デュラハンの前にある家には、不幸が訪れるとされている。
カリァッハ・ヴェーラ。Cailleach Bheara
見かけは青白い顔をした老婆とされる、カリァッハ・ヴェーラ、あるいは、ケラッハ・ヴェーラは、冬の化身とも、女神ともされる。
冷たい風を吹かせ、あらゆるものを凍結させる力を持つという。
その氷の魔法は、持っている杖によるもの、という説もある。
他にハンマーを持っている場合があり、自らの踏み台にするために、谷などを削って、山にしてしまうこともあるとされる。
ハッグ。Hag
人を食べる鬼女とか、妖精族の魔女とか呼ばれる、老婆の見た目の邪悪な妖精。
寝ている者に悪夢を見せたりもする。
「黒魔術と魔女」悪魔と交わる人達の魔法。なぜほうきで空を飛べるのか
昔話などでよく登場する、人里離れたところに住んでいる鬼女の正体は、このハッグという説もある。
ブルーキャップ。Blue cap
ブルーキャップの正体は、鉱山の労働者の幽霊とも言われ、働き者だが しっかりとした報酬を求める。
その金は直接渡されるわけではなく、基本的には、どこか特定の決められた場所に置いておき、それをブルーキャップが取り去るという形式。
もしも、報酬が不当だと判断したなら、ブルーキャップは怒り、びた一文受け取らずに消え去る。
一方、多すぎる場合でも、わりと怒り、余分な金は置いていくそうである。
レッドキャップ。Red cap
昔に残忍なことがあった、古びた城とか、塔とかに住み着いている 妖精。
かつて、残忍なことをしたその者の幽霊とも言われ、自らの赤い帽子の赤みを、人間の血でさらに深める事を好む。
大きな赤い目の老人であり、指の爪がワシのように鋭いという。
人間の力では太刀打ちできないが、聖書や十字架を見せれば、追い払うことができるようである。
「ユダヤ教」旧約聖書とは何か?神とは何か?
ゴブリン。Goblin
小鬼とされる事もある、敵意、悪意を持つ妖精の一般的名称。
たいていが、体が小さくて、奇怪な見た目で、確かに鬼的であるとされる。
「鬼」種類、伝説、史実。伝えられる、日本の闇に潜む何者か
名前の頭にホブがついた、ホブゴブリンは、同じような存在ではあるが、悪ではなくなった存在で、時々はイタズラもするけど、基本的には人間に友好的とされる。
ドゥアガー。Duergar
これは非常に意地の悪い妖精とされる。
常に人間に敵意を抱いている黒い妖精。
たいてい、丘や岩山などに単独で暮らしていて、幻の住居などを用意して、旅人を誘い込む。
そして実際は崖になっているところなどに、旅人を誘導して、その命を奪おうとする。
直接的な攻撃はしないで、騙してくるのが主な戦法のようで、脅されようと、何を頼まれようと、それを実行せずにじっとしていれば、やがて、朝日と共にこの妖精は消え去るとも言われる。
キルムーリス。Killmoulis
水車小屋に仕える妖精。
昔は、ひとつの水車小屋には必ず、召使いであるキルモーリスがひとりはいたという。
キルムーリスには口がなく、鼻がかなり大きい。
そして、その大きな鼻で、食べ物をクンクンと嗅ぎ、吸収したそうである。
イタズラ好きでもあるが、水車小屋の主や、その家族の幸せのために尽くしたりもしたとされる。
ウリシュク。Urisks
半人半ヤギの妖精。
わりと粗野な性格らしいが、家畜の見張りや、畑仕事などをしてくれるので、家にやって来た場合は幸運だとされる。
人里離れた水たまりなどにも出没し、怖がる旅人を追いかけ回したりするが、これは仲間を欲しがっているのだという説もある。
また、基本的にはひとり暮らししているようだが、時々、同族同士で集まるそうである。
ウルヴァー。Ulver
狼の顔をした人間のような 妖精で、全身茶色く短い毛で覆われているという。
「日本狼とオオカミ」犬に進化しなかった獣、あるいは神
普段は、丘の急斜面などに掘った穴に静かに暮らしている。
顔つきは恐ろしいが、全くの無害であり、先に仕掛けられなければ、決して争いを自分から起こすことはない。
釣りが好きなのだが、よく釣った魚を貧しい人の家の窓辺などに置いて行ったりもする。
ウッドワス。Woodworth
その名前は「森の野人」の意だという。
ウッドワスは、森で過ごす毛むくじゃらの妖精であるが、原始人という説もある。
少なくとも見かけは、イエティのような野人系の未確認動物に似ていると思われる。
「イエティ」ヒマラヤの猿人伝説。隠れ潜む雪男
スコットランドの昔話などにはよく、グリーンマンという、全身を木の葉で包んだ魔法使いが登場するようだが、それとの関わりを指摘する人もいる。
ケット・シー。Cait Sith
妖精猫とされるが、魔女が化けた猫という説もある。
背がかなり曲がった、犬ほどの大きさの黒猫とされ、胸には白い斑点か模様があるとも言われる。
時に、二本足で立ち、擬人化したようにも描かれる。
それに加え、高度な知能を有し、自分たちの王国を作っているという話まである。
クー・シー。Cu Sith
妖精犬。
黒い黒妖犬とは違い、その体色は、地域によって、緑とか赤とか様々。
ケット・シーと比べると、擬人化されることがあまりない。
妖精たちの番犬ともされ、妖精が住まう、丘や岩の裂け目の中で繋がれていて、人間が近づいてくると放たれる。
普通の犬よりもかなり大きく、獲物を追いかける時は、三度、ものすごい鳴き声を出すとされる。
ガリー・トロット。Garry-Trot
イングランドの北部と、東部のサフォーク州に伝わる亡霊ともされる。
白い毛むくじゃらの犬の姿をしていて、その大きさは牛ほどもあるという。
しかし、輪郭があまりはっきりしないという話もある。
自分から逃げていく者を、とにかく、ひたすらに追う習性があるようである。
アーヴァンク。Afanc
ウェールズでは、ビーバーの事のようである。
古くは、コンヴィーレイクという川に住み着いていたという、獣妖精。
名前通りに巨大なビーバーの見た目で、色は青黒いという。
オスが多く、美しい乙女を好むという説がある。
「ユニコーン」伝説の生物である一角獣。実在するイッカク
基本的には獰猛で、鋭い爪で魚を引き裂き、食べるのだとされる。
時に人間も襲う。
また、かなりの怪力で、運んできた大岩で巣を作るそうである。
チャーチグリム。Church Grim
教会の墓地を、悪魔や魔女から守る、獣の霊とされる。
たいていは黒妖犬とされているが、地域によっては、ヒツジやブタの霊の場合もあるという。
チャーチグリムは、葬式の時に、教会の塔などに姿を見せる事があり、その時の様子から、牧師は、死者が天国に行くのか、地獄に行くのかを知ることが出来るそうである。
スクライカー、トラッシュ。Skriker。Trash
スクライカーは、黒妖犬の一種とされる。
目が皿のように丸く、非常に毛深い大きな犬の姿。
普通は、ただ現れるだけだが、脅かしたり攻撃したりすると、たちまちに襲いかかってきたりする。
一方で、死を告げる存在であるともされ、スクライカーが現れるのは、不幸の前兆だとされる。
地域によっては、トラッシュと呼ばれる。
目に見えないで、ただ吠える声だけが聞こえている時にスクライカー、犬の姿を見せた時がトラッシュと、使い分けられる場合もある。
トロール。Troll
この種については、有名ないくつかのファンタジー作品の影響により、巨人のイメージが強い。
しかし、実のところ、トロールには、人間と同じくらいの背丈という説や、小さいエルフに似ている、というような説もある。
単に巨人というだけでなく、首をいくつも持っているとか、かなり化け物じみた容姿を伝える伝承もある。
太陽の光が苦手で、浴びすぎると石に変わってしまうという話もあり、そこから、トロールとは石の巨人なのではないか、という説もある。
「太陽と太陽系の惑星」特徴。現象。地球との関わり。生命体の可能性
ほんの少しでも太陽の光を浴びてしまうと、再び太陽がその光を閉ざすまで、本来の住処である地下世界に帰れない、という話もある。
スプリガン。Spriggan
かなり強力な力を持っている妖精で、他の妖精の護衛役になっていたりする事もある。
エルフに近いらしいが、 そういう妖精の中では例外的に醜い姿をしている。
一説によると、人間の子と妖精の子を取り替えるチェンジリングにおいて、置いていかれる妖精の子は、醜いスプリガンの子なのだという。
スプリガンは、巨人の亡霊という説もあり、普段は小さいが、いきなり巨大な姿になったりもする。
さらに、病気をもたらしたり、天候を悪化させたりと、いろいろ魔法も体得している。
フォール。Foawr
フォモール(Fomoire)とも呼ばれる恐ろしい人食い魔物の一族とも、巨人族ともされる。
巨人とする場合は、人食いというイメージは薄れるそうであるが、それでも家畜の略奪や、石を投げてきたりする。
どうも、各地域のフォール同士で、わりと敵対関係にあったりするようである。
グレムリン。Gremlin
古くから伝わっているとかではなく、20世紀の第二次世界大戦の頃に、英国空軍の人たちの噂から誕生した妖精。
一般的には、機械に悪戯することを覚えたエルフだと言われるが、あまり美しいという話はない。
様々な機械類の原因不明の故障などは、このグレムリンのせいだと噂された。
特に飛行機を好むとされている。
スルーア。Sluagh
罪を許されなかった死者立場の群れともされ、非常に恐ろしい集団。
この亡霊の群れは、群れに所属している者が、生前に罪を犯した場所を巡回しているようである。
その地上で犯した罪の罪滅ぼしをしない限りは、永遠に天国にも地獄にも行けないのだとされる。
普通、妖精の活動時間は、人が寝静まった真夜中とされる。
そして真夜中、市場を他の妖精たちが歩く上、この罪人亡霊の群れは空を行く。
水の妖精
グラゲーズ・アンヌーン。Gwragedd Annwn
湖に住まう乙女の妖精たち。
非常に美しく、彼女らの姿を見た人間の男は、たいていの場合、恋を落ちる。
人はなぜ恋をするのか?「恋愛の心理学」
彼女らは、みなよく似ていて、自分に恋をした男がいると、複数で現れ、恋をした相手が誰かを問いかけてくる。
それで正解すれば、妻になってくれる。
アスレイ。Asrai
水棲の妖精で、たまに漁師が、誤って網ですくい上げてしまう事があるそうである。
また、その冷たい濡れた手に触ると、凍傷を起こし、その傷跡は一生消えないのだという。
昔、ある漁師が実際にアスレイを網にひっかけてしまった。
アスレイは、離してもらいたがっていたようだが、 言葉が全然通じない。
アスレイは悲鳴を上げたが、船が沖に近づく頃には、すっかり声を小さくしていた。
そして、沖についた時、もうアスレイは消えていて、船底に水がわずかに残されていただけであった。
フィジアル。Fideal
邪悪な水の霊ともされる。
沼地で絡まりあった草の化身という説がある。
湖や入り江などに出没しては、人間を誘惑し、水中に引き込むとされた。
しかし、女性の姿であるためか、誘惑すると考えられることが多いが、実際は、強引に引きずり込んだ例も、結構あったようである。
ケルピー。Kelpie
これはまず間違いなく、最もよく知られた水棲馬の一種である。
水棲馬には、湖や海に出現する種も多いが、ケルピーは川によく出没する。
人間の姿に変身することがあるが、たいていの場合、毛むくじゃらの小汚い男になる。
そして、ひとりで馬に乗っている者の後ろに、いきなり飛び乗って、恐怖を体験させる。
ケルピーは時々、急に鳴きわめくが、それは嵐の前兆なのだと言う。
また、馬の姿で適当にうろつき、誰かが乗ったところで突然走り出して、水中に連れ去っていく。
ケルピーは水面を叩いた瞬間、乗せた人と共に、一閃の光となって消えさる。
だから、どこかに連れて行かれたとか、食われてしまったとか、いろいろな噂がかつてはあったようである。
実はこの水棲馬は、飢えた川の化身、あるいは使い魔という説もある。
アッハ・イーシュカ。Each Uisce
水棲馬の一種。
主に冬の時期に水から出てきて、砂浜や野原を疾走する。
この時に連れ去って、飼いならすと、名馬になるとされている。
ただし、飼いならしてからでも、海を見ると、アッハ・イーシュカはそれめがけて一直線に走り、海に連れてきた乗り手を食ってしまうのだという。
また、普通の陸の馬などを襲って食ったりするそうである。
エッへ・ウーシュカ。Each Uisge
もっとも凶暴ともされ水棲馬。
特に毛並みがよく、見た目が綺麗とされる。
海や湖に出没し、かなり積極的に人を乗せようとする。
そして、その背中には粘着力があり、一度乗ったら簡単には離れられない。
その背中に乗ってしまった者を、あっという間に水の中に連れ去って食べてしまうが、肝臓を嫌っているようで、時に、犠牲者の肝臓だけが打ち上げられたりする。
巨大な鳥や、美青年に変身したりもするという。
「鳥類」絶滅しなかった恐竜の進化、大空への適応
おそらくアッハ・イーシュカと同じ。
シューピルティー。Shopiltee
水棲馬の一種。
綺麗な子馬の姿で現れては、人に対して、自分の背中に乗るように誘う。
子馬なので、子供でも気軽に乗りやすく、そういう意味ではより危険。
ノッグル。Noggle
水棲馬だが、例外的なほど危険が少ないとされている。
それでも結構危険である。
ノッグルもやはり、普通の馬のように装って、道行く人を背中に乗せようと誘う。
そして、背中に乗った人を、そのまま海まで連れて行く。
しかし、多くの水棲馬と違い、人を食ったりはせず、水に人をつけたところで、 青い炎となって消えるのだという。
水車が好きで、時々その動きを止めたりする事もあるそうである。
ノッグルは、水棲馬の中でも特に普通の馬と見分けがつきにくいとされているが、その尻尾だけは特徴的で、常に半円を描いて巻かれているとされる。
クロー・マラ。Crodh Mara
海に棲まう妖精牛。
角がなく、わりと大人しい性格。
体色は茶色とされるが、 地域によっては、赤だったり、まだらであったりする。
どうも、地上の牛と子を成せるようである。
そうして生まれた雑種は、非常に優秀な品種になるという。
恐ろしい水棲馬に対抗するために、飼い慣らされる事もあるとされる。
グワルセーグ・ア・シーン。Gwartheg Y Llyn
湖に棲まう白い水棲牛。
クロー・マラとは、名前と体色以外、かなりの点が似ている。
妖精牛は、湖の妖精などに飼われていることが多いようで、グラゲーズ・アンヌーンなどの乙女妖精は、 人間と結婚する場合によく嫁入り道具として、妖精牛を与えられたとされる。
タルー・ウシュタ。Tarroo Ushtey
水棲牛。
普通に地上にやってきて、地上の牛たちと一緒に、牧草を食べたりする。
しかし、耳が特別丸いので、すぐにそれとわかるようである。
たいていの水棲牛と同様に、基本的にはおとなしいが、もし農場などに現れたタルー・ウシュタを、海に追い返したりしたら、農作物がダメになったりする。
グリンディロー。Grindylow
淀んだ湖の底に棲まう緑色の魔物。
角を生やし、細く長い腕と指を持つ。
水辺に近づきすぎた子供を、水中に引きずり込んで、食らうとされている。
カッパではないか、という説もある。
「河童」UMAとしてのカッパは実在の生物か、妖怪としての伝承。その正体
サムヒギン・ア・ドゥール。Llamhigyn y Dwr
足がなく、羽と尻尾がある、巨大なヒキガエルのような魔物。
川などに潜み、漁師の釣り糸を断ち切ったり、川に落ちてきた動物を襲って、食ったりする。
ぞっとするような金切り声を出すことがあり、それを聞いて縮み上がった者は、川に誘われ、やはり襲われる。
ナックラヴィー。Nuckelavee
馬の体に、人間の上半身を持った幻獣ケンタウロスに、見た目は似ているそうであるが、シルエット以外はそうでもない。
ナックラヴィーは、足にヒレを持ち、一つ目で、口がクジラのように裂けた馬みたいな生物の、さらに背中から皮膚のない人間らしき体がついているという容姿。
馬側の裂けた口からは、蒸気を吐き出し、人間側の腕は地面につくほど長い。
さらに人間側の頭はかなり巨大で、まるでその重さを支えきれてないかのように、ふらふらしているのだという。
海の怪物であるが時折海から出てきて あらゆる作物を枯らし、家畜や人間たちの命を奪っていく。
ただし、なぜか淡水が苦手で、川を超えられないようである。
ムーリャルタッハ。Muilearteach
邪悪な水の精か怪物とされるが、変身した魔女とも、カリァッハ・ヴェーラが海の精として現れる時の姿ともされる。
人間の姿と、爬虫類の姿を使い分けることができるようで、さらに陸上ではハッグの姿になる事もあるという。
「爬虫類」両生類からの進化、鳥類への進化。真ん中の大生物
妖精関連用語
フェアリーリング。妖精たちのダンスパーティー
妖精たちはお祭り好きとされる。
特に踊りが大好きで、群れなす妖精などは、定期的に集まり、ダンスパーティーを開催するそうである。
キノコ類は、短時間の間にリング状に繁殖していくことがあり、そうしてできたキノコのリングをフェアリーリングと言い、 昔は妖精たちが踊った跡とされていた。
穴あき石。見えない妖精を見る方法
ただ穴が開いた石というわけではなく、水の作用によって穴が開いた石。
そういう石の穴から覗くと、普通は見えない妖精を見ることができるのだという。
また、妖精は夜に、勝手に馬小屋の馬を走らせ、疲れさせたりもするのだが、馬の背中に、この石を吊るしておくと、妖精除けになるそうである。
ストック
妖精は時に、人間の子供をさらう。
そして、その時に、妖精は、発育の悪い自分の子か、あるいは、仲間内から邪魔者扱いされた年寄り妖精を、代わりに置いていく。
しかし時々は、妖精は単に、申し訳程度に子供をかたどったような、ストックと呼ばれる木の像を置いていく。
ストックは、家畜が盗まれた時にも、代わりに置かれている場合があるという。
鉄製ナイフ、十字架、ハサミ
妖精は鉄を嫌うとされているから 鉄製のものは様専用家の道具として使える 特にナイフと十字架かハサミが高い効果を発揮するとされている。
ハサミは、それを開くと十字の形になるからのようである。
また赤ん坊のベッドの上に、鉄製の十字架などを吊るしておいたら、赤ん坊はチェンジリングの対象にされないという説もある。